『変わらぬ哀しみは』ジョージ・P・ペレケーノス(著) 2015
7/29
水曜日

全体を通して、ウィットで、擬人的、比喩的、それから彩りを添えるであろう生唾ゴクンの色場面などは、皆無なほどにない。素直な情景描写、登場人物のストレートな感情で淡々とストーリーは展開していく。

1959年、思春期を迎えている主要な登場人物、時代と人物の育ちと関係が語られている。時は移って1968年、ホワイトアメリカンVSブラックアメリカン構造も根底にあるが、ベトナム戦争に参戦し、退役したらどうなるのか、戦争後遺症、黒人解放として働き殺害されたキング牧師、暗殺後の暴動も詳細に描かれている。それらを背景としてストーリーは紡がれていくのだが、捻り技やウルトラCライクな凝った技法もない。にもかかわらず、知らず知らずのうちに物語に引き込まれていくのは著者のパワーなのだろうか。当時のR&B中心の流行の曲やバンドも随所にちりばめられ、車(キャデラックやビュイック)の描写も多分にある。それなりに「可」ではないだろうか。

変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョージ・P. ペレケーノス George P. Pelecanos
4151706623
登録情報
文庫: 542ページ
出版社: 早川書房 (2008/03)
ISBN-10: 4151706623
ISBN-13: 978-4151706622
発売日: 2008/03

内容(「BOOK」データベースより)
1968年、黒人警官デレク・ストレンジは己れの職務をまっとうしていた。白人から罵られ、黒人から同砲を取り締まる裏切り者と蔑まれても。時代は大きくうねり、黒人はキング牧師の下、権利の拡張のため社会運動を起こしていた。その最中、黒人青年が車に轢かれて不可解な死を遂げた。警察の捜査は進まず、やがて黒人による暴動の兆しが見え始める。その時デレクは…ハードボイルドの詩人ペレケーノスが綴る時代の慟哭。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ペレケーノス,ジョージ・P.
1957年ワシントン生まれ。『硝煙に消える』(1992)で作家デビュー。1996年に発表した『俺たちの日』が、1998年度“ミステリチャンネル闘うベストテン”の第1位に選ばれるなど高い評価を得る。2001年に黒人探偵デレク・ストレンジを主人公にした『曇りなき正義』を発表し、以後順調に作品を出し続けている。






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