本作品、僕が生まれる前後に「婦人公論」に連載(昭和36年1月~昭和38年10月)されていた。夏目漱石は短篇は読んだことがあるが、長編は初めてと随分遅咲きではあるが、「文学」という敷居の高さにも敬遠していたところがあったのも事実である。漱石が描く登場人物の女性、「音子」は男からみて都合のよい女、このような女性であってほしいと儚くも期待する男目線である。女性目線からすると「あり得ない」のではないかと少なからず不信感を抱いた。また、50年以上も前の作品のせいか、女性の「処女性」を神聖化する風潮がある。腑に落ちぬのは「けい子」が何故ゆえ「音子」を慕いつつも、あのような結末の行動をするのだろうか。そこが漱石の世界観なのだろうか。
(ガーディアン必読1000冊:ロマンス 58作品読了/1,000)
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