『俘虜記』大岡 昇平(著) 2018
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火曜日

本書は、昭和23年から昭和26年にかけて「文芸界」「改造文藝」「文藝春秋」「文学界」「人間」「芸術」「作品」に掲載された「俘虜記」「続俘虜記」「新しき俘虜と古き俘虜」の中から一連の俘虜記として集められ昭和27年に刊行されている。

「捕虜」と「俘虜(ふりょ)」は同義であるが、俘虜は第二次世界大戦頃まで使われていたようである。いくら調査・インタビューしてもフィクション・ノンフィクションによらずもここまで書けないだろう。何故か?大岡氏の俘虜としての実体験に基づいてるから。著者自身の感情が「生」であるから。よってリアリティが格別に最大級である。且つ、冷静に客観的に観察されてもいる。何百人の中の数少ない京大出の補充兵で、インテリ層だった。抽斗が豊富で博学である。更に米軍との通訳をしていたことから米軍と触れること多く米軍の感じていたこと、出来事も書かれていて、日本人的立場だけではなく、米軍側からの立場で観ることができる。よって公平で極度にどちらかに偏らず平準化されている。集団(中隊、小隊等の区分け)の中の勢力争いが変化していくこと、唯一の楽しみである食事の争奪戦、銀蝿もやってみるぞ、入所当初から日数の経過と共に心理的な変化、住みやすくするための所内の改善、余興は何する?などなど。俘虜と一口に言うが、米軍に怪我や包囲され捕まったのと、自ら投降したのでは雲泥の差で日本軍では意識した。投降は捕獲されるより「恥」とされた。投降者は投降していない話を欺瞞するものもあった。所謂「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓に洗脳されきっていた日本軍には、故郷には帰れないとまで思い詰めた者も多かったらしい。多少片苦しい文体でもあるが、几帳面に言葉を選び抜いて、それが文学的香りもするのである。司馬遼太郎氏が絶賛したことが読むきっかけとなった。薦めたい本である。

私が読んだ、『戦記関連書籍』

俘虜記 (新潮文庫)
大岡 昇平
4101065012
登録情報
文庫: 480ページ
出版社: 新潮社; 改版 (1967/8/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101065012
ISBN-13: 978-4101065014
発売日: 1967/8/14
内容紹介
著者の太平洋戦争従軍体験に基づく連作小説。冒頭の「捉まるまで」の、なぜ自分は米兵を殺さなかったかという感情の、異常に平静かつ精密な分析と、続編の俘虜収容所を戦後における日本社会の縮図とみた文明批評からなる。乾いた明晰さをもつ文体を用い、孤独という真空状態における人間のエゴティスムを凝視した点で、いわゆる戦争小説とは根本的に異なる作品である。






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