『ある日どこかで』リチャード・マシスン著 2012
9/26
水曜日

リチャード・マシスン、10冊目を読んだ。

時は1971年。
余命短い36歳のテレビ脚本家、リチャード・コリアが旅に出た。
コインを投げて決まった方向へ足を伸ばした。
そして、歴史的権威・風格のある浜辺のホテルに泊まった。
そこに飾られていた1986年の舞台女優の写真に目が留まった。
(彼女は名を馳せた名女優のエリーズ・マッケナだった)
写真を一目見るなり、強烈な衝撃と同時に吸い込まれるように一目惚れした。
図書館で彼女の情報を集め、ホテルの許可を得て過去の書類を漁った。
すると1986年11月19日に、自分がそのホテルに泊まったという宿帳を目にした。
彼は感極まり、子供のようにリチャードは大泣きをした。

彼は確信を持って、過去へ時間移送することを試みた。(どうやったかは本書で・・)
時は1986年、リチャードが泊まっていた同じホテル、実に75年前に遡った。
エリーズは、何故か、砂浜で彼が来ることを胸騒ぎと共に予期していたのだった。
彼は彼女が活躍していた1986年に時間を飛び越えたのだった。

そこで、たったの二日間、男と女は事件に巻き込まれながらも、相思相愛、
とても信頼し、尊敬し、身も心も一心同体となった。

彼はベッドに眠る彼女を見つめながら、彼女を起こさぬようコートを羽織った。
ポケットの破れた裏地から落ちていた1セントコインを見つけた。
その刻印は1971年だった。
リチャードは不安と恐怖に駆られた。
彼は徐々に薄らいでゆき、エリーズが陽炎のようになり、手足も動かなくなり、気付けば1971年に戻されてしまった。

エリーズがその後、どのような余生を送ったのか?
リチャードは1971年に情報集めをした際に、ライターによって書かれたエリーズの伝記小説で知っていたのだった。
歴史は変えられなかった。

リチャードとエリーズは、一生で、たった一度の、燃えるような短くも長い2日間で、恋をして、愛し合って、未来永劫に想い続けていくのか。

描写にまどろっこしい、重畳した記述も垣間見られるが、純粋なラヴ・ストーリーだ。

この小説のような相手に出会えることは、ソウルメイト以上の強固な結びつきがあるのだろう。
恋は数多くするのがいいというものではない。
羨ましい気もする。
恋は一度でも、一生を左右するような、ずっと一緒に過ごしていなくても、愛し続けられる相手に出会えることは、奇跡であって、想い続ける切なさ、儚さ、辛さは言葉では言い尽くせぬだろうが、邪道な恋愛をするよりは、ある部分大変に幸せなことであって、誇りにしてよいのではないだろうか。

リチャードとエリーズは、来世で、再び出会い、今度こそは離れ離れにならぬよう、しっかり抱きしめ合って、幸せを掴んで欲しいと思わずにはいられない小説だった。


ある日どこかで (創元推理文庫)
リチャード マシスン Richard Matheson

4488581021
東京創元社 2002-03
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* 文庫: 476ページ
* 出版社: 東京創元社 (2002/03)
* ISBN-10: 4488581021
* ISBN-13: 978-4488581022
* 発売日: 2002/03

◆出版社/著者からの内容紹介
【世界幻想文学大賞受賞作】
あと半年足らずの命と診断された脚本家リチャードは、旅の途中、サンディエゴのホテルで、女優エリーズの色あせたポートレイトを目にした。恋におちた彼は、彼女に一目会おうと1896年への時間旅行を試みる。映画化・舞台化され、今もなお熱狂的な人気を博する傑作ファンタジイ。解説=瀬名秀明

◆内容(「BOOK」データベースより)
脳腫瘍であと半年足らずの命と診断された脚本家リチャードは、旅の途中、サンディエゴのホテル・デル・コロナードでひとりの女性を目にする。女優エリーズ・マッケナ。1896年の色あせたポートレイトからほほえみかける彼女に会おうと、彼は時間旅行を試みるが…時を隔てた恋の行方は?映画化され熱狂的な人気を博する傑作ファンタジイ。世界幻想文学大賞受賞作。










(2012/09/26 21:30)


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