『人間はどこまで耐えられるのか』F・アッシュクロフト著 2010
5/11
火曜日

 ブログ1111号、ぞろ目だ。先日少し触れたが、読み終えた『人間はどこまで耐えられるか』だ。(再掲)決して、お笑いタレントが自分の身体でもって挑戦する類の本ではなく、オックスフォード(英)大学の整理学部教授で、インシュリン分泌に関しては第一人者であるフランセス・アッシュクロフト教授がまとめているとても真面目な本なのだ。生理学・航空医学・体育理論・基礎物理学・微生物学と幅広く、一般市民の科学に対する興味をくすぐる感じか。章だけピックアップすると、
 第1章 どのくらい高く登れるか
 第2章 どのくらい深く潜れるか
 第3章 どのくらいの暑さに耐えられるのか
 第4章 どのくらいの寒さに耐えられるのか
 第5章 どのくらい速く走れるのか
 第6章 宇宙では生きていけるのか
 第7章 生命はどこまで耐えられるのか

 ということで、感想を。ちょっと期待し過ぎたきらいがあったような・・・。しかし、雑学レベルとしてはなかなか興味深い内容であったと思う。(文中から)『生理学的なストレスに反応は人によって異なり、普段の振る舞いは、極限状態でどうなるかを推測する手がかりにならない。特殊部隊の精鋭がすぐに高山病で倒れても、同行する華奢な女性は平然としていることもあるだろう。実際的な応用という意味では、科学の法則はそれほど重要ではなく、むしろ多くの被験者で繰り返し実験しなければならない。・・・人間生理学の主な目的は実際に応用することだが、おそらく大多数の研究者にとって真の動機は好奇心にほかならない。』と。そして、自分や周りの人がで極限状態に陥ったとき、望まざるとも、そのような境地に立たされたとき、人間はどのような行動をすれば、生きながらえる確率が高まるか、といったポイントもサバイバル本としての要素が書かれている。登山しかり、潜水しかり、船が沈没したときしかり、宇宙へいったとき(これは現在では超お金持ちくらいしか縁がないだろうが)しかり・・・・

 さて、興味深かったのは第7章で、冷戦時代の日ソが宇宙開発にしのぎを削りあった歴史は既に大方は知っていたが、「宇宙線」の節が、へへぇ、そうなんだと感じた。(文中より『大気圏の外を飛び交う放射線も、宇宙飛行士にとって大きな障害となる。地上では大気圏と地球の磁場が盾となり、可視光線と電波を除けば、放射線はほとんど地表に届かない。しかし、宇宙ではつねにその危険にさらされる。大気圏外の放射線、つまり宇宙放射には三つの発生源があると考えられている。銀河宇宙線、太陽粒子現象、そして帯状の捕捉放射線である。』

 興味のあるかたは、一読されたし!(2010/05/11 20:23)

4309463037 人間はどこまで耐えられるのか
(河出文庫)

Frances Ashcroft
河出書房新社 2008-05-02

by G-Tools
文庫: 382ページ
出版社: 河出書房新社
ISBN-10: 4309463037
ISBN-13: 978-4309463032
発売日: 2008/5/2
※内容(「BOOK」データベースより)
 生きるか死ぬかの極限状況で、肉体的な「人間の限界」を著者自身も体を張って果敢に調べ抜いた驚異の生理学。人間はどのくらい高く登れるのか、どのくらい深く潜れるのか、暑さと寒さ、速さの限界は? 果ては宇宙まで、生命の生存限界まで、徹底的に極限世界を科学したベストセラー。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
※アッシュクロフト,フランセス
 1952年、イギリス生まれ。オックスフォード大学の生理学部教授で、インシュリンの分泌に関する第一人者。1999年よりロイヤル・ソサエティーのフェロー。細胞膜のイオンチャネルをモチーフに芸術家と美術展を開催するなど研究室の外でも精力的に活躍
※矢羽野 薫
1969年生まれ。慶応大学卒

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