『アシスタント』バーナード・マラマッド(著) 2015
9/12
土曜日

ママラッドの「アシスタント」、アメリカ文学、絶版である。1957年の作品である。イタリア青年のフランクは、ふとしたことから貧困街のユダヤ人家族が経営する食料品に押し入る。その彼が、その後、モリス(食料品店の主人)の店員として住み込みながら働く。時折、売り上げをネコババしたりもする。そのフランクはモリスの娘、ヘレンに想いを寄せていく、主人に自分の罪を白状したい葛藤と、娘に恋い焦がれる渇望。見向きもしなかったヘレンも徐々にフランクに心を寄せていく。そして、身を捧げようとしていたヘレンをフランクは半ば強硬に犯してしまうのだった。登場人物は少ないのだが、主人、奥さん、娘、そして店員の相互間の心情の揺れと、徐々にほぐれていったり、和解したり、誤解したり、また、急速に疑心暗鬼に逆戻りとなったり、それぞれの心の揺れ具合が丁寧な筆致で書き進められている。決して、文章的に上手な作家ではないが、ストーリーに飲み込まれてしまう。
さあ、最終コーナー、フランクとアレンは如何様な未来をデザインしていくのだろうか? ほのぼのと明かりが点すこじんまりした未来が隙間見えてきた。「もう少し先までマラマッドさん、書かなかったの?」その後、どうなるかは、読者それぞれがアレンジする楽しみを残した、ってことですね、マラマッドさん。

アシスタント (新潮文庫 マ 3-2)
バーナード・マラマッド 加島 祥造
4102051023
登録情報
文庫: 374ページ
出版社: 新潮社 (1972)
ISBN-10: 4102051023
ISBN-13: 978-4102051023
発売日: 1972
社会的成功を夢見る孤独な若者フランク・アルパインは、貧しい食料品屋に強盗に押し入るが、罪の意識に駆られてその店にまい戻り、店員として働くようになる。社会の底辺に一生を埋める馬鹿正直なユダヤ人の店主や、美しく向上心に燃えるその娘との接触によって新しい価値観に目覚める青年の精神の遍歴を通して、困窮と貧苦の中においても人間を失わぬ真の尊厳性を描く。







Copyright (C) 2015 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.