2008年5月5日(月)

「黒死病/ノーマン・F・カンター」を読んで。

 GW後半戦、三日目、ややこしい天気である。降るなら『どばっつ』、晴れるなら、『からっつ』とやってほしいものである。中途半端はイケナイ。

◆今日もファミレス籠もって?『黒死病』を読んだ。これは、1347-1350年にヨーロッパを襲った疫病で、2000万人の人が死んだ。「流行病」(黒死病と言われたのは1800年以降)のことが書かれた本。

 5人の内、4人が2週間以内に命を落とす危険があり、
 (1)第1フェーズ:インフルエンザに似た症状、高熱。
 (2)第2フェーズ:黒っぽいミミズ腫れ、隆起が脚の付け根や脇の下の窪みの近くに1cm~10cm出来る。激しい痛み。下痢と吐き気。
 (3)第3フェーズ:呼吸器疾患(肺炎)を併発

 『人口の増加は等比数列的で、食糧の増産は等差級数的であるため、戦争・飢饉・疫病などが人工を抑制する』らしい。

 もう少し医学的見地から知りたい部分もあったのだけれど、昔読んだ、「ホット・ゾーン」や「コブラの眼」なんか、が印象深いのでね。

 近代医学では、黒死病が主として齧歯類、とりわけラットの寄生生物(蚤)によって伝染したペストだったという共通の認識に達していて、家畜の伝染病である炭疽菌も関わっており、炭疽菌に感染した家畜から人へと広まってきたと考えられている。

 黒死病の前後して中世ヨーロッパの100年戦争を背景として、イングランドのプランダジネット王家の王女ジョーンが黒死病で他界する話も含め、前後時代が如実に、その時代感や文化や人々の暮らしぶりを交えて語られている。

 中世の時代、この疫病が元に農奴制の崩壊、豊かな農民階級(ヨーマン)の興隆、貴族階級の寡妻が富を得ること、また法制度の整備、延いては15世紀のルネサンス期へ移り変わる事柄にも言及されていて興味深い。黒死病を境にしてオプティミズム(楽観論)からペシミズム(悲観・厭世的)へ傾斜・傾倒と転換していくヨノナカってことも感じられる。

 第七章でユダヤ人に対することが割かれている。住む地を追われ(16世紀まで続く)、濡れ衣的に大量虐殺された。何故、ポーランドに住んでいるのか、3/4『ヒトラーの贋札』でもブログに書いたが、ポーランド在住のユダヤ人が多い理由がよくわかった。(本を読めば大変判ります) 17世紀の半ば頃までには、世界中のユダヤ総人口350万人のうち、半数がポーランドとウクライナに住んでいたそうだ。
 思考を変えて、第八章 毒蛇と宇宙塵の中で、大胆な仮定理論だが、すべての疾病は、究極的には地球の大気圏外から地上に降り注いだもの(垂直伝播)と唱える科学者もあり、それ以降のヒトからヒトへの疾病の感染は(水平伝播)する、この種の病原体は、地球大気圏外からの援軍なく、感染力を数世紀の間維持出来るともある。

 まあ、いろんなアプローチの考察・書き口があって、話は堅いですけれど、面白かったですね。興味をそそられた方は一読を。

ノーマン・F. カンター、Norman F. Cantor、久保 儀明、 楢崎 靖人
単行本: 265ページ
出版社: 青土社 (2002/10)
ISBN-10: 4791759974
ISBN-13: 978-4791759972
発売日: 2002/10
→中世ヨーロッパの人口の約四割を死に至らしめた人類史上最大の疫病“黒死病”。それは社会構造の大変革をもたらし、豊穣なるルネサンス文化と科学の時代への突破口となった―。現代の歴史学・医学の観点から疫病流行時の社会状況を鋭く分析し、農民から王侯貴族まで、様々な人間ドラマを織りまぜ、今なお人類を脅かす感染症流行の実態に迫る。 (「BOOK」データベースより)
→中世ヨーロッパ人口の約4割を死に至らしめた人類史上最大の疫病・黒死病。現代の歴史学・医学の観点から疫病流行時の社会状況を分析、農民から王侯貴族までの人間ドラマを織りまぜ、人類を脅かした感染症流行の実態に迫る。(「MARC」データベースより) 


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