数回に分け、『気分障害スペクトラム』について勉強してきたが、
今回で気分障害スペクトラムの話題を終えよう。
なに?
ホッとホットしたですか?
気持ちはわかりますが、続けましょう。
今までの(1)、(2)、(3)の統合した最終版ですから、このページがすべて統合しています。
先頭からご覧いただけるとスムーズに理解できるでしょう。
以下の4ステップについて順追って解説する。
■STEP1:気分障害スペクトラムの中間部分を理解しよう
■STEP2:軽躁病を理解しよう
■STEP3:どうやって軽躁病がわかる?症状を理解しよう
■STEP4:気分障害スペクトラムの最終版
内容は「「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ」
から採り上げている。
著者のジム・フェルプス氏は、学者ではなく、一週間のほぼ毎日、ほぼ一日中患者をみている臨床医(精神科医)である。
机上の空論者の学者肌ではないことを付け加えておく。
「うつ」がいつまでも続くのは、なぜ?-双極Ⅱ型障害と軽微双極性障害を学ぶ
ジム・フェルプス 荒井 秀樹
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■内容紹介
うつ病と診断される人が増えている中、「落ち込んでいる」とか「意欲がわかない」といった抑うつ状態が長期間にわたり持続したり繰り返したりする人たちを、すべて同じうつ病と診断していて間違いはないのか? 本書は、長引く抑うつ状態に苦しんでいる人に対して、双極II型障害や軽微双極性障害を念頭において、診断や治療を見直しながら、主治医とともに病気を克服していくための対処方法を示している。また気分障害をスペクトラムとしてとらえる考え方を学ぶ。
■内容(「BOOK」データベースより)
うつが長いこと持続したり、繰り返したり、より悪くなる、などということはありませんか。抗うつ薬をのんでも効果がないとかより悪くなるということはありませんか。もしかすると、うつ病ではないのかもしれません。繰り返すうつの波は、「軽微な」双極性障害のせいかもしれません。本書は、気分障害スペクトラムの概念を詳説し、すぐに実践できる対処法を紹介する。
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■STEP1:気分障害スペクトラムの中間部分を理解しよう
以前にも話題に採り上げたが、精神科診断の公認診断基準書として知られている「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」には、気分障害スペクトラムのカテゴリーはない。
新たな考えによる『気分障害スペクトラム』は、大うつ病と双極性障害はスペクトラム(連続体)の両端に存在して(図1.1のように)、その間に程度の違った症状を持つ人がいる。
図1.1に「気分障害スペクトラム」を記す。
図1.1で判るようにスペクトラムの一端は「単極性」のうつ病(DSMでは大うつ病と呼ぶ)で、もう一端は「双極性」障害となっている。
■DSM対気分障害スペクトラム
精神科診断についてスペクトラム上で捉える考え方を理解するためには、現在主流のDSMのシステム、つまりスペクトラムとは反対のやり方を理解することが大切。
スペクトラムのシステムでは、図1.1のように連続体で状態を判断される。
DSMでは特定の所見が見られるかどうかで判断される、が大きな違いとなっている。
■気分障害スペクトラム:ちょっと違った考え方
DSMでは、正確な診断をする上で、うつ病を持つ患者の症状が、単極性障害か、双極性障害かを見極める必要がある。それに対して気分障害スペクトラムを用いる場合は患者の症状は何かを問わない。むしろその症状が気分障害スペクトラムのどこにあるのかを問う。
気分障害スペクトラムで診断を受けることには2つのメリットがある。
1.効果的な治療の手助けになる
2.将来へのヒントになる
(この症状はなくなるのか?、どの程度悪くなるのか?、再発するのか?、
自分の子どもも同じ病気になる可能性はあるのか?、など)
図1.1で気分障害スペクトラムを均等に細かく分けて患者の位置を示している矢印は、本当にこのような感じなのだろうか?
連続体上の矢印全てにそれが当てはまる人がいるのだろうか?
或いは矢印の一つ一つの間に自然と隙間が出来ているのだろうか?
