『ポール・マッカートニー 告白』ポール・デュ・ノイヤー(著) 2016
7/25
月曜日

ポール・マッカートニーとは随分と永くファンを続けている。中学二年でビートルズのファン(1975)となった。誰に勧められたわけじゃない。既にポールは愛妻のリンダと共にウィングスというバンドを引っ提げていた。まだ、ビートルズのレコードもアメリカ版を数枚持っているだけで、小さなレコードプレーヤーしかなかった。ウィングスのLPを買うよりも、ビートルズのレコードを買う方が優先順位が高かった。それでも高校2年の時、同級生からWINGS OVER AMERICA(1976)、ライブ音源LP3枚組を安く買った。今でも手元にある。高校卒業までにビートルズ解散後のアルバムを買ったのは、BACK TO THE EGGE(1979),WINGS GREATEST HITS(1978)だった。WINGS時代の曲は全般、僕は好きだ。McCARTNY II(1980)も当時はシンセサウンドが潮流を意識しすぎと思ったが、今聞き返してみると斬新なのである。

TUG OF WAR(1982)からのポールは、甘ったるいアレンジとロック魂を捨て去ったような楽曲が多くなり、PIPES OF PEACE(1983)以降もアルバムは発売されるたびに買い続けたが、夢中にはなれなかった。

本書は35年来の付き合いとなる著者がポールをいろんな合間合間にインタビューと、その時代時代を取り巻く状況や著者なりの考察を加えたもので、ポールの初心者ファンにも受け入れられやすいのではないだろうか。

ポールは伝説のビートルズという途轍もなく偉大なバンドに属したが故に、解散後、ソロ活動をするにあたっても絶えず元ビートルズのポール・マッカートニーとして、そしてビートルズ時代の音楽性と比較され、生半可な出来の曲をこき下ろされ続けてきた。彼はいつもやる気満々なのだが、自分の中では「いかすぜ、最高」と意気揚々としても周りはそうは評価してくれない。

曲作りの相棒としてジョン・レノンに相当する相方を見つけようとしたがうまくいかなかった。周りは「あのポール・マッカートニー」なのだから、ズケズケと言える立場ではなく、それがポールの我が儘、言うことはすべて彼の思い通りになるという持ち上げられすぎたことも左右しているのではないか。絶えず、ヒットがほしい、世間から注目されたい、ビートルズより偉大と言われたいと思い続けたのは彼自身のインタビューでもよくわかる。また、うまくいかないときは、何といえばいいか、開き直り的な、もとからヒットを狙った訳じゃない的な言い訳をする傾向がある。また、バンドとしても解散後20年近くは恵まれなかった。レコーディングでも気に入らないと自分で演奏してトラックを入れ替えてしまうようなこともするのだ。(これはビートルズ時代にもあった。ね、リンゴ、ジョージ)ワンマンすぎるのだろう。奴隷の如くバンドメンバーを扱うとこき下ろされたこともあった。彼は完璧主義者でもあるらしいから。

といいながら、素朴で、前向きで、原点を忘れず、話し好きで、フレンドリーで、金持ちぶらず、庶民的な生活も忘れず、1942年生まれのポールほどエネルギッシュに活動できるミュージシャンはいないだろう。これからもファンでいますよ。

ポール・マッカートニー 告白
ポール・デュ・ノイヤー 奥田祐士
4907583583
登録情報
単行本: 556ページ
出版社: DU BOOKS; A5版 (2016/6/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4907583583
ISBN-13: 978-4907583583
発売日: 2016/6/10

内容紹介
ポールにとっても“ビートルズ以降の人生"は苦闘の連続だった!
デビューから50年以上をへて振り返る、すべてのこと。
創作の秘密や直面する自らの老いにも踏み込んだ、自伝的インタビュー集

ポールと 35年以上にわたって親交を深めてきた著者が、これまでの対話の記録を一冊に集約。もっとも信頼する音楽ジャーナリストだけに打ち明けた、人間ポール・ マッカートニーの本音がここにある。

――「本気で音楽が世界を変えられると思っているのか?」と訊かれるたびに、もちろん、と答えてきた





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