1.ソーチェーンの正しい目立て【仕組み理解編】 2009
3/21
土曜日

3/14-15に参加したチェンソー講習会【応用編】で『チェンソーを安全に使うためにソーチェーンの正しい目立て』という冊子をいただいた。今日は暇任せに熟読したポイントを自分のために要点を整理してみた。(ブログに載せるほどの内容じゃないのだけどね、いいかな?)

 本体一式をチェンソー(チェーンソともいうケースもあり、伸ばさない)、ガイドバーにチェーンと一緒に刃が付いている部分を「ソーチェーン」というのね。(※「のこ刃」ともいう) それをちゃんと研いでおかないと、研ぐにはどんな構造で何故、木が切れるのか、理屈をわかっていないとダメだね。

 腕のよい大工は道具を大事にする。絶対粗末に扱わない。ちゃんと手入れをする。山仕事も同じこと。道具をきちんと手入れの出来ない輩はプロとはいえないね。道具を大事にする姿勢・心は大切だ。

この書は、永戸太郎氏がソーチェーンの神様みたいに言われているらしいけれど、良いことを冒頭に書いている。肝に銘じよう。
 『刃物は泣くほど研げ、笑うほど切れるぞ。』
なのだってね。うまいこと言うではないか。

 『ソーチェーンはノコギリである。 ノコギリは刃物である。刃物は切れなければならない。』

林材業労災防止協会
永戸太郎著
(ソーチェーン目立て講習会資料)
■1.ソーチェーンの正しい目立て【仕組み理解編】
■2.ソーチェーンの正しい目立て【目立ての大切さ理解編】
■3.ソーチェーンの正しい目立て【目立てのしかた実戦編】
 要望に応え、チェーンソー講習会を追記しました。
◆チェンソー講習会【基礎編】<初日>
◆チェンソー講習会【基礎編】<二日日>
◆チェンソー講習会【応用編】<初日>
◆チェンソー講習会【応用編】<二日日>
リンク→※省吾の森林活動 (New Page)

解 説

【構造】
■ソーチェーンの組み立て
・ソーチェーンは、カッターが左右に1個ずつ2つ、ドライブリンク(中央)が4つ、サイドリンクが左右に3枚ずつ6つ、リベットが6つで、これが1つの瀬戸になって連結されている。

・カッターは、木材を切削する重要な部分で、左カッターと右カッターが同じ間隔で、交互に取り付けられている。

・ドライブリンクは、カッターとサイドリンクに連結されて、ソーチェーンの足の役割をし、これがガイドバーの溝を通る。

・サイドリンクは、カッターとドライブリンクを連結するもので、リベット付のもの、リベットが付かないものとが一組となる。

・リベットは、カッター、ドライブリンク、サイドリンクを連結するもの。

■各部品の名称
・トッププレート(上刃)、サイドプレート(横刃)は、木材を直接切り込んでいく切刃。

・デプスゲージは、木材を切り込む深さ、すなわち削り取る厚さを調整するもの。

・カッターの前後の底部は、ガイドバーの上を走る部分。

・リベット穴は、カッター、ドライブリンク、サイドリンクを連結してリベットのハブでかしめられる部分。

■カッターの目立て角の呼び方
・上刃目立て角、横刃目立て角、上刃切削角のそれぞれを正しい形に保つことが、目立ての基本であり、また横刃の逃げ角は、ソーチェーンの切削抵抗を少なくするために重要な部分。

■あさり
・あさりは、ソーチェンの幅で、ソーチェーンが木材を切断するときにできる切り口の幅になる。

・あさりがないと、ソーチェーンの抵抗が大きくなって、滑らかに木材を切断することができない。

■ソーチェーンのピッチ
・ピッチとは歯車を例にとれば、歯車の歯と歯の間をいうが、ソーチェーンは、スプロケットによって駆動される。したがって、ソーチェーンの寸法はピッチで表す。

・ソーチェーンのピッチは、ソーチェーンを連結して互いに隣り合っているリベット3個の間隔の2分の1の長さをいい、インチで表示する。

■ソーチェーンの働き
・写真-1:一般的に使用されているソーチェーンで、図-1のカッターがチェーンのように連結されている。

・図-1のカッターには、上刃(トッププレート)、横刃(サイドプレート)が付いている。この上の「刃」と横の「刃」は、写真-2の鉈(ナタ)の刃と全く同じで、この「刃」がカッターの上と横に付いていると思えばいい。

