『社会リズム』(1)-生体内リズムを乱すもの- 2012
3/8
木曜日

数回に渡り、「社会リズム」をピックアップしていこう。
本内容は、以下の著書からの要約であり、リワークプログラムの中でも教わった内容となる。
きちんと確認したい方は、本書を手に取ることをお勧めする。

対人関係療法でなおす 双極性障害
水島広子
4422114638

内容紹介
《対人関係療法でなおすシリーズ》の3冊目。「双極性障害」(=「躁うつ病」)とは、気分の高揚とうつ状態とが繰り返し訪れる病気である。単極性のうつ病と誤診されたためにうつがなかなか治らなかったり、病気ではなく性格の問題だとされて、きちんとした治療を受けられずに何年も過ごしている患者さんも多い。また、きちんと診断されても、これまでは薬物療法しか有効な治療法がなかった。本書では、「対人関係」と「社会リズム」という、この病気を発症させる二つの大きな要因に焦点を当てて、薬物療法以外に、自分自身でコントロール可能な方法を日本で初めて紹介する。

<目次>
はじめに
第I部 双極性障害を患うということ  
第1章 双極性障害という病  
第2章 双極性障害と社会リズム
第II部 対人関係・社会リズム療法(IPSRT)の進め方  
第3章 対人関係・社会リズム療法とは  
第4章 社会リズム療法  第5章 対人関係療法  
第6章 双極性障害対策チームを作る
本書の内容の理解を深めるための参考文献
あとがき


私たちの身体には「概日リズム(サーカディアン・リズム)」と呼ばれているものがあり、約一日の周期で繰り返す背営利的な変動のことをいい、睡眠・覚醒、ホルモン変動、体温変動などは、このリズムに従ってコントロールされている。概日リズムはほとんどの生物に損じしているもの。

人間の場合は、体内時計(生物時計)が、およそ24時間のリズムにコントロールされている。このリズムは、身体の中に元々内在しているものではなく、生活の中のいろいろな目印(「同調因子」と呼ばれる)によって維持されている。最もわかりやすい「同調因子」は、「日の出・日の入り」である。

朝、明るい光を浴びることで私たちの体内時計はリセットされると言われている。ただし、文明社会に生きている我々は、実際の日光よりも人工的な光の中で暮らしており、日の出・日の入り以外のさまざまなものを「同調因子」として体内時計のリズムを維持している。日の出・日の入り以外の同調因子には、例えは次のようなものがある。

朝の目覚まし時計が鳴る時間
食事の時間
仕事に出かける時間
決まったテレビの時間
就寝・消灯する時間
など

こうした因子が、体内時計の「時計合わせ」の機能を果たしている。「同調因子」がまったくないと、24時間より長い(人それぞれだが平均すると25時間程度)自由継続リズムを示すようになると言われている。

不眠の解消として、
 「毎朝決まった時間に起きよう」
 「起きたら直ぐに明るい光を浴びよう」
と言われているのは、すべて、「同調因子を規則正しくすることで概日リズムを整える」ことが目的である。

この生体内リズムと、外界のリズムとの間にズレが起こると、心身の不調につながることが知られている。例えば、時差のあるところに旅行をすると、概日リズムは一時的に乱れ、再調整される。「時差ぼけ」と呼ばれる現象は、概日リズムが外界の時計に併せて調整される間のずれを反映したもの。また、「概日リズム睡眠障害」と呼ばれる病気では、本人の睡眠パターンと、社会生活上望ましい睡眠パターンがずれるため、様々な支障をきたしてくる。

心身の不調を生み出すのは、外界のリズムとのズレだけではない。身体の中には、睡眠覚醒、体温、ホルモンなどの数十種類のリズムがあることが知られているが、これらのリズム相互間のズレが生じると、気分や行動の異常が起こってくる。うつ病のときには睡眠リズムが変化すると同時に、体温やホルモンなどのリズムがずれることも知られている。

時差ほど大きな外界のリズムの変化でなくても、食事の時間や仕事に出かける時間などの「同調因子」が変わってしまうと、リズムは混乱する。例えば、配偶者と死別したようなときには、それは悲しみの体験であると同時に、リズムが乱れる時期にもなる。

それまでは相手が「同調因子」として機能していたところがあったわけで、離婚や失業なども同様に、精神的なストレスの時期であると同時に、生活のリズムが大きく変わる時期でもある。ふさぎこんでしまったりすると、起床や就寝の時間も大きくずれ込むだろう。

こうなると、概日リズムも混乱してしまう。

次回は「生体内リズムと病気の関係」に移る。



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(2012/03/08 21:36)

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