『B面昭和史 1926-1945』半藤一利(著) 2016
11/29
火曜日

ミレニアル世代と呼ばれるデジタル・デバイスの洗脳シャワー光線を受けた人達には、B面と言われても「はてなはてな」でしょうが、レコード盤にはA面、B面と両サイドに音楽の溝が刻まれていて、A面はどちらかというとシングルカットされる曲、B面は多少地味で、主役を張れるほどではなく準主役といったところか。(ビートルズには両A面というのがあったが、それはさておき)

前回読んだ『昭和史 1926-1945』がA面、歴史上、教科書に載る表舞台とするのなら、B面として庶民の生活、流行、歌、永井荷風、作家たちのの日記から、そして著者自身、戦前から子供時代を過ごした下町悪ガキとしての思いでも引き出しながら語られている。それらを『民草』という括りで多角的にユーモア込められて庶民の力強さが粋で潔い。といいながらA面も充分盛り込まれているので、本書から手にとっても違和感はないだろう。参謀本部、大本営の無秩序な陸軍の満州・中国への進出、後に引くに引けない崖っぷち、外交でもドイツ、ソ連の強かさにアタフタ煽られ、英米を敵に回し、決して誰が見ても勝てぬ大東亜、太平洋戦争へと突き進んでいくわけだが、多くの国民は事実を知らされるまでもなく、玉砕玉砕で戦況の悪化を肌に感じつつも、あらゆる事の統制・規制の中、腹を空かせて耐えようとしてきた。国民はある種、しなる柳のようなもので、窮屈な生活の中でも「何か起きそうな気配すらも感ぜぬまま民草は、悠々閑々と時代の風にふかれてのんびりと、あるときに大きく揺れ動くだけ、そういうものなのである。(文中p208)」と。言い得て妙ではないか。これは昭和の時から戦後までの政治・軍事・国民生活を知る上で教訓を与えてくれましょう。

B面昭和史 1926-1945
半藤一利

4582454496
平凡社 2016-02-10
売り上げランキング : 55762

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
登録情報
単行本: 600ページ
出版社: 平凡社 (2016/2/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4582454496
ISBN-13: 978-4582454499
発売日: 2016/2/10
内容(「BOOK」データベースより)
国民はいかにして戦争になびいていったのか?政府や軍部の動きを中心に戦前日本を語り下ろした『昭和史1926‐1945』(=A面)と対をなす、国民の目線から綴った“もうひとつの昭和史”

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
半藤/一利
1930年、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長、取締役などを経て作家。著書は『日本のいちばん長い日』『漱石先生ぞな、もし』(正続、新田次郎文学賞)、『ノモンハンの夏』(山本七平賞)など多数。『昭和史1926‐1945』『昭和史戦後篇1945‐1989』(平凡社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。2015年、菊池寛賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)






Copyright (C) 2016 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.