SONY TC-K96R 2022
11/19
土曜日

3,500円で落札したカセットデッキ、しばらく寝かせ、修理業者でも暫く寝かせ、この度、修理が完了した。
SONY TC-K96R ¥94,800(1978年頃)
解説 
オートリバース録再やリピート再生が可能で、さらに取り外し式のワイヤードリモコンを搭載したカセットデッキ。
長時間連続録音できるオートリバース機能や、カセットのA→B、B→Aへと3回までリピート再生が可能です。
ヘッドには、テープの走行方向に合わせ、録再ヘッドが180゜回転するロートバイラテラルヘッド方式を採用しており、往復とも録音・再生特性が均一になっています。
メカニズムのロジカル・コントロールにマイクロプロセッサーを採用しており、8種類のボタン操作を論理的にコントロールすることで、正確さと高信頼性を得ています。
操作ボタン部が着脱でき、ワイヤードリモコンとして使用できます。
キャプスタン用と早巻き用に、シンプルな構造で滑らかな回転を目指したBSLグリーンモーターを使用した、2モーター構成となっています。
ヘッドには、ヘッドギャップ精度や高域特性、耐摩耗性に優れたF&Fヘッドを搭載しています。
バイアスとイコライザーが独立した3段切換のテープセレクターを搭載しています。
適正録音レベルの調整に効果的な3段ピークレベルインジケーターを搭載しています。
別売りのプログラムタイマーを使用することで連続留守録音が可能です。
プログラムソースの繰り返し再生ができるメモリーストップ/プレイ機構を搭載しています。
ワンタッチで無音録音ができるRec Mute機構を搭載しています。
高域のダイナミックレンジを改善するドルビーNRシステムと、FM放送のパイロット信号をカットするMPXフィルターを搭載しています。
後追い録音が可能です。
ラインとマイクのミキシングが可能です。
ラインアウトとヘッドホン兼用のボリュームを搭載しています。

型式 カセットデッキ
ヘッド 消去:2
録再:1
モーター BSLグリーンモーターx2
SN比 59dB(ドルビーoff、ピークレベル、デュアドカセット)
周波数特性 20Hz~18kHz(デュアドカセット)
ワウ・フラッター 0.05%wrms
歪率 1.3%(デュアドカセット)
消費電力 12W
外形寸法 幅430x高さ155x奥行325mm
重量 8.5kg

●リモコンは、3.5㎜モノラルプラグと2.5㎜モノラルプラグが使えました。
https://www.youtube.com/watch?v=Sdp8fZ4k2OE
?診断状況
1.録再テスト行いました結果、400Hz基準信号の録再にてL,R共に16dB低く、
  10KHzの録再ではほぼ振幅が出ない状態であることを確認致しました。
  原因調査を行いました結果、
  ◇録再ヘッドへのBIAS印加電圧が異常に低く、BIASスイッチをNormal<=>CrO2切り替えても
   切り替えてもBIAS電圧の変化が無い状態でした。
   BIAS回路の各所電圧を観測しました結果、
   メカの奥深くに実装されているヘッドの向き(Forward、Reverse)に従って
   BIAS電流値を切り替えるスイッチのON抵抗が正常値0Ωに対して7Ωと
   高くなっているため、BIAS回路への供給電圧回路が発振状態になって
   電圧が低下していることが主要因でした。
 
   プリント基板上でスイッチ間をJumperで接再sいまた結果結   400Hz:
   Normal Tapeにて、L-Chは 7dB 低く、R-Chは 11dB 低い状態に上がりました。
   CrO2 Tapeにて、L-Chは 12.5dB 低く、R-Chは 15.7dB 低い状態に上がりました。
   10KHz:
   400Hzの振幅低下分を補正計算した結果、
   Normal Tapeにて、L-Chは 11.5/8、R-Chは 9.5/8 に上がり(過ぎ)ました。
   CrO2 Tapeにて、L-Chは 19/8、R-Chは 15/8 に上がり(過ぎ)ました。
 