□何故、ソーチェーンで木が切れるのか?
・日曜大工で左側下段の図のような敷居の溝を作ると考えよう。②は大工道具のノコギリ、ノミ、カナヅチ。これを使って③の両側の点線をノコギリで切る。このとき、幅と深さを決めてノミとカナヅチで掘っていくと、正しいきれいな溝が出来る。④のように両側を切らずにいきなりノミとカナヅチで掘ると正しい溝は出来ない。この正しい溝切りのように、横刃は「ノコギリ」の役目を、上刃は」ノミ」の役割をする。「カナヅチ」の役目を、もちろんエンジンの回転となる。このような方法で、木にくい込むと同時に溝切り作業を行う。

・カッターは左右交互に着いているので、右側下段の図の①のようにエンジンによって回された左のカッターは、木にくい込むと、横刃が溝の側面を切り、同時に上刃は溝の底の部分を削り取っていく。続けて②のように、反対の右側のカッターが同じように働き、③のようにおがくずとして排出される。

※ソーチェーンの刃型はチッパー型、チゼル型、セミチゼル型とあるが、一般的なセミチゼル型を話題にする。

・チッパー型
 長所:目立てがしやすい、短所:切れ味はチゼル型に比べやや劣る
・チゼル型
 長所:切れ味は優れている。短所:目立ては難しい。

図①:チッパー型のように、最初に木に当る部分が丸いため同じ年輪のところを何度も切ることになる。

図②:チゼル型は角形になっているため、年輪を平に一度に切ってしまい、抵抗が少なく切れ味がよい。

 では、セミチゼル型ソーチェーンはどのようになっているのか?

■セミチゼル型ソーチェーンの特徴
・①の上刃と②の横刃の丸みの部分(黒く塗りつぶした部分)を平にして抵抗を少なくしている。

・またチゼル型の角張ったワーキングコーナーを丸ヤスリで目立てするのは難しいので、チッパー型の丸みのあるワーキングコーナーに③のような丸みを残しておけば、目立てがやりやすく(研ぎやすく)なる。

【正しいカッターの形】
■横刃目立て角
・横刃目立て角とは、ガイドバーの上に置かれたカッターを横から見て、図のそれぞれの角度をいう。
・チッパー型は横刃の部分が90度にまっすぐになっている。
・セミチゼル型は、85度と多少前屈みになっている。
・チゼル型は、セミチゼル型よりさらに角張っている。

■上刃目立て角
・カッターを上から見た角度を上刃目立て角という。この角度は図のようにカッターと交差した90度の線から、チッパー型やセミチゼル型では35度くらい、チゼル型では30度くらいになっている。

・どのタイプのカッターでも図の円内のhさき(太い黒線)が、まっすぐであることが絶対条件。

【正しくない横刃の形】
■フック型
どの型のチェーンソーを使っていても、約8割の人が目立てで、図のように横刃をおおきくえぐる傾向にある。ちょうど、釣り針のの針のように尖っており、これをフック型(またはカギ型)とよぶ。

・フック型では「木を切った。」のではなく、「かきむしった。」状態になり、また、ブレーキをかけたような大きな抵抗を伴って、チェンソーの故障の原因になる。それに、横刃が全くないのと同じで、上刃だけで削るため、切り口は毛羽だって、俗に言われる「切り肌がきたない。」「木口がきたない。」状態になる。

■バックスロープ型
・図のように横刃を直角に対して、後方に寝かせてしまうのを、バックスロープ型とよぶ。

・フック型とは対象にひっかからないため、滑ってしまう。ほとんど切れないといっていい。切れないので力を入れて、押しつける状態となり、当然、ガイドバーやソーチェーンが熱を持ち、粉のようになった鋸屑が熱くなってしまう。このような状態で長く使用していると、ガイドバーが著しく摩耗して、まくれが甚だしく、ひどいのは焼けて変色(紫色に近い鉄の焼けたような色)してしまう。

