『日本海軍400時間の証言』NHKスペシャル取材班(著)
-軍令部・参謀たちが語った敗戦-
2016
7/21
木曜日

本書は是非、読んでいただきたいと熱望したいし、または、NHKオンデマンドで視聴できる三回シリーズの番組、
NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 第1回 開戦 “海軍あって国家なし”
NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 第2回 特攻 “やましき沈黙”
NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 第3回 戦犯裁判 “第二の戦争”
を観ていただきたい。大東亜戦争、太平洋戦争の海軍に対する捉え方が一転するだろう。既知の歴史観が崩れ去るだろう。何故か?「歴史の闇」のダークな部位に光を当てているからだ。制作者は「戦争被害者の声を代弁するドキュメンタリーではなく、為政者に近い権力の中枢にいた側の声から、あの戦争を本質を浮かび上がらせようとした挑戦的な番組であった」と語っている。

海軍の組織は、海軍省、連合艦隊、そして、軍令部から構成されていた。軍令部は判りやすく言うと大本営で、海軍兵学校、更に海軍大学校を優秀な成績を納めたエリート中のエリートが集う少数精鋭の部署で、わずかな人数で計画立案、兵器開発の骨子を担っていた。また、天皇の統帥権を得て、補佐する立場から、政府の介在なく、戦闘計画や予算確保を決めることが出来、これは軍事国家まっしぐら路線とも言えた訳である。これら軍令部に属した要人が戦後、「反省会」と題した130回、400時間にも及ぶ証言から実際の記録を、または証言を得て制作されており忍耐と製作する側の熱い想いが伝わる内容である。

第一回は、何故、戦争に踏み切ったのか? 陸軍と海軍の立場、組織の中で服従関係の中で、理屈では勝つことは出来ない戦争に踏み切ってしまったのは何故なのか、について掘り下げている。

第二回は、「特攻」について。皆が知る神風特攻隊は自ら希望・熱望し、お国のために潔く必死(死が前提として作戦行動計画が立てられている、つまり1%の生還見込みもない)覚悟だったのか? 人間魚雷「回天」「桜花」「震洋」の視点からも掘り下げられている。言わざるべき時に沈黙する組織体制「やましき沈黙」、それは現在、自分たちの組織の中でも起こりえると提言している。

第三回は、戦犯裁判について。東京裁判を終えた日本弁護団が異口同音に「陸軍は暴力犯、海軍は知能犯、いずれも陸海軍あるを知って、国あることをを忘れていた」と伝えている。天皇へ被害が及ばないこと、軍令部の上層に責を被せないこと、この皺寄せは、現地の参謀、士官に責任転嫁された。東京裁判が始まる直前、マッカーサー司令部と海軍間(二復)で取り交わされていた内容とは。

私は、零戦の開発秘話、エースパイロットの活躍から、第二次世界大戦に興味を持ち始めたのだが、海軍、陸軍各種戦線、または国民の立場から体験した戦争、ヨーロッパ戦域と関連書籍は90冊以上を読み、それらの知識から理解を深め、自分なりの戦争に対する持論は持ち得ていたつもりでいた。いやはや甘かった。本書で全部が顕在化したわけではないが、読了感としては、身につまされること余りあるのである。

日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦 (新潮文庫)
NHKスペシャル取材班
4101283737
登録情報
文庫: 508ページ
出版社: 新潮社 (2014/7/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101283737
ISBN-13: 978-4101283739
発売日: 2014/7/28

内容(「BOOK」データベースより)
軍令部に在籍したかつての参謀を中心として戦後に開かれた「海軍反省会」。その録音が現存することが判明し、NHKスペシャルの企画はスタートした。発掘された元エリート軍人たちの赤裸々な発言が、開戦の真相、特攻作戦に至る道程、東京裁判の裏面史を浮かび上がらせる。やがて、彼らの姿は現代に生きる我々と重なってゆく。同名番組取材班6名による、渾身のノンフィクション。





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