『よくできた女』バーバラ・ピム(著) 2017
10/8
日曜日

初読、ピムの第二作品(1952)である。時代はWWII戦後まもないロンドン。主役・ヒロインのミルドレッドは30歳過ぎの、悪く言えば「行かず後家」の女性。学歴もあり、美人ではないがそれほど外見も悪くはない。結婚したくないわけでもないのだろうが、ままならず。揺れ動く乙女心?の狭間で、心の中では妄想猛々しいエネルギーはあるものの、いつも物わかりのよい、理性的な女として、教会の教区活動に勤しんでいるという、なんとなく小説にしてはずっと地味な活動なのだ。ミルドレッドからみる観察眼が、口から迸る「言葉」とは裏腹なシャープさとギャップがユニークでユーモアである。でも、どうかな、現代にミルドレッドが生きていたとしても、彼女は独身をずっと通すだろうし、そのほうが彼女にはフィットするのではなかろうか、とアサハカ男の僕は感じたのである。

よくできた女 (文学シリーズ lettres)
バーバラ・ピム 芦津 かおり
462207561X
登録情報
単行本: 360ページ
出版社: みすず書房 (2010/11/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 462207561X
ISBN-13: 978-4622075615
発売日: 2010/11/26
内容紹介
舞台は、まだ食料配給がつづく戦後のロンドン。
ヒロイン兼語り手のミルドレッドは30歳を過ぎた独身女性。
両親の残してくれたささやかな収入に頼りつつ、パートタイムで働く彼女は、
親しい牧師姉弟や旧友ドーラと交流したり、教区活動に加わったりしながら平穏な生活を送っていた。
そんな彼女の住むフラットの下に、文化人類学者のヘレナと海軍将校の夫が引っ越してきた。
美人で魅力的だが家事はさっぱりのヘレナと、ハンサムで女たらしのロッキーという「華のある」夫妻の登場で、
ミルドレッドの静かな生活に波風が立ちはじめる……
さしたる大事件も突出した人物もないのに読者をうならせる。
定年退職小説『秋の四重奏』で日本の読者の心もつかんだ、バーバラ・ピム。
没後に評価ますます高まり「20世紀のオースティン」とも称される英国女性作家ピムの
代表作にして、「おひとりさま」小説の傑作を、瑞々しい訳文で楽しまれたい。



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