内容紹介
軍隊という組織の中で苦悶する若き兵士たち
徴兵を忌避する若者、兵営内で吹き荒れる私刑、軍隊への死を賭した反抗……。兵士たちの深い嘆きと隠された肉声に、野間宏、柴田錬三郎、結城昌治ら一流作家が迫った、感動を呼ぶ本格小説16篇。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
細田民樹
1892(明25)・1・27~1972(昭和47)・10・5、東京生。早大英文科卒。幼少時、父の郷里広島県山県郡に移住。大学在学中の1913年7月「泥焔」が「早稲田文学」に掲載される。15年12月、徴兵され広島騎兵第五連隊に入営、18年12月除隊。翌年4月、軍隊生活を題材とした「或兵卒の記録」を持参して上京、「中央公論」「改造」「雄弁」などに分載。24年に改造社より刊行されるが、初の反戦小説として陸軍当局から圧力を受ける
梅崎 春生
1915(大4)・2・15~65(昭40)・7・19、福岡生。東大国文科卒。陸軍軍人の家庭で厳しく躾けられる。学生時代より同人誌に参加。39年8月「風宴」が「早稲田文学」新人創作特集号に掲載される。40年、東京市教育局に勤務。44年6月、海軍に召集され、通信科二等兵曹として九州の各基地を転々とし、鹿児島で敗戦。この戦争体験をもとに書いた「桜島」を46年9月「素直」に発表。54年8月「ボロ家の春秋」(直木賞)を「新潮」に発表
渡辺 清
1925(大14)・2・17~81(昭56)・7・23、静岡生。上野尋常高等小卒。41年、一六歳で海軍志願兵となる。翌年、戦艦武蔵に乗り組み、マリアナ、レイテ沖海戦に参加。44年10月24日、フィリピン海戦で撃沈された際、九死に一生を得て生還。45年9月、郷里の富士宮に復員。この体験をもとに「戦艦武蔵の最期」などを書く。戦後は結核で闘病生活をおくる。59年、日本戦没学生記念会会員になる
村上 兵衛
1923(大12)・12・6~2003(平15)・1・6、島根生。東大独文科卒。1942年、陸軍士官学校入学、44年卒業後、近衛歩兵連隊旗手となる。45年7月、陸軍士官学校区隊長に転任、浅間山麓で演習中に敗戦。復員後に東大入学。第一五次「新思潮」同人となる。53年12月「医師と参謀」を「新潮」に、55年9月「葬送行」を「文藝」に発表。56年4月「中央公論」に「戦中派はこう考える」を発表、戦中派世代の代表として、社会評論家に転身する
菊村 到
1925(大14)・5・15~99(平11)・4・3、神奈川生。早大英文科卒。44年10月、陸軍予備士官学校入学、翌年6月卒業後、見習士官として秋田に赴き、敗戦。48年読売新聞入社、社会部、文化部記者として勤務。53年、モンテンルパの日本人戦犯釈放の取材で、フィリピンに特派員として派遣される。この時の体験をもとに、55年4月「小さな十字架」を「文学者」に発表。57年2月「不法所持」で文学界新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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