『モンテ・クリスト伯』/デュマ著 2010
9/1
水曜日

 岩波文庫の『モンテクリスト伯』(アレクサンドル・デュマ・ペール著)全7巻を読み終えた。本作品は、1844~1846年にかけてフランスの新聞に連載されたものが原書となっており、既に160年以上昔の作品であり、日本では江戸時代末期ということになる。未だに根強い人気作品かもしれない。

 主人公のエドモン・ダンデスが無実の云われなき罪から、牢獄(独居房)に14年間投獄された。許嫁のメルセデスとも引き離されてしまった。隣の独房のフェルナン牧師という老人と出会った。お互いに脱獄を緻密な歳月をかけて独居房間に穴を掘り、お互いの独房を開通させた。そして、エドモンはフェルナン牧師から様々なことを教わる。しかしながら、フェルナン牧師は牢獄で最期の息を引き取った。秘宝の在処も教えられる。さあ、詳細は割愛して、脱獄にまんまと成功したエドモンはモンテ・クリスト島に隠された巨万の金銀財宝を手に入れた。さあ、これから復讐劇が始まった。フランスの社交界に忽然とデビューしたエドモンこと、モンテ・クリスト伯は、自分を貶め、罪を被せ、それぞれフランスで成功し、富と信用を築いた相手に、富・権力・知恵・腕力を織り交ぜながら、じわじわ、じりじりと復讐の計画を推し進めるのだった。

 兎にも角にも、優に2,400ページは軽く越える大作だったが、当時のイタリア、フランスの様子がリアルに描かれており、貴族社会が色濃く残る社交界のしきたりや文化の様子も覗える。当然、自動車や電気もない時代だったのだし。決闘を申し込むシーンもあったり・・・。 文中は古典や聖書からも多数の言葉や人物、出来事が引用されており、当時の医学も引き合いに出しながら、著書の博学ぶりが顕著に判る。神の存在も大きく関わっている。多少なりともマワリクドイ解説も多いのではあるが・・・

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫) モンテ・クリスト伯〈2〉 (岩波文庫) モンテ・クリスト伯〈3〉 (岩波文庫) モンテ・クリスト伯〈4〉 (岩波文庫)
モンテ・クリスト伯〈5〉 (岩波文庫) モンテ・クリスト伯〈6〉 (岩波文庫) モンテ・クリスト伯〈7〉 (岩波文庫) 巌窟王 (講談社 青い鳥文庫)

 しかし、僕としては主人公エドモンと許嫁であったメルセデスが最期には結ばれて欲しかったなぁ。いくらメルセデスが自分を陥れた一人でもあり、恋敵でもあったフェルナンと後に結婚し、子供をもうけたからといって、許しを与えてもよいのじゃないのか、と思うのは僕だけではあるまい。ハッピー・エンドにするにはテーマが重いだろう。(2010/09/01 20:35)


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