  ◇再生回路のGain調整が大きくずれており、L,R共に4dB低い状態でした。
 
  BIAS DIR切替スイッチの接点のON抵抗改善、および、
  再生Level調整、録音Level調整、BIAS調整が必要です。
 
2.Rrverse時のメカ音が気になるとのことに付きましては
  Reverse PLAY時の異音は感じられませんでしたが
  FF(右方向早送り)時にTape巻き終わりに向けて徐々にキュルキュル音が大きくなる
  ことを確認致しました。
  原因調査を行いました結果、
  左側リールと回転軸間の油切れによる摩擦音が発生していることが原因と判りました。
  左側リールと回転軸間のグリスアップが必要です。
 
以下、ご提示頂きました不具合とは関係御座いませんが
3.リール駆動トルクがかなり低下しており、PLAY時のTake Up側リールが
  断続回転している状態でした。
  リール駆動トルクを測定しました結果、FF時 20g-cm、REW時 20g-cm、
  Forward PLAY時 10g-cm、Reverse PLAY時 15g-cm
  といずれもかなり低い状態でしたが、
  FF/REWではC-120 Tapeの巻き終わりまでしっかり駆動出来ておりました。
  原因調査を行いました結果、
  リール駆動アイドラゴムの硬化による滑りのためでした。
 
4.Forward PLAY、Reverse PLAY間を切り替える都度、
  Take Up側リールの回転開始が1秒程度遅れる状態でした。
  原因調査を行いました結果、
  リール駆動アイドラ振り子のグリス半固着により、移動がスムーズではないことが原因でした。
 
5.PAUSE+PLAY(+REC)状態にすると1秒弱の周期で連続的に打音が発生し、
  ピンチローラーユニットが上下を繰り返す状態でした。
  原因調査を行いました結果、
  モード制御カムの回転・停止制御を行っている回転停止用アームが
  カムのPAUSE回転位置でカムの突起としっかり?み合わず、
  カムを停止出来ていないためでした。
  PAUSE状態にしなければ上記不具合は発生しませんので
  PAUSE状態にされない場合は修理の必要は御座いませんが
  修理をご希望の場合は
  回転停止用アームを駆動しているソレノイドの位置調整やグリスアップ等が必要です。
 
6.Forward PLAY、Reverse PLAY、FF、REW等各操作を行いますと、
  別の動作になる誤動作が時々発生することが御座いました。
  原因調査を行いました結果、
  各ボタン一体型タクトスイッチを軽く押した場合、
  ON抵抗が正常値0Ωに対して数十~数百Ωになることがあるためでした。
  汎用タクトスイッチの場合は交換をご提案するところですが
  ボタン一体型タクトスイッチは専用部品のため入手が出来ませんので
  隙間から洗浄剤噴霧の後接点復活剤噴霧を行いました結果、
  改善致しました。
  本修理は通常でしたら2,00円頂戴したいところですが、サービスとさせて頂きます。
 
7.脱着式操作ボタンユニットを本体に固定するための本体左側パーツと
  フロントパネル間の接着が剥離しているため、
  操作ボタンユニットを触るとぐらつく状態でした。
  操作ボタンユニットのぐらつきがお気になられなければ修理の必要は御座いません。
 
8.PLAY時LINE OUT、および、Phones OUTのR-ChにWhite Noiseが乗っておりました。
  Level Meterは振れない程度ですが、聴感上は気になる程の大きいレベルです。
 
9.PLAY開始直後のLINE OUTのL-ChにDC Offsetが180mV乗っており、
  1秒程度後には0V(正常値)へ下がる状態でした。
  一般的なACカップリングが実装されているアンプの入力に接続して
  お聴きになられている場合は現状では音への影響は御座いません。
 
10.3KHz Tape Speed基準テープの再生におきまして、Tape Speedは
   Forward -1.40%、Reverse -1.17% と仕様(+/-1%以内)の範囲を超えて遅い状態でした。
 
