『芋虫』江戸川乱歩、他短編 2009
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 昨日につづいて江戸川乱歩ベストセレクション②を読み終えた。巻末の解説(三津田信三氏)から若干借用すると乱歩の傾向・分析的にはこのようになるらしい。

□作品の要素:理知的興味、怪奇幻想、耽美的思考
理性と怪奇の二面性こそが乱歩作品の最大の特徴。

□作品に見られる要素:子宮願望、隠れ蓑願望、変身願望、桃源郷願望、変態嗜好、窃視嗜好、触覚嗜好、レンズ嗜好、人形嗜好、残虐嗜好など。
□作品群に扱われないもの:超常的な現象。心霊、化物、呪い、魔術、異世界

 ということらしいのだけれど、本作品はホラー要素の強いものばかり、選りすぐって9編の短編が収録されている。

①芋虫(原題:悪夢)(『新青年』1929年1月)
②指(『ヒッチコック・マガジン』1960年1月)
③火星の運河(『新青年』1926年4月)
④白日夢(『新青年』1925年7月)
⑤踊る一寸法師(『新青年』1926年1月)
⑥夢遊病者の死(『苦楽』1925年7月)
⑦双生児(『新青年』1924年10月)
⑧赤い部屋(『新青年』1925年4月)
⑨人でなしの恋(『サンデー毎日』1926年10月)

文庫: 196ページ
出版社: 角川グループパブリッシング(2008/7/25)

内容(「BOOK」データベースより)
 時子の夫は、奇跡的に命が助かった元軍人。両手両足を失い、聞くことも話すこともできず、風呂敷包みから傷痕だらけの顔だけ出したようないでたちだ。外では献身的な妻を演じながら、時子は夫を“無力な生きもの”として扱い、弄んでいた。ある夜、夫を見ているうちに、時子は秘めた暗い感情を爆発させ…。表題作「芋虫」ほか、怪奇趣味と芸術性を極限まで追求したベストセレクション第2弾。

 1925-26年は、大正時代だからね。80年以上も昔の作品だと思えばすげえ、ですね。①は秀作、②も短いけれどいい、⑨も人間のそこはかとなく悲しさがあるように思う。昨日から短編ばかり17編読んだけれど、怪奇なのだけれど、理性的ってのが乱歩らしいのでしょうね。一度、中編、長編も機会があれば読んでみたい。(2009/05/06 13:45)

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