日本陸海軍機大百科、『一式戦闘機 隼二型』[キ43-Ⅱ] 2010
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月曜日

 シリーズ第一九弾は、『一式戦闘機 「隼」二型』キ43-Ⅱで、日本陸軍の発動機換装により全般性能向上を図った、太平洋戦争後半の主力型だ。

 陸軍は一式戦[キ43]の飛行性能に真に満足していたわけではなかった。太平洋戦争が必至となったことにより、航続距離の長さのみを買われてようやく制式採用にこぎ着けた。その後、キ43は発動機を海軍の零戦二号型(のちの三二型)と同系の「ハ一一五」(1,150hp)に換装し、全般性能の向上が図られた。この改良型キ43-Ⅱの開発は、昭和16(1941)年半ばには具体化した。しかし結果的にはめざましいほどの性能向上とはいかず、さらに武装も12.7mm砲2門のみと、連合軍新型機に対して非力の感は否めず、苦しい戦いを強いられることになる。

■零戦に倣った改良型案
 キ43-Ⅱの狙いは発動機の出力と高空性能の向上に見合う諸性能の向上だった。その他一号型零戦に比べて見劣りしていた火力(射撃兵装)を強化するため12.7mm機関砲2門に換装したり、主翼端を短縮することで横転(ロール)性能を改善したりした。また、光像式射撃照準器の導入、防弾装備の強化、風防形状の変更、操縦室内計器盤の改善なども合わせて実施された。テストの結果、最高速度は高度6,000m付近で515km/h、同高度までの上昇時間7分30秒と、旧式に比べて思ったほどの向上は見られなかった。しかし、最前線部隊における旧型(キ43-Ⅰ(便宜上))との速やかな代替の要望に応えるため、陸軍は中島に対しキ43-Ⅱの量産移行を命じ、昭和17(1942)年6月には一式戦闘機二型の名称で制式採用を決めた。 

■貧弱な武装に泣く
 キ43-Ⅱの性能や諸装備は、陸軍高空が主担当とするニューギニア島やビルマ、中国大陸戦域において連合軍側の新型軍用機に対し非力の感は拭いきれず、空中勤務者(パイロットを含めた高空乗員すべてを指す陸軍正式名称)を嘆かせたのが火力の貧弱さだった。

パソコンのモニターの前で撮影

中島製『一式戦闘機「隼」二型』[キ43-Ⅱ]

ニューギニア島方面では圧倒的兵力で押し寄せるアメリカ陸軍第5航空軍機を相手にす戦を強いられ、次々と消耗していった。対照的にビルマ(現ミャンマー)戦域では、非力な一式戦を擁し、常に兵力面においても劣勢に終始したなかで、約3年間にわたっって連合軍とほぼ互角の戦いを演じた。

■旧式化を承知の量産拡大
 次期主力戦闘機として期待をかけた三式戦闘機『飛燕(ひえん)』は液冷発動機の不調や故障に泣かされ、一式戦の後継を目指したキ84(のちの四式戦『疾風』)の実用配備までには、なお期間を要していた。しかし旧式となりながらも、ライセンス生産の立川飛行機含めて昭和19(1944)年9月までに中島と併せて生産機数は3,389機にも達した。

 次回は二式戦闘機『馗隼(しょうき)二型』[キ44-Ⅱ]をお楽しみに。(2010/06/07 22:46)

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