『鼓動―警察小説競作 』 2010
4/14
水曜日

 警察小説、先般読んだ『決断』のパート2的なものだ。今回も力ある作家の競作。5作品ともに、心情を鋭く抉られた。作家は、大沢 在昌、今野 敏、白川 道、長瀬 隼介、乃南 アサの5人。

◆『雷鳴』◆大沢在昌さんは「新宿鮫」シリーズの著者だ。こんな短い(20ページ)の中で、ヤクザ者、刺客人、刑事の交わす言葉で、生きざまをまさぐりつつ、心情が露わに表現されている。それで且つ、新宿署の鮫島刑事は二人の犯罪者の足を洗わせて(更正させて)しまった。この「新宿鮫」シリーズは読まざるを得ないだろう。異質の短篇。

◆『刑事調査官』◆著者は、今野敏さん、これも平(へい)さんと慕われる叩き上げ警視がいい味を醸し出している。深川言葉が人情深さを迸らせる。若手刑事の大島、プロフィラーと呼ばれる心理捜査官の美人で警視庁エリートの島崎優子の主要プレイヤーで捜査が進んでいく。ここでニクイのは、ベテラン谷刑事捜査官が知らず知らずのうちに、若手警察官に自ら考えさせ、成長させていく点だろう。これは警察に限らず、企業でもこういった大先輩は財産だ。

 他の作品の感想は書面の都合上、割愛するね。

 といいながら、情報処理試験を日曜日に控え、本なんぞ、読んでいるとは如何なものか?僕は重苦しい雰囲気の中で、そっと溜息をついていた。(2010/04/14 23:09)

文庫: 469ページ
出版社: 新潮社 (2006/01)
ISBN-10: 410120845X
ISBN-13: 978-4101208459
発売日: 2006/01

■内容(「BOOK」データベースより)
 その後、バーを訪れたのは、新宿で知らぬ者なき“鮫”だった(「雷鳴」)。たたき上げ警視と女性心理調査官が辿りついた真相は(「刑事調査官」)。娘を殺された退職刑事の“犯罪”(「誰がために」)。刑事の妻の危険な逃避行(「ロシアン・トラップ」)。現代っ子巡査が足を踏み入れてしまった事件とは(「とどろきセブン」)。正義とは一体何だ?混沌の世界を生きる警察官の誇りと苦悩を描く全五篇。


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