2008年6月8日(日) 
『純情津守篇』(3)~大型犬ヨーゼフとの格闘(前半)~

 シリーズ(3)、今日は”犬”の思い出、と言っても、いい思い出じゃない、死ぬかと思った恐怖の思い出を書いてみよう。ヨーゼフ章とドーベルマン章があって、今日は、ヨーゼフ章だ。

 今日も定番行動、ここ数日で読み終えた本、
わたしの失敗/産経新聞文化部篇
単行本: 360ページ
出版社: 産経新聞出版 (2006/5/29)
ISBN-10: 4902970384
ISBN-13: 978-4902970388
発売日: 2006/5/29
商品の寸法: 18.6 x 13 x 2.4 cm
Ⅰ/Ⅱ/Ⅲと刊行されてるが、これはⅠ、著名人もたやすく成功を手中にしたわけじゃなく、借金地獄・鬱・プレッシャー等々、自分で乗り越えて今がある、それをさらっと笑って話せる、バネにするから成功したんだろうね、きっと。Ⅱ/Ⅲも読もうっと。

「ご依頼の件/星新一」
 星新一のショート・ショート相変わらず面白いし、繋ぎにいいね。ちょっとした待ち時間を埋めるのに凄くいい。彼の作品は難しい単語は使わないけれどプロットがよく練られている、テーマもある、こんな作品がプロの作品と呼べるんだろうね、素人が容易く書けそうで書けないだろう。

「プロを目指す文章術三田誠広」
単行本(ソフトカバー): 214頁
出版社: PHP研究所 (2008/5/10)
ISBN-10: 456969943X
ISBN-13: 978-4569699431
発売日: 2008/5/10
商品の寸法: 19 x 13.2 x 2 cm
 「僕って何」で芥川賞受賞した著者が小説について、精神論、プロってどういうこと?、ジャンル別(推理小説・純文学・ハードボイルド・SF・サスペンス・ファンタジー)や文豪に学ぶ等、切り口で書かれていて、なるほどなあ、と思ったね。
(1) 『純情津守篇』(1)~はじめに~
(2) 『純情津守篇』(2)~生活パターン~

 1980年、秋、彼は既に多くのことを経験し、ここ、北津守界隈は配達エリア12区中、既に7~8番目に覚えたエリアとなっていた。3日も一緒に配達すれば、その後は順路帳を自分で作れば一人で配達出来るように土地勘も出来上がっていた。

 津守に来たての頃、初めて回ったエリア、3区は街灯や外灯もない真っ暗な中、右や左、上や下、どこをどう回ったのか、狐につままれたものだが、一人で配られるようになるため、昼間自分で回り順路を覚えたことが何十年も前のような気がしていた。

 この1区も丁度一週間ほど配達し、順路帳なしでも150部程度なら完全に頭に入っていた。

 秋の季節が身を引き締め、その日もいつものように配達に出た。

 北津守二丁目まで自転車を軽快に進めた彼は、自転車を素早く道路脇に止め、本誌5部、報知2部を脇に挟んだ。刹那、右視線方向、300mほど先に、’のっしのっし’と物体が蠢いている。「あっ、ワンちゃん。やけにでかい犬やなあ、あれは熊とちゃうか」と気にも留めずに。
 文化住宅の鉄階段を音を立てず一段飛ばしで駆け上がる。

 2階左端から順追って進み、右端、△△さんち(覚えてるけど匿名)に新聞を挟み込もうとした瞬間、反対側の階段を音も立てずに駆け上ったセントバーナード犬が、目をメラメラと燃え上がらせながら鎮座してる。

 状況判断ができない、「何じゃ、これ」と思うと同時に、そいつは飛びかかってきた。彼は、玄関の引き戸に押しつけられる形で、顔だけは無くしたくない、咄嗟の判断でボクシングスタイルを取った。そやつは後足で立ち、「若いごちそうにありついたわい、こりゃ、ええわい」、の心地なのだろう。前足は彼の頭より上にあった。そう、巨大なのである。ゆうに2m近くはある。

 「ああ、これで僕も終わるのか、18年の短い生涯を閉じるんだ・・」なんて意外に冷静だった。

 こいつ、顔だけはアルプスの少女ハイジに出てくる暢気ながら、いざというとき役に立つヨーゼフ顔なのだけど性質は真逆な犬。それから、隙がある脇腹を数度噛みついた。

 彼は今まで生きてきた証を、まだまだ、したいことが山のようにある未練を、絶叫という遠吠えにして一挙に放出した。
わ~~~ーーーーっ

 彼に起死回生のチャンスはあるのだろうか・・・・(続く)

【削除文章】
 「プロを目指す文章術」に、”素人は説明しすぎて文章の流れが滞る”、とある。「削れ」だ。テクニックとして何度も読み返して無駄を省け、とあるな。中場利一も、一番美味しいところとくだらないところをバサッと切り捨てる、と言ってたしね。でも、僕はずぶの素人だからな、無駄話ばっかりだねえ、これら ↓ は斬って捨てたとこ。

 引き戸タイプの玄関に新聞を差し込むコツを彼は心得ており、基本形は、新聞を下に落とさないで挟み込む。何故か? 落としてしまうとチラシがばらけるからだ。それと音で住人を目覚めさせないための配慮、新聞屋として情報の宝庫を土間の汚れた上に撒き散らしたくないとうプライドもあった。そう、彼は配達のプロだった。

 家それぞれ木製引き戸は上段・中段・下段で間隙が違う、木製の場合は。中段は鍵があるため、隙間は狭い。何度か配達することで癖を掴む。そして一番入れやすい場所に0.5秒で差し入れる。盗難防止のため、玄関の桟から1cm程奥まで差し込む。チラシの厚さによって新聞の厚みも日々替わるから、それを考慮した玄関の間隙を掴んでおくことを7ヶ月の新聞配達で彼は学び取っていた。読む側に立つと、お年寄りの配慮をすると中段やや上、屈まなくとも手を上げなくとも取れるポジション、中段20cm上が理想だろう。こうすれば、家の中からはさっと抜き取れるが、外からだと絶対引き抜けない、取ろうと思えば玄関のガラス戸はかなりの音を立てるだろう。 

Copyright (C) 2008 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.