『日本のいちばん長い日』半藤 一利(著) 2017
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月曜日

2015年、映画化されご覧になったことも多いのではないか。その原作にあたる。本書は1965年に発行されており、誤認等を訂正・加筆されたものである。終戦、昭和20(1945)年8月15日の24時間前から、微に入り細に入り何が起こっていたのか、克明に記されている。

陸軍のエリート、参謀達の考えは概ねこのようであった。文中から「「国体の精華」とはなにかという大命題にとっくんでいた。真剣に、それは殺気だつほどの真剣さで。しかし真剣すぎるだけに狭かった。彼らが大命題にとっくんでいる土俵がつまり「軍人精神」というワクであるのに、彼らは気づいていなかった。彼らは教育されていた。全滅か、もしくは勝利あるのみと。彼らに降伏はなかった。陛下を奉じて戦えば、たとえ全滅するもそれは敗北ではない。そうした神秘的な、しかし徹底した観念を吹きこまれていた。」

『国体護持』とは何か? これらも陸軍参謀の主だった考えは、「もし天皇の上に他の外力が加わったとしたら国体維持は絶対不可能である。この外力を排除するのが皇軍の力であり、皇軍の任務はそこにあるのである。ところがポツダム宣言受諾は、とりも直さず天皇の上に他の力が加わることであり、この力をとりのぞくことを任務とする皇軍は武装解除されている。これでどうして国体維持ができるというのか。全滅か、もしくは勝利しかないというときに、そうした妥協的な国体維持というものがありうるであろうか。」

とまあ、何を況んやであるが、軍人エリート層は、狭義で固着した考えに洗脳されていたのである。視野狭窄と責めるには惨い、彼らなりの無垢の世界観があったのでしょうね。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)
半藤 一利
4167483157
登録情報
文庫: 371ページ
出版社: 文藝春秋; 決定版 (2006/07)
言語: 日本語
ISBN-10: 4167483157
ISBN-13: 978-4167483159
発売日: 2006/07
内容紹介
昭和二十年八月六日、広島に原爆投下、そして、ソ連軍の満州侵略と、最早日本の命運は尽きた…。しかるに日本政府は、徹底抗戦を叫ぶ陸軍に引きずられ、先に出されたポツダム宣言に対し判断を決められない。八月十五日をめぐる二十四時間を、綿密な取材と証言を基に再現する、史上最も長い一日を活写したノンフィクション。
 



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