双極性障害の軽躁病を探すのが難しい理由

2012
1/13
金曜日

「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ
の本から、トピックスとなるものをピックアップしていこう。 (このシリーズは複数回続く予定)

「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ


ジム・フェルプス 荒井 秀樹
4791107624

■内容紹介
うつ病と診断される人が増えている中、「落ち込んでいる」とか「意欲がわかない」といった抑うつ状態が長期間にわたり持続したり繰り返したりする人たちを、すべて同じうつ病と診断していて間違いはないのか? 本書は、長引く抑うつ状態に苦しんでいる人に対して、双極II型障害や軽微双極性障害を念頭において、診断や治療を見直しながら、主治医とともに病気を克服していくための対処方法を示している。また気分障害をスペクトラムとしてとらえる考え方を学ぶ。

■内容(「BOOK」データベースより)
うつが長いこと持続したり、繰り返したり、より悪くなる、などということはありませんか。抗うつ薬をのんでも効果がないとかより悪くなるということはありませんか。もしかすると、うつ病ではないのかもしれません。繰り返すうつの波は、「軽微な」双極性障害のせいかもしれません。本書は、気分障害スペクトラムの概念を詳説し、すぐに実践できる対処法を紹介する。



今日の精神科診断は次の四つの要素から成り立っている。
 1.症状
 2.長期にわたる症状の経過(発症年齢も含む)
 3.家系
 4.以前の治療への反応

ここで、双極性障害の診断の際に、軽躁の有無を絶対条件としている。

DSMでは、軽躁病がないことを証明しなければ、双極性障害ではないとは言えない。
医師がどのように探すかが極めて重要となる。

◆軽躁病を探すのが難しい理由

 1.抗うつ薬によって双極性障害は悪化する可能性がある
 2.したがって、双極性障害がない場合のみ、抗うつ薬を安全に使用できる。
  (つまり、双極性障害が悪化する危険性なく使用できる)
 3.
軽躁病の症状があると、双極性障害である
 4.したがって、軽躁病がない場合だけ、抗うつ薬が安全に処方できる


結局は診断では軽躁病を探すことになる。
この探求があまりにも大事なので、何か決まったやり方があると思うのは当然だが、軽躁病を見つける決まったやり方がないため著者はこの本を書いていると述べている。

問題なのは、理論的に何かがないと言いきることが難しいことにある。

◆「ない」ことは証明できない

医療の分野では「証拠の欠如は、欠如の証明にはならない」と。

◆足りない時間と大きなリスク

医師が何を探しているかはっきりしないと考えたほうがよい。
  ・睡眠パターン
  ・意欲レベル
  ・行動レベル
  ・危険な行動(リスクテイキング)
  ・計画性
  ・気分
  ・急速な思考など

軽躁のリスクは大きいもの。
というのは、安全に抗うつ薬を服用するには双極性障害がないことが大前提であるため。
現在の診断の方法では、軽躁状態も探すべきである。
抗うつ薬を処方する前に、医師は軽躁がないことを確かめなければならない。

米国食品医療品局(FDA)では、「患者全員が抗うつ薬の処方の前に、双極性障害の検査を受けるべきである」と。
しかし、医師はスクリーニング質問票に全項目記入してもらい話を進めるが、医師のほとんどはこのようにたっぷり時間をとることができない。

◆診断する際の医師の先入観

医師が診断の機会があってもしない、または双極性障害の診断に細かな検査が必要だと考えていない医師もいる。一方、双極性障害だと過剰に診断してしまうことはあり得ないとはいえない。

◆自分の軽躁病を理解しているか?

症状があることになぜ気付かないのか?
症状を持っていることを自分がわからなければ、他に誰がわかるというのか?

自分(疾患者)があまりにも長い間軽躁病の症状に慣れてしまっていて、睡眠不足なども全く症状として捉えていないこともある。






(2012/01/13 20:51)




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