・バックスロープ型では、刃が食い込んでいかないので、フック型にして、引っ掛かっている方が手応えがあって切れると誤解している人が多いが、刃物を使って手応えがあるというのは間違い。安全カミソリを使って手応えがあるのと同じことがいえる。フック型やバックスロープ型を長く使用していると、チェーンオイルが不足する原因になる。

■正しくない上刃の形
・上刃は、刃先がまっすぐになっていることが、絶対条件。
・多くは図①のように丸くなったり、図②のようにくぼんだりしている。

・図①:もっとも大切なワーキングコーナーを潰してしまう。
・図②:上刃の刃先を潰してしまう。
・図③:鋭角過ぎて正しくない。
・図④:鈍角過ぎて正しくない。

■刃の切削角
・すべての刃物には切削角が付いている。切削角とは刃先の角度のことで、刃の厚みに対して角度が付いていること。

・①:鋭角で鋭くなっていて、一般に柔らかいものを切るのに適している。その反面、少しでも堅いものを切ったりすると、刃が欠けたり折れたりしてしまい、刃先が弱く、耐久性というか、羽持ちがよくない。
・③:鋭角で切れ味は①の場合に劣るが、ナタのように堅い枝のようなものを叩き切ったりするときに使用するもので丈夫。
・②:刃物は切るものの堅さによって使い分けるのが一般的。しかし刃物の用途は広く、作業の性質上使い分けできない場合があり、両方の長所を取り入れて、どちらにも使えるというのが中間の角度を持つ②の場合で、この角度は約55度くらい。

■逃げ角
・①の場合、上刃が木面を隙間なく削っていくと、接触面積が大きく、抵抗が強くなる。
・②の場合の矢印ように、傾斜を付けると、抵抗は少なくなる。
・③と④の場合の横刃についても同じことがいえる。
・この傾斜角を「逃げ角」とよぶ。

■刃の高さを揃える必要性
・チェンソーもノコギリだから、刃の高さが揃っていなければならない。
・図Aはカッターを横から見たもの。それぞれの刃の長さが揃っている。
・図Bは刃の長さが違う。
・図Cの①は逃げ角。したがって②の長さが違う事によって、カッターの高さが違うことがよくわかる。言い換えれば、刃の長さを揃えることによって、高さが自動的に決まる。

■あさり
・ノコギリにとって、刃の高さとともに、大変重要なのは「あさり」(「目ふり」「刃わけ」「のこ道」という)

・このあさりがないとノコギリを引いたとき、抵抗があって大変重くなる。より刃先を広げておくと抵抗が少なくなり、スムーズにノコギリを引くことができる。

・図のように①がチェーンの中心線、②があさり幅、③、④が左右のそれぞれあさり幅。

図A:上から見てカッターの刃の長さが揃っている。

図B:上からみてカッターの刃の長さが揃っていない。

図C:カッターの刃の側面に①の逃げ角がある。②の矢印の長さを見れば、あさりの幅を揃えるためには、刃の長さを揃えてやればよい。この長さを揃えることによって、刃の高さ、あさりが自動的に正しく調整されることになる。

■デプスゲージ
・大工道具のカンナを使用する場合、刃を出し過ぎると引っ掛かって削れないし、引っ込みすぎると滑って削れないので、刃をどのくらい出すのか調整する。このカンナと同様、カッターの上刃は削るという作業をするので、カンナの刃と同じように台が必要となってくる。カンナの台あたるものを「デブスゲージ」とよぶ。

・図Aはカンナとカッターの構造の関連を示したもの。
・図Bの①は「デプスゲージ」とよばれ、カンナの台、②は上刃。③はカンナの刃の出し具合を示したもの。

■何回か目立てをしていると?
・何回か目立てをすると、カッターの刃は①から矢印の方向に、②の点線部分がなくなってしまう。当然、デプスゲージが高くなって、カンナの刃を引っ込めたのと同じになり、切れなくなる。ここで、デプスゲージの頭を平ヤスリで擦り下げてやる必要がある。カンナと台の関係にあるので、デプスゲージを下げすぎないように注意する。

・多くの人は、切れ味が悪くなるとデプスゲージを下げすぎる傾向にある。下げすぎると「食い込む。」「手応えがある。」感じになり、その方がよく切れると誤解している人が多い。

今日はここまでとし、次回は、「チェーンソーの目立ての大切さ」から話を進めよう。

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