前回の「「すべき思考」を止めること」の続編。
『いやな気分よ、さようなら』から怒りについてシーリーズで要約してみたい。
誰にでも怒りはあるもの、その辺りをどのように緩和するか、多分、恐らく、皆さんにも有益な部分はあるはずだから、参考になればと期待を込めて。
本シリーズはこのように分割したい。
〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法
デビッド・D.バーンズ 山岡 功一 夏苅 郁子
David D. Burns 佐藤 美奈子 林 建郎 小池 梨花
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内容(「BOOK」データベースより)
認知療法の気分改善効果は、驚くべきものである。うつ病に対して、抗うつ薬と同等か、それ以上の治療効果があると証明された初めての精神療法、それが認知療法である。本書は、人生を明るく生き、憂うつな気分をなくすための認知療法と呼ばれる最新の科学的方法を示す。抑うつ気分を改善し、自分の気分をコントロールする方法を身につけるための最適の書。
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◆交渉の戦術
ここで次のように考えるかもしれない。
「むちゃくちゃだ。先生(著者)は怠け者の無能な大工が並みの仕事をすればそれで良いとおっしゃる。医者の言うことなどこの程度のものだ。鹿馬鹿しい。治療費を払う価値はない」と。
待ってほしい。
誰も大工に眼をつぶれとは言っていない。怒ったり、混乱せずにうまく自分の意思を通すには、穏やかで断固とした方法のほうがうまくいく。それに対して、道徳的な「すべき」という考え方はあなたを怒らせ、相手を感情的にさせてしまう。そして、大工は防衛的になり、逆にあなたに攻撃的になる。喧嘩は親しさのひとつの現われだから、大工と親しくしたいのならそれでいいだろうが、大工に仕事をしてもらいたいわけでしょう。怒ることにエネルギーを費やさないようにすれば、その分自分の欲しいものにエネルギーを向けられるでしょう。こんな場合には次のような交渉技術が役に立つ。
1.文句を言う代わりに良い点を見つけて誉めてみる。見え透いたお世辞と判っていても気分が良いのも事実。人の良い点を何かに見つければ、褒めることができる。それから、(キャビネットの建てつけが悪い)問題に触れ、穏やかになぜ調整して欲しいかを説明する。
2.相手が喧嘩腰になってきたら、どんなに理屈に合わないことでも彼を落ち着かせよう。これこそが黙らせ、相手の帆に受ける風を取り去ることになる。そうすれば、たちどころに・・・・。
3.穏やかに、しかしきっぱりと自分の見解をはっきりさせよう。
大工が降参するか、妥協点に達するまで、この三つのテクニックを何度も何度も組み合わせを変えて使おう。最終通告や脅迫は最後の手段。そしてはじめたら最後までやり通そう。一般的な原則として、彼の仕事に満足しないから交渉するのである。ばかにしたり、悪者だ、鬼だと非難して、レッテル貼りすることは避けなければならない。自分の陰生感情を彼に伝えたいなら、刺激的な言葉や誇張を使わずに客観的に表現しよう。たとえば「君はもっといい腕があるのに今回は君の腕を発揮していないね」と言う方が「全く、ろくな仕事ができないやつだ」と言うより良いでしょう?
次の会話はそのテクニックを使ってみたものである。
あなた
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「出来上がって嬉しいね。人にも自慢したいね。特にパネルの出来がいいね。台所のキャビネットがもう一歩だけどね」(賞賛)
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大工
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「どこか具合の悪いところがありますか」
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あなた
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「ドアがちょっとね。取っ手が曲がっているし・・・」
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大工
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「ええ、でもそれが精一杯ですよ。大量生産なので、必ずしもベストではないんです」
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あなた
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「そうだろうね。そりゃ、もっと値の張るものとは違うだろうし(武装解除)。でも、あまり良くないね。君がもう少し手を入れてくれると嬉しいんだけど」(明瞭化)
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大工
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「それは、工場にでも言ってくれなくっちゃ。私には出来ませんよ」
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あなた
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「それはわかるよ(武装解除)。でもこのキャビネットが満足できるようになるには君の協力が必要なんだ。それはできない相談ではないだろう。これは見掛け倒しだし、きちんと締まらないんだ。面白くないだろうけど、君がこれを直してくれるまでは、完全な仕事と認めるわけにも給料を払うわけにもいかないんだ。君のほかの仕事を見れば、もう少し時間をかければきれいにする技術を持っていることもわかるよ。そうしてくれれば、君の仕事に満足して、他の人にも勧められるよ」(賞賛)
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嫌な人にこういうテクニックを試してみよう。恐らく、文句を言っているよりもずっといいことに気付くだろう。
自分の思う以上の見返りに満足するでしょう。
次回は、「正確な感情移入」について述べていこう。
(xxx)
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