『ジョンレノン 最後の日々』フレデリック・ラインハルト・シーマン(著) 2015
6/5
金曜日

本書はジョン・レノンが銃殺に倒れる約2年間(1979-1980)、アシスタントとして働いた著者の日々を綴ったものである。アシスタントといえば聞こえはよいが要は身の回りの世話、使いぱしりで、人の送り迎えや買い物、ジョンから指示された雑用をこなしていたのであった。ジョンはビートルズのメンバーとして、解散からソロの平和・政治活動、音楽を通じて、全世界のファンから神話化されていたし、崇拝的に称えられていたのだが、実際のジョンはそのような人間ではなかった。彼の子供時代の両親の離婚、父と母のどちらについていくか五歳のジョンに選択を迫ったこと。また、自由奔放な母、ジュリア、実は男出入りが激しかったこと、そしてミミおばさん(メアリー:ジュリアの姉)に引き取られるが、厳しい躾、折檻、心がいつも折れていた。そうしたことが続きながらも思春期を迎えジュリアと音楽を通して心が通いだした最中、交通事故による母の死。親しかったバンド仲間、芸術の才能に溢れたスチュアート・サトクリフの死、その原因を作ったのは自分だと悔やんだジョン。ミミの夫にあたるジョージ叔父さんはジョンにとても優しかった。そんな彼もパタッと倒れ帰らぬ人になってしまった。ジョンは身近で大事な人を亡くすたびに凶暴に、また鎧を被り、自分の本心を隠すようにもなったのだろう。彼はいつも寂しかった。認められたかった。愛されていたかった。ガラスのような繊細な心だった。

本書もそうだが、シンシア(最初の妻、ジュリアンの母)の本「ジョン・レノンに恋をして」、ドイツ・ハンブルグで親しかったアストリッド・キルヒヘルの自伝として小松成美の「ビートルズが愛した女」、ビートルズのエンジニアだったジェフ・エメリックの「ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実」、これら直接に深く身近に関わった人たちの書籍は時代を通しても一貫性があり、色褪せすることなく、整合性が採れており、信頼に値すると僕は納得しているし、疑わない。他のジャーナリストが書物や誰かをインタビューして書き上げた伝記本は正確性を欠くことのほうが多いものである。

さて、悪徳代官はオノ・ヨーコだろう。ジョンが銃弾に倒れるまでも、その後もヨーコにはロマンス中の男性が2名いたし、ジョンが邪魔なために避暑地へ追いやったり絶えず遠ざけるための作戦を立てた。ヨーコはジョンの財産管理をし、自由にお金を使いたいがためにジョンを洗脳した。ヨーコはジョンの名声を可能な限り利用した。ジョンはヨーコをマザーと呼び、何でもヨーコに許可を求めなければ行動できないまでに飼い慣らされていた。ポールやジョージが会いに来てもヨーコが断った。文中に書かれているエピソードに、ポールが日本公演の前、ジョンに「いい草がある」と遊びに来たがヨーコは追い返した。毎年、日本を訪れているジョンとヨーコは最高級スウィートに泊まっていた。ポールが日本公演で同じ部屋に宿泊するとわかると嫌悪感を覚えた。日本でポールが麻薬所持で逮捕されたのはヨーコが入国審査筋に情報をリークしたと言われている。ヨーコの母、妹、弟も頻繁にジョンの周りを出入りしていた。初めてヨーコがジョンと接触した1968年、金銭的援助を執拗に迫り、そうしないと自殺すると脅迫した。はじめはジョンも警戒していたのだが。ヨーコにジョンを寝取られたシンシア、離婚後ジュリアンへの養育費援助は一切なかった。ヨーコが禁止させた。シンシアはイギリスで低所得エリアでジュリアンと何一つ贅沢することなく育った。とシンシアの本に詳しい。ジョンの死後もピース、世界に平和を、愛を、声高々に連呼し、外面には「愛」というペルソナで覆っている。とまあ、書き出すと終わらない。しかし、ジョンはポールとライバル意識の中で多くの曲を作ったし、ポールのソロアルバム「マッカートニーⅡ」にインスパイアされて、5年ぶりの「ダブルファンタジー」のアルバムを製作したのだった。ジョンはそんな人ではない、金儲けのために書かれていると本書を辛口批判する人もいるが、そんな聖人扱いをするほどジョン・レノンはすばらしい人ではない。いい楽曲をたくさん残した人、子供の頃に十分な愛情を受けられずに大人になってしまった人、と僕は感じている。でも、僕はジョン・レノンに会ったこともないわけだから詰まるところ何も知らないのである。

ジョンレノン 最後の日々
フレデリック・ラインハルト シーマン Frederic Reinhardt Seaman
440170116X
登録情報
単行本: 415ページ
出版社: シンコーミュージック (1998/12/10)
ISBN-10: 440170116X
ISBN-13: 978-4401701162
発売日: 1998/12/10

内容(「BOOK」データベースより)
側近中の側近が明らかにしたジョン・レノン最後の二年間、未公開プライベート・フォト満載。ジョンの個人秘書がリアルに綴ったジョンの真実の姿。時に妻ヨーコ以上に近い距離にいた著者が、ジョンの主夫生活の実態など、レノン一家の奇妙な生活を克明に描いていく。圧巻は、引退表明していたジョン・レノンが、ついに音楽へと戻っていき、つぎつぎと楽曲を生み出していく一部始終。まさに感動もの。






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