『火星の人(上下巻)』アンディ・ウィアー(著) 2016
4/27
水曜日

今年、映画「オデッセイ」が公開された。その原作となるのが「火星の人」である。原作は営業戦略上、カバーに腰巻きを付けられ本屋に平積みされることが多い。まんまと罠にかかってしまた。この手のSF、宇宙物に弱い。

さて、映画を観る前に原作を読んでいるメリ・デメは、
 ・映画では語られない、端折られる伏線や裏事情がよく理解できる。
 ・自分の頭の中でイメージしたシーン、人物像が「なるほど」納得感、もしくは「そんなはずじゃ」失望感のどちらか、もしくは中間として、我が脳に描いた映像をよりヴィジュアルとして定着することができる。
 ・いつのまにそんなに原作をねじ曲げてしまったのかと途方に暮れる。
 (”原作 NOT 映画”と認識すべきだし、それが一般的だと諦めるべき)

「原作VS映画」対決(無理して対決しなくていいし、どちらかといえば親和性が強い)は、良し悪し、一長一短あっていいのだが、スペースもの、サバイバルものは、本書も所轄主管のNASAが半分は舞台となるのだがテクノロジー満載の装置類・造形物を自分なりの想像で妄想しながら作り上げつつ読書するのは楽しみのひとつである。

著者アンディ・ウィアーの処女作である。しかし、火星にひとり取り残され苦労するのだが、僕には苦労とは感じ取れず、苦境も楽しみに替えてしまうような楽観的主人公である。(なんとアメリカ的な・・)SFジャンルとしての宇宙全般の挙動・裏付けが乏しく、火星の地上の過酷な環境全般の中に身を置かれ、そんな簡単にはいかんだろう、と感じた訳である。もっと藻掻き苦しみ、絶望のどん底で気も狂うほどになるのが人間らしいのであって、一年半のサバイバルを精神的苦痛も限りなく少なくやり過ごせるわけがない、と不信感たっぷりなのである。主人公の苦難に立ち向かう中で脆弱さを克服しながら一歩ずつ前進し続けるプロセスに僕は感動したいわけなのである。全体的に柔だけれど映画向きではある。

映画がレンタルされたら「オデッセイ」は観る。必ず。頭の中で再現した科学技術の粋を集めた装置・造形物が思惑通りだったか、外れだったかを判定するのも楽しみのひとつだからである。

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
4150120439
登録情報
文庫: 320ページ
出版社: 早川書房; 新版 (2015/12/8)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150120439
ISBN-13: 978-4150120436
発売日: 2015/12/8
火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
4150120447
登録情報
文庫: 320ページ
出版社: 早川書房; 新版 (2015/12/8)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150120447
ISBN-13: 978-4150120443
発売日: 2015/12/8

内容(「BOOK」データベースより)
【上巻】有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが―。奇跡的にマークは生きていた!?不毛の惑星に一人残された彼は限られた食料・物資、自らの技術・知識を駆使して生き延びていく。映画「オデッセイ」原作。

【下巻】火星に一人取り残されたマーク・ワトニーは、すぐさま生きのびる手立てを考え始めた。居住施設や探査車は無事だが、残された食料では次の探査隊が到着する4年後まで生き延びることは不可能だ。彼は不毛の地で食物を栽培すべく対策を編みだしていく。一方、マークの生存を確認したNASAは国家を挙げてのプロジェクトを発動させた。様々な試行錯誤の末、NASAが編み出した方策とは?宇宙開発新時代の傑作サバイバルSF。






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