原書は、MURDER MUST ADVERTISE(1933)。西暦1933年は日本でいえば昭和8年であるが、英国は文化的にも国際的にも当時の日本より一歩も二歩も近代的であると感じるだろう。今と比しても陳腐感、違和感がないからだ。物語としては麻薬をバックボーンにした広告会社を舞台としたサスペンスなのだが、話に起伏がなく、全体として単調になっていて、クリケットなど寄り道も多く、ストーリーに引き込まれるタイミングが少ないように思われる。著者のドロシーは抽斗が豊富で、あらゆるところから引用していて、注釈がないと判らないことも多いのではないか。