『宮本武蔵』司馬遼太郎(著) 2015
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火曜日

吉川英治著の「宮本武蔵」と、司馬遼太郎の「真説宮本武蔵」に続く、司馬遼太郎の「宮本武蔵」を読了。
『兵法(ひょうほう)の流祖は、室町から戦国時代にかけてあらわれたが、太刀振りなどという兵法技術はこの乱世では重宝されなかった。馬を駆って槍と小銃で戦うこの戦争時代は、太刀りりなどは雑兵(そうひょう)のわざでしかない。兵法の兵は雑兵の兵であり、兵の技術である。士の技術ではなかった。このため流祖たちは仕官をしようにも、門地のない牢人あがりならばせいぜい徒士(かち)にしか採用されず、騎乗りの身分にはなかなかなれなかったであろう。このため流祖たちはついには山中に隠れるか、ともかくも世間をすてるほかなかったにちがいない。
 が、武蔵が名を得た時には、徳川政権の成立期である。兵法は、世間から評価されはじめていた。それほどに普及もし、大名ですらこれを学ぶ者が多くなっていた。仕官しようとおもえば腕次第では大名の方で捨てておかぬ世になっている』


と本書から抜粋してみた。確かに刀を振りかざして戦に勝てるものではない。足軽、農民が刀で切り込み、槍が続き、騎兵隊と流れていく。徳川の世になり、太平の世になり、戦を語れる人も少なくなってきた。新生○○流、○○派が全国でもたげてきたのも時期的にこのあたりだろう。武蔵は功名心があり、徳川、または大名に召し抱えられたがったが、武蔵は三千石はびたいちもんともまけないと談判したのだから、当時の常識からしても、ただ剣が強いだけでは仕官に召されようがない。天才的な技量もあったが、哲学的で、人に教えられる流儀のものではなかったらしい。清潔とは無縁の汚くて臭い出で立ちで、ちょっとは清潔に色気話でもあるほうが、人間らしいというものではないか、と僕は思うけれど。

新装版 宮本武蔵 (朝日文庫)
司馬遼太郎
402264625X
登録情報
文庫: 256ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2011/10/7)
ISBN-10: 402264625X
ISBN-13: 978-4022646255
発売日: 2011/10/7

内容(「BOOK」データベースより)
剣の道を極め、「兵法者」として頂点に立ちながらも、「軍学者」としての処遇を求め続け、野望と出世欲を捨て去れなかった宮本武蔵。才気溢れるゆえの自負と屈託、天才と紙一重の狂気など、その人物像を生い立ちから丹念に追い、新たな武蔵像を描き出した司馬文学の新境地。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
司馬/遼太郎
1923年大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪大学外国語学部)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年逝去。著書に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)、など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)





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