いえ、隙間は見あたらないのである。(イタリアの気分障害者の研究者フランコ・ペナッツィが発見)
双極性障害の症状が少なくなってくるスペクトラムの中間辺りには「混在している部分」があるはず。
左側にいくに従って、双極性がゼロになってくる。
従って、気分障害スペクトラムを使うと「少しの双極性症状」を持っている人もいることがわかるだろう。
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■STEP2:軽躁病を理解しよう
軽躁病がどのようなものかを詳しく見ていこう。
現実を見て混乱する前にまず、DSMの正式な定義を明らかにしておこう。
我々はDSMの定義から臨床記述を支えている基準を表して、精神状態を診断するためのシステムを作るもの。よってDSMを参考にして、患者の体験を解析するのが臨床医の仕事である。この点では「気分障害スペクトラム」が有効であると本書では述べられている。
DSMは
・軽装病と躁病の症状が全く同じ。二つを区別する定義はない。
ここでDSMシステムの一覧のうち三つ以上の症状に加えて患者の正常状態とは明らかに異なる気分変動(「高揚、寛容、苛立ちなど」)が条件になる。
1. |
思い上がった自尊心、または誇大妄想 |
2. |
睡眠欲求が減る(たった三時間の睡眠でも平気) |
3. |
.普段よりおしゃべりになる、またはしゃべり続けなくてはいけない気がする |
4. |
考えが不安定、または主観的に見て、頭が急速回転している |
5. |
注意力の散漫(些細な、または関係の無い外的刺激に気をとられる) |
6. |
目標指向性の行動が増える(職場や学校など社会的なものも、性的なものどちらも)、または精神運動性激減 |
7. |
痛ましい結果を生む可能性の高い快楽行動に没頭しすぎてしまう(金遣いが荒い、謝った性行動、あるいはあり得ない話への投資等) |
図1.2に「「躁病」のスペクトラム」を記す。
ひとつひとつ見ればそれほど異常ではない。「正常」と軽装病のあいだにはっきりした境界線はない。このことが図1.2に反映されている。
気分障害スペクトラムの右へ向かうにつれて軽装病の症状が増えていることが分かる。
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■軽装病と躁病の違い
DSMでは、躁病と軽装病を区別するには二つの特徴がある。
1.四日間続けば軽装病と診断できるのに対して、躁病は一週間続かなければならない。
2.軽装病は社会生活での機能、または職場での機能を害することはない場合がある。一方で躁病では必ず問題になる。
著者は少しズルをしていると曝露しているが、わかりやすくするために二つの特徴を省いているという。
DSMの基準では、軽装病が精神病とは無関係だと言っている。よってDSMの定義からすると、現実を見失っている人は躁病と診断される事になる。さらに軽装病は入院する必要がないが、躁病はその必要がある。しかし一般的に精神病になると社会生活や職場での機能に非常に悪影響を及ぼす。
さらに最近では入院させること自体が社会生活や職場での機能を害する病状の時のみである。
著者はこれら二つの特徴を入れなくても問題はないと述べている。
症状の継続期間(軽装病の四日間に対し躁病の一週間)に関しては、多くの気分障害の専門家の間では長すぎると考えられている。なぜなら実生活において、軽躁の症状がもっと短い期間だけ起こることもよくある。例えば、一日も続かない軽躁(または躁さえも)があることはよく知られている。日内交代型という名前も付いていて、特定の遺伝子と関連すると考えられている。言い換えれば、DSMで定められた軽装病の期間は診断基準として重視されていないということになる。それどころか度々無視されている。この期間設定は現代の研究成果を反映していないようである。
従って軽装病と躁病は「社会生活や職場での機能障害がある」という点で区別される。
曖昧だと思わないか?
例えば職場でとてもよく仕事が出来て、半分のスピードで働いても最低限上司を満足させることが出来るような人は「職場での機能障害」と言われるだろうか?双極性障害における他の多くの特徴のように、完全な障害から軽度の障害まで、この機能障害もまたスペクトラム上に存在する。よって詳しく見ていくと、DSMの基準では軽装病と躁病を区別しにくい。
図1.2「躁秒のスペクトラム」の斜面図を見てみよう。
その前に、整理しておきたい点がある。
DSMシステムで、軽装病の特徴のある双極Ⅱ型障害が、躁病の特徴のある双極Ⅰ型障害と区別されているのには理由がある。
どちらの双極性障害にもその家系で同じ双極性が続く傾向にあるからである。
つまり、双極Ⅱ型障害の家系にいるのは双極Ⅱ型障害の子供であるし、双極Ⅰ型障害の家系にいるのは双極Ⅰ型障害の子供である。(これは一般論で多少例外も見られる)
この遺伝型の双極性障害は、ブリーディング・トゥルー(breeding true)と言われている。
また双極Ⅰ型障害は他の双極性障害よりもリチウムに対する反応がやや良い。リチウムは双極Ⅱ型障害にも効く場合があるが双極Ⅰ型障害ほど多くは効かない。これにより図1.2の小さな段差のように気分障害スペクトラム上での途切れが見られる。
この点を除けば、軽躁病はそのまま中断地点がなく、ゼロ(短極性)に向けてなだらかに減少する傾向を描き続ける。
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■STEP3:どうやって軽躁病がわかる?症状を理解しよう
図1.3に「軽躁病と躁病の点を取る」を記す。
図1.3に軽躁病の斜面上に四つの点を取り、左から順番に「症状なし」「軽度」「中程度」「重度」とする。丁度、庭にドリルで穴を開けて、土壌の中心部を掘り出すような作業。
これは連続体(スペクトラム)で、「軽度」から少しでも右に行けば、「中程度」のわずかな症状が見られるはず。
これとリンクする症状を表1.1「躁の症状スペクトラム」に表す。
表1.1 躁の症状のスペクトラム
