日本陸海軍機大百科、三式戦闘機『飛燕』一型丁[キ61-Ⅰ丁] 2011
8/27
土曜日

 シリーズ第四二弾は、陸軍の液冷発動機搭載戦闘機『飛燕(ひえん)』を紹介しましょう。太平洋戦争中、日本陸海軍を通じて唯一の実用液冷戦闘機として異彩を放った三式戦闘機『飛燕』を産み出したメーカーが川崎航空機工業である。同社は対象8(1919)年の会社創立以来、一貫して陸軍機専用メーカーの立場を堅持したことでもよく知られる。さらに、同社が開発した実用機の多くが液冷発動機搭載機で占められるのも、他メーカーとは一線を画す点だった。


 太平洋戦争勃発から1年半が経った昭和18(1943)年6月、キ61は中島一式戦「隼」の後継機種として、三式戦闘機『飛燕』の名称で制式採用される。ところが、しさく、増加試作機の段階では表面化しなかったハ四〇発動機の起床、不調がニューギニア島の最前線に展開した生産期に頻発し、周囲の期待を大きく裏切ってしまう。
 結局、BMW-6の比ではないほど高品質、高精度と言えたDB601Aエンジン(ドイツのタイムラーベン社の傑作、液冷倒立V型12気筒(1,100hp))を、オリジナル通りに制作できる能力が川崎に、と言うより日本の工業界全体になかったことが主要因となり、陸軍と川崎が固執した液冷戦闘機信奉は破綻をきたしてしまった。
 さりとて、三式戦の代わりになる新型機はなく、陸軍としては”欠陥機”と知りつつも、生産続行して使い続けるしか術が無かったことが、その深刻さをさらに助長した。キ61以降、川崎の液冷戦闘機の系譜が絶えてしまったことが、その問題の大きさを物語っている。

 次回は、海軍の艦上攻撃機『天山』十二型を紹介します。

※サイト:日本陸海軍機大百科


Copyright (C) 2011 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.