ビッグデータ活用で期待される効能(2) 2012
3/17
土曜日

ビッグデータのシリーズは4回目。
こういったビジネスライクな話しは本来好きなのではあるが、私の読者諸氏は下品な話題が好きなようであり、堅い話が続くと、読者離れに拍車がかかりそうではあるが、チャライだけが人生ではない、と半世紀を生き抜いた僕は思う。


野村総合研究所の鈴木良介氏の著書『ビッグデータビジネスの時代』から、なるほどと感銘した部分をピックアップしてみたい。あくまで、本内容は以下の著書からであり、興味のある方は本書を手にとってご覧いただけますよう。

ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略
鈴木 良介
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内容紹介
「ビッグデータビジネス」は、産業界全般で進むクラウド利用と併せて、2010年代の情報・通信分野における注力すべきテーマの1つになることが予想されています。
本書では、海外を中心とした「ビッグデータ」の活用企業および、活用を支援しようとするIT事業者の最新動向や戦略、ビッグデータビジネスを検討する視点を詳細に解説します。
また、Hadoop、DWH、CEPなどのビッグデータ活用を支える技術やその周辺技術の動向を紹介するとともに、ビッグデータ活用のための課題や利用サイド事業者/支援サイド事業者双方における今後のビッグデータビジネスの将来像などについて広範に解説します。

・ビッグデータビジネスとは何か?
・ビッグデータビジネスの効用と活用事例
・主要陣営の戦略とビッグデータ活用を支える技術
・ビッグデータ活用に向けた3つの阻害要因
・ビッグデータビジネスの将来予測

内容(「BOOK」データベースより)
国内&海外のビッグデータ活用事例、Hadoop/DWH/CEPなどビッグデータ活用を支える技術の解説から主要IT事業者の戦略と商材、将来予測までビッグデータビジネスを徹底網羅。ビッグデータビジネスとクラウド以降のIT潮流を掴むための最適な1冊。

『個別に、即時に、多面的な検討を踏まえた付加価値提供』を行う必要性が高まっていることは前回で触れているが、この観点に立ち、ビッグデータ活用の効用を整理するならば、

「フィードバック先」
「リアルタイム性」

の2つの視点による整理が有効である。

「フィードバック先」に関する軸は、
「系全体にフィードバック」か「個別にフィードバック」かで分類される。



小売店におけるデータ活用を例にすると、「系全体にフィードバック」は”陳列棚の配置最適化”が相当し、「個別フィードバック」はそれぞれの顧客に対して”先月の購買実績に応じたダイレクトメールの発送”などが相当する。

「リアルタイム性」に関する軸は、フィードバックされるまでどの程度の時間(タイムラグ)が許容されるのか、といった観点で整理される。

当然、緻密に二分されるものではないが、タイムラグに対する許容度が比較的高いものが「ストック型」であり、許容度が低く即時のフィードバックを求められているものが「フロー型」に分類される。

小売店の事例を続けると、「先月の実績に応じてダイレクトメールを発送すること」はストック型であり、「手に取った商品に応じて陳列棚のデジタルサイネーションに表示する広告の内容を変える」といった施策はフロー型に分類される施策といえる。

もちろん、「全体フィードバック X ストック型」の重要性が低くなったわけではない。長期にわたって蓄積された大量のログデータから法則性を見出し、施策につなげることの重要性はますます高まっている

しかしながら、「個別フィードバック X フロー型」の重要性が高まっていることも、また見逃すわけには行かない。「お客様それぞれの事情に応じて、適時適切におもてなしをしたい」という考え方は、近年に降って湧いた考えではなく、ニーズ自体は従来存在していた。ニーズはあったにもかかわらず、そのような施策が講じられなかったのは、そもそも収集・分析対象となるようなデータをリアルタイムで取得・処理することが困難であったことが理由の一つである。これが、技術的な進展・普及を受けて「よりリアルタイム性高く」フィードバックを行うことが可能になりつつあるのが現状といえる。

一方で、「より個別最適化された形で」施策を講じようとした場合、懸念も生ずる。プライバシーや機密データを取り扱うことに関する懸念がより増大するためである。「よりリアルタイム性高く」フィードバックを行うことを可能とするための技術的課題の解決と、「より個別最適化された形で」フィードバックを行うことに伴うプライバシー等に関する懸念の解決が必要となってくるだろう。


次回は「なぜ支援サイド事業者は、ビッグデータビジネスに乗り出したのか?」について斬り込んでみよう。






(2012/03/17 9:24)


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