データ流通進展とマーケットプレイスの生成 2012
4/13
金曜日

シリーズブログ。ビッグデータの話題が残念ながら今回で最終回。

野村総合研究所の鈴木良介氏の著書『ビッグデータビジネスの時代』から、なるほどと感銘した部分をピックアップしてみたい。あくまで、本内容は以下の著書からであり、著者に敬意を表し、興味のある方は本書を手にとってご覧いただけますよう。

ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略
鈴木 良介
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内容紹介
「ビッグデータビジネス」は、産業界全般で進むクラウド利用と併せて、2010年代の情報・通信分野における注力すべきテーマの1つになることが予想されています。
本書では、海外を中心とした「ビッグデータ」の活用企業および、活用を支援しようとするIT事業者の最新動向や戦略、ビッグデータビジネスを検討する視点を詳細に解説します。
また、Hadoop、DWH、CEPなどのビッグデータ活用を支える技術やその周辺技術の動向を紹介するとともに、ビッグデータ活用のための課題や利用サイド事業者/支援サイド事業者双方における今後のビッグデータビジネスの将来像などについて広範に解説します。

・ビッグデータビジネスとは何か?
・ビッグデータビジネスの効用と活用事例
・主要陣営の戦略とビッグデータ活用を支える技術
・ビッグデータ活用に向けた3つの阻害要因
・ビッグデータビジネスの将来予測

内容(「BOOK」データベースより)
国内&海外のビッグデータ活用事例、Hadoop/DWH/CEPなどビッグデータ活用を支える技術の解説から主要IT事業者の戦略と商材、将来予測までビッグデータビジネスを徹底網羅。ビッグデータビジネスとクラウド以降のIT潮流を掴むための最適な1冊。


おしぼりの話は極論過ぎるかもしれないが、このような「データ売買市場」は決して夢物語ではなく、先鋭的な事業者は取組みを既に始めている。データ売買の集約サービス、すなわち「データマーケットプレイスサービス」について、いくつか例を挙げて紹介しよう。

Infochimpsは、データ売買の仲介事業者である。たとえば、「詳細な属性データが付与された全米18,000のゴルフコースデータ」は750$、「全米の著名な史跡のGISデータ」は4,000$、「スーパーマーケットチェーンQFCの全店舗の所在地リスト」が7$、などで実際に販売されている。

この事業者が提供する付加価値は、データ自体の価値はもとより、そのデータを活用可能な状態に「キレイに整形する」ことも含まれたものであるとされている。たとえば、前述のスーパーマーケットチェーンの全店舗リストなどは、そのスーパーのウェブサイトを訪れれば当然閲覧することができる。しかし、ウェブページとして表示されているそれらのデータを1軒ずつエクセルにコピーすることは大きな手間だ。その手間を考えれば、「数ドルくらいなら安いものだろう」ということを一つの訴求事項としている。

これまでの「データサービス」は、一つの提供事業者が、精査しパッケージ化したものを大規模に、金額的にも高価に提供することも多かったが、本サービスでは、本当に必要なデータだけを都度販売し、大規模なパッケージにしない、という方針を採っている。直近では、データのダウンロード販売に加えて、APIを介したデータの活用サービスも併せて提供している。

同社は、これらのデータ販売ごとのマージンを収益源としており、「販売価格の30%」を基本的なマージンとしている。データの販売価格については、販売を行おうとするものが、自ら定める仕組みとなっている。

その他の例として、「ウィンドウズ・アジュール・マーケットプレイス(Windows Azure Marketplace)」を紹介しよう。本サービスは、マイクロソフトがクラウドサービスの魅力を増大させるために提供しているプラットフォームサービスである。同社は本サービスの中で、アプリケーションと併せて、データの販売も行っている。本サービスも、Infochimpsと同様、ユーザがデータの提供者にも利用者にもなることができる。

   

いまだ手供されているデータの量や種類はそれほど多くないものの、マイクロソフトにおける本サービスの担当者は、次のように意気込みを示している。

”保険業界は自動車から発生するデータを猛烈にほしがるはずだ。現に、データ売買のために当社が用意している「Winodwds Azure Marketplace Data Market」からは、企業が異なる業界からのデータを要望しているという動向が見える”

このように、クラウドサービスや、その上で稼動するアプリケーション提供事業者になると同時に、データ流通事業者としての立場を確保していきたいとする状況がうかがわれる。

また、非公式ながらグーグルも同様のサービスを検討していることが報道された。これは、行動ターゲッティング広告に資するユーザデータの売買を可能とするサービスであるとされている。米国では既に行動ターゲティング広告に役立つようなデータや属性予想機能を「ユーザデータプロバイダ」と呼ばれるような事業者が提供している。グーグルが取り組もうとしていると報じられたサービスはそれらの事業者や広告サービス提供事業者が、保有するユーザデータの売買を行うためのサービスである。

当然にして、グーグルを含む広告媒体事業者は、ユーザ動態データを保有している。しかし、「すべてのユーザのすべてのデータを完全に掌握している」事業者は存在しない。そのような状況においてユーザデータプロバイダは、必要なデータを購入し、必要とされているデータを売却するためのサービスであるとされており、今後の動向に注視が求められている。

このシリーズ、ここらで修了としたい。







(2012/04/13 22:59)


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