症状 |
症状なし |
軽度 |
中程度 |
重度 |
誇大妄想
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事故の視点に変化なし
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成果、能力、可能性に満足している
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「中心人物」、カリスマ的
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揺るぎない自信、他人の気分を害する
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睡眠
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変化なし(7~8時間寝られる)
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5~6時間。または夜毎1~2時間は目が覚めている
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4時間で十分、または夜通し度々目が覚める
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2時間寝れば元輝、あるいは一晩中起きていて時々眠る
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多弁
(おしゃべり)
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他の人と同じ
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話し好き、どんな話題でもよくしゃべる
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「マシンガンのように」者辺智続ける、ゆっくりしゃべったりしゃべるのをやめることは難しい
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遮ることが出来ない、理解しにくい
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急速な思考
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異常なし
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よくも悪くも多くの考えが浮かぶ(創造的な考えもネガティブな考えも)
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極端に優れた、あるいは的外れな関連づけ、素早く絶え間なく続く
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崩壊している、次から次へと考えが飛躍する
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注意力の散漫
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通常の注意力
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持続した注意力は減り、落ち着かない
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考えがまとまっていない、全く効果的でない
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焦点が定まらず、ほとんど何も出来ない
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活動レベルの増加
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他の人と同じ通常のレベルで変わらず
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計画や考えが多く、次々とこなす
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さらに速いペースと広い範囲で行動する、衝動的
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いつもとりつかれたように、危険な選択をする
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痛ましい結果
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たいていは避けることができる
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残念な選択もあるが、取り返しのつかないほどではない
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金遣いが荒くなる(万単位)、性欲が増して、軽い危険が伴う
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散財に走る(10万単位)、分別のないセックス、薬物使用、違法行為
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苛立ち
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他の人のように制御可能 |
あとで謝罪を要求されるほどの状態
