『ロジカル・シンキング』-論理的な思考と構成のスキル- 2010
5/31
月曜日

 本書は、数年前に購入し、途中まで読んで中座していた本を改めて、「仕事」に役立てるために精読したものだ。著者はマッキンゼー・カンパニー出身の照屋華子氏と岡田恵子氏のお二人の共作となっている。自分流に整理してみた。

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)
ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)
おすすめ平均
stars抱き合わせで読むのが良い
starsこれ1冊では、ロジカルシンキングは身につきません
stars企画策定に役立ちます
stars基本をおさえています。
stars他にも本を読む場合には良い

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単行本: 227ページ
出版社: 東洋経済新報社
ISBN-10: 4492531122
ISBN-13: 978-4492531129
発売日: 2001/04

 そもそも『ロジカル・シンキング』とは何か?直訳すれば「論理的思考」となるが、理屈っぽい、判り難そうといったイメージにとらわれる必要はない。普段のコミュニケーションだけでなく、ビジネスでも大いに活用できる目的を達するための「手段」として訓練で身に付けられるものだろう。

 メッセージの伝え手(書き手・話し手)が所期の目的を達成できるよう、どう話をすれば「なるほど」と納得できるように「受け手」に伝えるか、ということになる。つまり、論理的でわかりやすいメッセージは、領域やテーマに関わらず、一定の法則性やポイントがあるということだ。そららの論理的な考えを構成する技術を体系化したものが本書の内容である。道具(ツール)として訓練しながら使いこなせれば有益だ。

 『ロジカル・シンキング』の考え方の基本は大括りで以下となる。
1.「MECE(ミッシー)」
2.「So What?」、「Why So?」

 まず、「MECE(ミッシー)」とは、「ある事柄や概念を、重なりなく、しかも全体として漏れない部分の集まりで捉えること」Multually Exclusive and Collectively Exhaustive(相互に重なりなく、漏れがない) これは事柄を分類する際に、どれだけ目的に沿った網羅性をもった分類(カテゴライズ)が出来ているか、ということ。

 改めて、では「MECE(ミッシー)」するためのアプローチとしてはどのようなものがあるだろうか。
1.3C/4C
 →顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)、そしてチャネル(Channel)が定番で一般的。市場や顧客の状況を知り、競合の状況、そして自社の状況を押さえると、一応、事業の現状の全体を押さえることができる。

2.(マーケティング)の4P
 →商品(Product)、価格(Price)、チャネル(Place)、訴求方法(Promotion)、これらのPがターゲット顧客と一貫性を持っている、ということが大事なポイントとなる。

3.ステップ
 →例えば、購買では、認知→理解→動機付け、顧客は、技術→生産→販売といった物事を、起点から終点に至るまでステップや流れに分けて捉えてみる。過去→現在→未来、短期→中期→長期といった時間軸で分類してみる、など。

4.効率・効果、質・量
 →仮に事務の改善をテーマとして施策を考えたとする。施策の有効性や妥当性を判断する際、どれだけ効率化できるか、ということに注意がいきがちだが、しかし、いくら事務が効率化されても、それで顧客へのサービスが悪化し、クレームが来るようでは意味がない。「効率」を考えると同時に、相方として必ず「効果」も考えるべきで、効率と効果はワンセットの概念として成立する。
 「質」「量」でいえば、伝える情報が多ければよいというものでも、高尚であればよい、というものでもなく、課題と相手を考えて、適切な情報の量と質を見極められれば、優れたコミュニケーターといえる。これもワンセットの概念となる。

5.事実・判断
 →事実という誰も反論できない客観的なものと、人により見方が異なる判断という主観的なものがある。事実なのか、判断なのか、MECEであるべき客観と主観の境目が曖昧になっていることが多いものだ。

 これ以外にも自分がMECEの切り口は作り出せるものではあるが、次に整理するための手法としてグルーピングしてみよう。自分の結論を説得するために役立ちそうな手持ちのネタを、いったんすべて洗い出してみる。課題の答えである自分の結論を説明する上でわかりやすく、意味のあるMECEの切り口を意識しながら、情報の整理をしてみる。すると、雑多な情報がいくつかのグループに分類される。ただ、情報を漏れなく重なりなく分類するのは単に仕分けに過ぎない。分けたグループ同士が相互にMECEな関係になっていることが重要となる。

