蜘蛛男』江戸川乱歩著 2010
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みどりの日

 江戸川乱歩ベストセレクション第8弾(第7弾を読み飛ばしてしまった・・・・)は『蜘蛛男(くもおとこ)』。本書は、昭和4(1929)年8月から翌年6月まで、講談社の大衆読物雑誌「講談社倶楽部」に連載されたもの。昭和初期の香りがプンプンと色濃く臭う作品だ。”来月号に乞うご期待”とさせるべく、あわや!この後はどうなるんだ的な、こじつけストーリー展開がかわいらしく、なんでもござれ・てんこ盛り風物詩の味わいもある。素直に勘繰らないで、昭和初期の作品と思えば、奥行き広く感無量ってことになる。当時の人々もワクワクしながら読んだのだろうと容易に想像出来るね。

 もうひとつ、『蜘蛛』に関する神話伝説の関わりでいえば、記紀神話に言及される「土蜘蛛」は、大和朝廷に服従せず抵抗を続けた古代の偏狂の民の別称であり、後には山中に盤踞する妖怪の姿となって、平安京のゴーストバスター源頼光と死闘を繰り広げた、ともある。

蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション(8) (角川ホラー文庫)
4041053358

文庫: 326ページ
出版社: 角川書店
(角川グループパブリッシング)
ISBN-10: 4041053358
ISBN-13: 978-4041053355
発売日: 2009/9/25

 さらに正義のヒーローに対する邪悪の権化として『蜘蛛』という図式では、僕が小学4年で恐る恐る見た「仮面ライダー」は第一話の「怪奇蜘蛛男」として、悪の組織ショッカーの刺客として、仮面ライダーと対峙していることも興味深い。(2010/05/04 15:26)

■内容(「BOOK」データベースより)
 妹が失踪したと、絹枝という女が犯罪学の権威・畔柳博士を訪ねてきた。折しも博士は、とある会社の怪しい従業員募集の新聞広告に犯罪の匂いを感じていた。絹枝の話では、妹・芳枝はそこに応募したとしか考えられない。博士の悪い予感は当たり、芳枝はすでに惨殺されていた―。好みの女性ばかりを狙う、卑劣な殺人鬼・蜘蛛男とは何者か?そして彼の正体を暴き立ち向かう、明智小五郎の作戦とは!?―。


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