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頻繁で予測できない、制御不能
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反感を買う、恐ろしい、肉体行為の危険性がある
|
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※青塗りが私の症状。ほぼ軽度ではないか、と思われる。 |
表1.1に軽躁病の色々な症状が載っている。各基準について双極性スペクトラム上の四つの点でそれぞれ具体的な症状または行動が挙げられている。図1.3に挙げた四つの点の間にも中間型があることを忘れないでほしい。
表1.1の症状について詳しく見ていこう。
なぜなら躁病を十分理解することで、気分障害スペクトラムのどこかに自分の位置づけられるようになるからである。
■誇大妄想
■睡眠
■多弁(おしゃべり)
■急速な思考
■注意力の散漫
■活動レベルの増加
■痛ましい結果
■苛立ち
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■誇大妄想
・躁病では「誇大妄想」より「自信」の方が、躁を経験している本人の気持ちに近い言葉でしょう
・しかし軽躁病や躁病と診断された患者の周りの人にとっては、誇大妄想という言葉がピッタリ
・この症状が極端になると危険
・おそらく個人の安全を脅かす程ではないが、職を失ったり、人間関係が崩れてしまうほど人を不快にさせてしまう
・双極性障害の誇大妄想の症状が出ている時に精神科医に診断してもらうと、自己愛性人格障害と誤診される場合があるだろう
<症状がそれほど重度でない場合>⇒他人を惹きつけ、感心させるといった効果を表すこともある
<症状がごく軽度の場合>⇒患者本人が、例えば、他の人と関わりが持てると感じたり、他人によいアドバイスが出来ると思ったり、
または自分の考えていた計画がうまく運ぶといった一時的な誇大妄想状態
・恐らく月に一回くらいは出てくる
・言い換えれば、このレベルの症状は他人から普通に見えても、本人にとっては珍しく普段とは違う自分として経験されているかもしれない
・自覚していてもあまりにも僅かな変動なので、全く「躁」との繋がりが想像できないかもしれない
・一日だけ「普通」の人になった気がしているかもしれない
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■睡眠の疲労
・DSMでは躁病の古典的な特徴の一つであり、軽躁病の特徴としても挙げられる「睡眠欲求の減少」
・患者はこの症状を「不眠に悩まされている」と表現する
・眠ろうとしていると(何時間も)「頭の中が考えでいっぱいになる」と患者は感じている
・つまり、躁病の人たちは睡眠不足を不快に感じている
・DSMの言っている古典的な躁病を持つ人とは違う
・軽躁病の人は疲れ切っているのであるから、この不眠こそが主要な治療目標のひとつとなる
・古典的な躁病の人は、朝早く四時くらいに起きても、良く寝た気分になって出かける支度ができる
・しかし軽躁病の不眠症には色々な種類がある
‐頭を切り替えられないので眠りに就くのが難しい
‐眠り続けるのが難しい。もっとも頻繁に見られる状態では、三~四時間で起きてしまって、そのあと「目が覚めたような眠り」を繰り返す
‐それほど一般的ではないが、短に早く起きてしまい、そのあと寝付けなくなる
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■多弁
・多弁を自分で認識できる人もいる
「今日はなんだかおしゃべりが止まらない」
・自分の多弁を気づかない人もいる
・自分の考えている事を説明し続けなければならないという衝動に駆られる
・精神科医たちはその人たちの状態を”談話心拍”と呼ぶ
・聞き手からすれば言葉の嵐を浴びているように感じる
・多弁は軽躁のもう一つの特徴である急速な思考と深く関わっている
・極端に思考が速すぎると、話が理解しにくくなる
・押し寄せるような言葉の波で、言っていることがわかりづらいと友達に言われることがある
<多弁が軽度の場合>
‐面白い話があっていつもよりしゃべりたくなる感覚がある
-いつの間にか大声で話をしていたり、冗談やダジャレをとばしたり、普段より陽気になっていると感じる
・この状態では普段の態度とは対照的な場合がある
例えば、うつの自信のない状態では、話しかけられないとほとんどしゃべらないとか、面白いことや役に立つ情報を人に与えられないことに困っているシャイな性格の人が多弁になる
・おしゃべりが必ずしも双極性障害の症状とは限らない
・しかし双極性障害の人の場合は、多弁が早期のわずかなエネルギー変動の兆候である可能性がある
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■急速な思考
<重度な場合>
-読書が大好きで、いつも本を持ち歩いていても全く読むことができなくなる、内容が頭に入らないので気付くと同じページを繰り返し読んでいる
<中程度の段階>
-同時にあれこれやってもすべて中途半端になってしまう
-考えている時、出発点を完全に見失うほどにまで頭の中では他の考えが次々と回っている
-自分の考えを寸断しているものに執着する
<軽度な場合>
-軽躁病のように欲求が高まり陽気な気分になる
-創造力が高まり、強い生産性を感じるようになる
-すぐに考えが浮かんでくる
<重度の場合>
-躁病に見られるように無関係なアイデアを繋げて考えてしまう
-そうなると創造力が完全に崩壊していまう
<中程度の場合>
-関連性がまだ論理的であるが、やはり早く考えが浮かんでくる
-その中には優れた考えもある
-しかし、考えに不安が混ざっていると、悪いほうへ悪いほうへと考えてしまい心配していたことが現実になったような錯覚を起こしてしまう可能性がある
-しかもその考えは互いに繋がっていないこともある
・急速な思考は、深刻なうつと組み合わさることがよくある
