日本陸海軍機大百科、『鍾馗二型甲』[キ44-Ⅱ甲] 2010
3/18
木曜日

 シリーズ第一三弾は、陸軍の『鍾馗(しょうき)』。二式(単座)戦闘機は、それまでの日本陸軍戦闘機とは一線を画す速度、上昇力、火力(射撃兵装)の優越を第一義とした重戦闘機の嚆矢であった。世界的な戦闘機発達の流れからみれば、その開発意義は的を得ていたといえる。太平洋戦争においてはその特質を生かす場面が少なく、華々しい実績は残していないが、格闘性能の優劣がすべてという風潮が蔓延していた日本陸軍戦闘機隊にとって、特徴ある外観を含めてよくぞ生まれたといってよいほどの異色機だった。

 陸軍は昭和13(1938)年の「陸軍航空本部兵器研究方針」に新たに加えた一項として「軽単座戦闘機」と「重単座戦闘機」の2種を開発する要あり、と明記されていた。重単座戦は機銃砲(12.7mm)1門と機銃2挺を装備し、速度に卓越すべきものと定義されていた。重単座戦はそれまでの軽単座戦とは一線を画するものだった。中島設計陣が当初選択した発動機は自社製の「ハ四一」空冷星形複列14気筒、1250馬力だったが、陸軍の求めた期待に反して低性能となってしまった。紆余曲折の末、発動機を「ハ一〇九」(離昇出力1,500hp)に換装することを主眼とし、それに関連してプロペラも直径が50mm大きい3.0mの新型に改めた。また、潤滑油冷却器は蜂の巣型に変更してカウリングを下面に突出してもうけた。

パソコンのモニターの前で撮影

『鍾馗二型甲』

 さらに、風防前面のガラスを厚さ40mmの防弾ガラスにしたほか、各燃料タンクも、ゴム被膜で覆った防弾タンクにするなど各所に改造が加えられ、ここにキ44-Ⅱが誕生した。全備重量は2,780kg、翼面荷重は185kg/㎡、最高速度は600km/hと計画当初の目標に届いた上、高度5,000mまでの上昇時間はキ44-Ⅰに比べて1分39秒も短縮して4分15秒に向上するなど、目に見えて改善されていることがわかった。

 次回は局地戦闘機『雷電三一/三三型』をお楽しみに。(2010/03/18 23:53)

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