『死んでいる』ジム・クレイス(著) 2018
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月曜日

原書は、BEING DEAD(1999)。正月から「死んでいる」とは如何なものか、めでたし、ではない。全体のトーンとして最後まで凪ぎのような静かで淡々と物語は進行する。学友と男女の出会い、そして結婚、夫婦生活、親に馴染まない家を出た一人娘。登場人物は少ないが、個々の心の葛藤は火山級だ。ボコボコと煮え立つ。男が惚れる女=愛しの妻、妻が求める男=/夫の構図。心の内なる秘めた本性は違っていて同じベクトルを指し示すことは希だ。職場での、夫婦の、そして親子の関係は微妙な力加減と無関心さが作用する。タイトルのとおり、殺人事件が発生する。殺される状況、屍体が動物の餌となり、風土に晒される描写は冷静で飄々としているが描写は絶品だ。全体を通し盛り上がりを期待してはいけない。

英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊:家族・私小説(43作品読了/1,000作品中)

死んでいる (白水uブックス―海外小説の誘惑)
ジム クレイス Jim Crace

4560071489

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登録情報
単行本: 258ページ
出版社: 白水社 (2004/7/1)
言語: 日本語
ISBN-10: 4560071489
ISBN-13: 978-4560071489
発売日: 2004/7/1
出版社からのコメント
 撲殺されて、砂丘に横たわるカップルは動物学者の夫婦。少しだけ生き長らえた夫は、かろうじて手を伸ばし、妻の脚にそっと触れていた……。

 2人が死んでいる衝撃的なシーンから始まる本書は、時をさかのぼる形で、若き日の2人の砂丘での出会い、撲殺された当日の行動、そして2人の絶命と、海辺の生き物によって死体が貪られ、腐乱していく様が、かわるがわる描写される。

 死を語るときに伴われがちな幻想や、宗教的な救済を拒否し、感情移入を廃した、美しい詩を思わせる書きぶりで、「生と死」という極めて単純で無慈悲な事実が、冷徹に表現される。

 川上弘美氏は「死の本質に近いものをこの小説はとらえ得たのではないか」(『朝日新聞』書評)と評した。全米批評家協会賞を受賞、『ニューヨーク・タイムズ』年間最優秀作品にも選ばれた、驚異の問題作!



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