怒りの指数は? コントロール法は?(12) -統合:認知リハーサル-

2012
3/6
火曜日

前回の「正常な感情移入」の続編。

『いやな気分よ、さようなら』から怒りについてシーリーズで要約してみたい。

誰にでも怒りはあるもの、その辺りをどのように緩和するか、多分、恐らく、皆さんにも有益な部分はあるはずだから、参考になればと期待を込めて。

本シリーズはこのように分割したい。

1. NOVACO怒りの評価尺度
2-1. なぜ腹が立つのか
2-2. なぜ腹が立つのか
3. 願望を実現させる手段にする
4. 気持ちを落ち着けよう
5. 想像法
6. ルールを書き直す
7. 狂った態度を受け入れる
8. 洗練された操縦法
9. 「すべき思考」を止めること
10. 交渉の戦術
11-1. 正確な感情移入
11-2. 正確な感情移入
12. 統合認知リハーサル
13. 自分の怒りについて知る事柄

〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法
デビッド・D.バーンズ 山岡 功一 夏苅 郁子
David D. Burns 佐藤 美奈子 林 建郎 小池 梨花

4791102061

内容(「BOOK」データベースより)
認知療法の気分改善効果は、驚くべきものである。うつ病に対して、抗うつ薬と同等か、それ以上の治療効果があると証明された初めての精神療法、それが認知療法である。本書は、人生を明るく生き、憂うつな気分をなくすための認知療法と呼ばれる最新の科学的方法を示す。抑うつ気分を改善し、自分の気分をコントロールする方法を身につけるための最適の書。

◆統合:認知リハーサル

怒っている時には、椅子に掛けて状況を客観的に見積り、この章のさまざまなテクニックを試すだけの時間的な余裕がないと感じるだろう。
これは怒りの特徴の一つである。
抑うつが静かに永く続くのと違って、怒りはずっと爆発しやすく挿話的なものである。自分が怒っていると思ったときには既に自分を抑えがたいわけである。

「認知リハーサル」はこの問題を解決し、今までに学んだ技術を統合して使うための有効な方法。実際の場面は経験せずに、怒りを克服する技術を習得する方法である。その後あなたが本当にそんな場面に出くわしても堂々と対処できるだろう。

まず、しばしば怒りの種になるような場面の「怒りを階層表(Anger Hierarchy)」を図1.7に従って+1(最も腹立たない)から+10(最高に激怒する)にリストしてみよう。怒り刺激は自分が怒ってはいけないと考えるような場面にしてみよう。

          図1.7 怒りの階層表
+1 レストランで15分待ってもウェイターが来ない
+2 友人に電話しても返事の電話がない
+3 客が説明もなく直前になって予約をキャンセルした
+4 客が何も言わずに約束に遅れた
+5 人が自分を意地悪く批評する
+6 劇場で前の列のにぎやかな若者が不愉快である
+7 新聞で強姦のような残虐な暴力を読んだ
+8 も王配達して改修できない商品の支払がされていない
+9 数ヶ月前から夜中に家の郵便受けを繰り返しノックされ、犯人を捕まえることも止めさせることもできない
+10 テレビで、恐らく10代のグループが夜中に動物園に忍び込み、石を投げて多くの鳥や動物を殺したり片端にしたニュースをみた

「階層表」の最も腹の立たないランクから始めよう。まさにその状況にいるように想像してみてほしい。そして自分の「怒り」を言葉にして書き出してみよう。図1.7の例では「まったくもう。あのウェイターは何してんだ。なんであんな怠け者をおいておくんだ。あいつらがメニューと水を持って来るまで餓死するじゃないか」と考えてイライラしている。

かっとして、何もいわずにレストランから飛び出し、ドアをピシャッと締めることを想像してみよう。さあ、今感じている怒りを0から100%の間で評価、記録してみよう。

さて、もう一度同じシナリオを演じてみよう。ただし、もっと好ましい「落ち着いた考え」に換えて、リラックスして落ち着いているように想像してみよう。その場面を手際よく、はっきりとうまく処理するよう想像してみよう。

たとえば、「ウェイターは自分に気がついていないようだ。忙しくて私がまだメニューを見ていないことを見過ごしているんだろう。腹を立てることもあるまい」と思えばいい。

そしてウェイターにこのような原則に従って、はっきりと説明する場面を自分で考えればいいのである。自分が待たせれていることを手際よく説明する。もし彼らが忙しいからと釈明すれば、同意してやる。良い仕事をしていると彼らを褒める。そしてもう少しサービスをしてくれとはっきりと穏やかに言う。最後にはウェイターは謝罪し、VIP級のサービスをしてくれる場面を想像してみよう。あなたはいい気分でおいしく食事ができるだろう。

このシナリオをマスターして、この場面を怒らずに、穏やかに処理できるようになるまで練習してみよう。この認知リハーサルで、実際の場面に出会ってしまったときでもうまく対応できるようになるはずである。

この方法に反論があるかも知れない。ウェイター達がこちらの希望通りに動いてくれる保証もないし、このように考えることは現実的でないと考えるかもしれない。
この返事は簡単。
確かにその保障はない。
しかし、悪いほうに考えていれば、図bんんお予言が当たったかもしれないわけだが、怒りはもっと大きくなる。それに対して、良いほうに考えていれば、そうひどく腹が立つことも起こらないものだろう。

もちろん、認知リハーサルで、同じように悪いほうにも考える事ができる。ウェイターに近づくとイメージしてみよう。彼は鼻持ちならない高慢な態度でろくなサービスをしない。どれくらい腹が立つか記録し、冷静な考えに置き換え、前と同じように新しい戦略を考えてみて欲しい。

自分の身の回りに降りかかる多くの問題をうまく考え、そして対応できるようになるまで、階層表を練習し続ける。こうした場面へのアプローチは臨機応変で、違ったタイプの刺激には違った対応をしなくてはいけない。もちろん、感情移入は一つの方法に過ぎない。他の場面では、はっきり言葉にすることが鍵かもしれない。時には自分の期待を変えてみるようにすることが最も有効かもしれない。

感情的な成長、特に怒りの変化は少しずつ進むため、怒りを鎮める方法の習得を全か無か(All or Nothing)というように評価することはできない。いつもなら99%怒る刺激に、次の時70%しか怒らなかったらまず最初の成功だと思おう。認知リハーサルを続けていれば、50%、そして30%と減少してゆくことがわかるだろう。最後には怒らなくなったり、少なくとも許容できるようになる。

自分が躓いているとき友人や知り合いの知恵は大切な宝物。自分では見えないところを彼らはよく見ていてくれるもの。自分が葛藤したり、絶望したり、腹が立つ場面では彼らだったらどう考え、行動するのか尋ねてみよう。彼らは心の中で何を言っているのだろう? 彼らは実際何をしていることだろう? 人に聞いてみれば驚くほど早く上達することができるだろう。

次回は、「自分の怒りについて知るべき十の事柄」の最終単元をお伝えしたい。





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