 次に、「So What?」は「結局、どういうことなの?」、それを検算するように「Why So?」は「何故そういうことが言えるの?」の補完的思考が成り立つ。「So What?」したら必ず「Why So?」と自分自身に問うてみる、確認してみることが大事だろう。「よって」「したがって」「このように」と話の前後を常識的な思考回路で考える。話が飛んでいる、つじつまが合っていない、と感じれば「聞き手・受け手」に対して、話の脈略が入り乱れ、話があさっての方向に進んでしまうからだ。そのために「So What?」したものを「Why So?」「なぜそういうことが言えるの?」「具体的にはどういうことなのか?」と質問を投げかけて、手持ちの情報、用意された材料で説明ができなければならない、ということだ。話の飛びをなくすための秘訣として、結論と根拠、結論と方法、あるいは根拠や方法の中にいくつかレベルを作り、背中合わせの関係を作ることを行う。

「観察」のSo What?/Why so?
誰が見ても同じように理解できる図表を作り、同じように読み取らせるコミュニケーションは、文章を読ませるよりも高度となるが、まずは、事実を正しく「観察」し、その「観察」の結果を受け手にも同じように理解してもらえるように明示すること。それが話の飛びを作らない第一歩となる。
 step1 この図表のテーマ=全体集合が何かを確認する
 step2 個々の事実を確認し、Why So?でチェックしながらSo What?を考える

「洞察」のSo What?/Why so?
 ある状況を示す複数のデータの中からそこに存在するであろう一定のルールや法則性を導き出したり、自社としてとるべきアクションや自社にとっての影響を考えるというように、ある情報から、それとは違う情報を引き出す作業である。「観察」は状況、「洞察」はアクションと考えれば分かりやすいだろう。
 step1 課題を確認する
 step2 それぞれの事実についてまず観察のSo What?/Why So?をする
 step3 観察のSo What?/Why So?を睨んで、「状況」から「一定の法則性」を引き出してみる
 step4 Why So?で検証してみる

◆「論理を作る」とは?
 論理的なコミュニケーションには、相手との間に設定された「課題(テーマ)」に対する「答え」が用意されていること、さらに「答え」の用紙には、結論と根拠、あるいは方法があることであるが、コミュニケーションの相手に伝え、結論に対して「なるほど、わかった」と思わせるには、どうすればよいだろうか?

 論理というといかにも難しそうだと思われるかもしれないが、それはきわめてシンプルなもので、結論と根拠、あるいは結論と方法が、縦・横2つの法則に基づいて関係づいて関係づけられた構造をいうと述べている。
『論理』とは、結論と根拠、もしくは結論とその方法という複数の要素が、結論を頂点に、縦方向にはSo What?/Why SO?の関係で階層をなし、また横方向にはMECEに関係づけられたものである。また、論理はコンパクトなほどよいとも述べられている。

 要件1:結論が課題(テーマ)の「答え」になっている
 要件2:縦方向に結論を頂点としてSo What?/Why SO?の関係が成り立つ
 要件3:横方向に同一階層内の複数の要素がMECEな関係にある


◇論理パターン(並列型):結論(頂点)⇔アクション・方法等が縦方向にSo What?/Why SO?(結局どういうことなのか?/なぜそのようなことがいえるのか?)の関係で階層化

◇論理パターン(解説型):(根拠間の横方向の関係) 「事実」→「判断基準」→「判断内容」

論理パターンを使いこなす上での組み合わせ

◇並列型+並列型 相手と結論の是非を議論する必要はなく、相手に結論を正しく理解して正しくアクションととってもらいたい場合に有効
◇解説型+並列型 全体的な方向性について自分の答えの妥当性を説明することに主眼を置き、方法については全体像を端的に伝える、という場合に有効
◇並列型+解説型 全体的な方向性については既に相手と合意形成ができている、もしくは是非を議論する余地はないので確認だけすればよい、という前提の場合に有効
◇解説型+解説型 伝え手の考え方を際立たせながら「なぜこの結論なのか」を説いていく。伝え手の考え方をじっくりと聞きたい、読みたいという相手の場合に有効

 といったところで、長々と書き綴ってしまったが、これは経験を積めば、誰にでも使いこなせると著者がいっているが、試してみる価値はありそうだ。(2010/05/31 19:46)


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