11.10KHz Azimuth基準テープの再生におきまして、左右の位相差は
   Forward 5/4波ズレ、Reverse 1/3波ズレ で
   Forward での10KHz振幅は約半分に低下しておりました。
 
12.Headphones/LINE OUT Volume にガリ音が出ておりました。
   ヘッドフォンでお聴きになられない場合、および、Valuable LINE OUTをお使いになられない場合は
   修理の必要は御座いませんが、修理をご希望の場合はVolumeの簡易洗浄で治ると思います。
 
以上によりお見積りがご用意出来ましたのでご提示させて頂きます。
正式お見積り金額はご返却送料2,068円を含め56,000円となります。

?修理状況
修理、および、調整が完了致しましたのでご報告申し上げます。
1.左側リールと回転軸間のグリスアップを行いました結果、
  FF(右方向早送り)時のキュルキュル音発生は治りました。

2.リール駆動アイドラゴムの交換を行いました後にリール駆動トルクを測定しました結果、
  FF時 150g-cm、REW時 145g-cm、 Forward PLAY時 55g-cm、Reverse PLAY時 45g-cm
  と正常な範囲の値が得られるようになりました。
 
3.リール駆動アイドラ振り子ユニットのグリスアップを行いました結果、
  Forward PLAY、Reverse PLAY間を切り替える都度
  Take Up側リールの回転開始が1秒程度遅れる症状は治りました。
 
4.Auto Stop Sensor兼Counter駆動ベルトが劣化により変形しておりましたので
  予防整備として交換を行いました。

5.メカの修理のためにフロントパネルを取り外しましたところ、
  フロントパネルに接着されている脱着式操作ボタンユニット固定用パーツが左右両側共
  完全に剥がれ落ちてしまい、操作ボタンユニットを装着出来なくなりましたので
  接着致しました。

6.Headphones/LINE OUT Volumeの簡易洗浄を行いました結果、ガリ音は治りました。
 
7.再生回路R-Ch Withe Noiseの修理を行いました結果、治りました。

8.PLAY開始時に発生するLINE OUT L-ChのDC Offsetの修理を行いました結果、治りました。

9.再生回路の音質に影響がある複数のトランジスターが純正型番(現在:製造終了のビンテージストック品)ではない

  現在製造流通している安価な互換品や非互換品に交換されておりました。
  互換品とは代表的な各パラメーターが近似で同じ設計回路上で交換が可能というだけで、
  音質の違いについては全く比較・考慮されたものでは御座いませんので
  純正品との音の違いは拘りをお持ちの方には判る程度かもしれませんが
  テープの再生音の周波数特性の悪化や歪み音が生じるものでは御座いませんので
  純正品への交換を行わなくても基本性能への問題は御座いません。
  非純正型番トランジスター11個を純正品に交換をご希望の場合は10,000円で承ります。
  再生回路の非純正型番トランジスターを純正型番品へ交換を行いました。
 
10.BIAS DIR切替スイッチを分解して接点クリーニング・接点復活剤塗布を行いました結果、
   スイッチのON抵抗は正常値(0Ω)となり、
   BIAS回路への供給電圧回路の発振は治り、BIAS印加電圧は正常になりました。 
 
11.Tape Speed調整を行い、Forward +0.03%、Reverse +0.13% に追い込みました。

12.Azimuth調整をForward、reverse共に行いました。
 
13.再生Level調整を行い、400Hz dolby基準テープの再生におきまして、
   L,R共に 1.36Vpp に合わせ込みました。
 
14.Level MeterのR-Chの指示値が1.2dB ズレておりましたので
   Meter Level調整を行いました。
   本調整は通常でしたら1,000円頂戴したいところですが、サービスとさせて頂きます。
 
15.録音Level、および、BIAS調整をNormal Tapeにて合わせ込みを行いました結果、
   CrO2 Tapeでの400Hz、および、10KHz録再Levelは
   400Hz:L-Chは 3.1dB 低く、R-Chは 2.2dB 低い状態になりました。
   10KHz:L-Chは 7/8 と若干小さく、R-Chは 8/8 で合うようになりました。

修理伝票
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