・躁病とうつ病の特徴が同時に見られる双極性障害の混合状態の一つ
・躁病側のどんな症状もうつと結合する可能性を持っているが、特に急速な思考と強いうつ病が合わさると最も危険な気分状態であると言われている
・自分の頭の中で、徹底的に打ちのめされているような感覚に陥る
・自分は何て悪い奴だ、生きている価値がない、自分がいない方がみんな幸せだろうとばかり考えてしまう
・従って安全面を考えると、急速な思考には特別な注意を払うべきである
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■注意力の散漫
・一つのことに注意を向け続けていられない注意力の散漫は、急速な思考にも原因があることは明らか
・元気いっぱいだと話す患者がいる
・多くの計画を一度に実行して、気が付くと自分のやっていることが次から次へと変わっていく
<中程度>
・気持が勝手にどこかへ行ってしまって白昼夢のような感じになるかもしれない
・その症状は「注意欠如/多動性障害(ADHD)とよく似ている
・実際に双極性障害とADHDには確実に何らかの繋がりがある
・ADHDの物忘れや考えのまとまりのなさは、双極性障害の他の症状に対する治療で回復へ向かうこともあるが、双極性障害が治療されても、重度の注意力の散漫が残ってしまう場合もある
・しかし双極性障害と明らかなADHDの症状が両方ある場合は、まず双極性障害の症状を治療すべきだという一般的な減速に専門家たちも同意している
・たいていの人は気分が安定していれば上手く考えがまとめられ、分別のある行動が取れるが、軽装の症状が起きているときには気が散ってしまう
・これが、ADHDか双極性障害の一部かを見分ける重要な方法となる
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■活動レベルの増加
・そわそわして、膝を上下に動かし、今にもドアから飛び出していってしまいそうな状態になる患者は意欲と活動レベルの極端な状態
<中程度の場合>
-たくさんのことをやりこなして、次々に行動してはいるが、見た目には活動レベルの増加の症状とはわからなかったり、自分では気付かなかったりする
・活動レベルはかなり極端にならないと正常か異常か判断するのが極めて難しい
・行動を振返ってみて自分の活動が増加していたことに気付く場合が多い
<より軽度の場合>
-活動ベルが増すと生き生きとした状態になる(「ピンピン」している)
-この期間が続く間、周りの人からは非常に魅力的に見えるだろう
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■痛ましい結果
・よくある衝動的な行為、お金、セックス、危険な企み、ドラッグなどでは同時に危険を顧みないことが多い
・これらの行動の裏には、不快な活動や衝動性への関心の高まりがある
・躁病の人は短期間で何十万ものお金を浪費してしまうが、軽躁病の人はそこまでの金額を使うことはない
・異常な性的混乱は割と認識しやすい
・解釈の一つとして、実際に性行動の僅かな変化があるとしても、それが軽躁病の現れであるかどうか認識するのは難しいと思われる
・ただ、ときどき性的関心のレベルがどうかしていると気付くことは多く、人はそれをセックス中毒と言うかもしれない
(例えばポルノ写真への関心が高まることが軽躁へ移行していると判断する目安になることもある)
step3の先頭へ
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■苛立ち
・専門的に言うと、苛立ちはDSMの症状の基準に入っていない
・苛立ちは気分の「高まりや広がり」と同様の気分変動の一部である可能性がある
・患者や医師たちにとっては気分変動は認識しにくいが、家族は度々その異変を察知する
・しかし変動が微妙な時は特に、具体的に説明するのが難しい
<重度の場合>
・患者にとっては苛立ちが最もわかりやすい躁の状態になる
・例えば何の正当な理由もなく、知らないうちに些細なことで怒ってしまい、あとになってそれほど怒ることではなかったとる振り返る
<それほど重度でない場合>
・苛立ちを症状として認識するのは困難
・軽躁病では自分が正しいと強く思いこむことがよくある
・怒りは、その理由も他人や外部からくるもので、正当なものに感じられる
・このような苛立ちが増してくると、偏執症(パラノイア)の症状に間違われても不思議ではない
・悪いことはすべて誰かのせいで、自分は傷つけられたとしか頭にはない
★軽躁病と見分けがほとんど付かない場合
このように軽躁病には、様々な程度の多くの事なった症状の組み合わせがある。
また、軽躁病の非常に軽い症状(気分障害スペクトラムの左端近くにあるような)の場合は、もっと厄介になる。症状がほとんど見られない軽躁病はどのように見えるのか?
図1.3で言うと、「症状なし」から「軽度」の間、このあたりに双極性障害の診断に関するほとんどの議論が集中する。
軽躁病の人と全くそうでない人との間には境目があると考えてみよう。
「ここから右側はみんな双極性障害で、左側はみんなそうではありません」などと言えるだろうか?
臨床(著者)では、軽躁病の緩やかな斜面部分にいる患者を診断している。
症状がゼロに近い患者もいる。
恐らく図1.2の傾斜は双極性障害の有無というように考えない方が辻褄が合うと思われる。双極性障害は症状と行動の組み合わせで定義されている。
<重度の場合>
-症状や行動には、ハッキリと異常が見られる。
<軽度の場合>
-普通の人が経験する程度になってしまう。
苛立ち、自信、動揺、大喜び、睡眠の減少や急速な思考などは極端でない限りすべての人間の経験するもの。
よってDSMでは病気の有無をはっきりとさせる必要があるため、この傾斜では正常と異常の間に明確な境界線が引かれる必要はないだろう。
この正常と異常が段階的に変化するという考え方は、特定の遺伝子が双極性障害を引き起こしているかもしれないという最新の考え方と一致する。簡潔に言うと、双極性障害に関連する遺伝子群は、少量では創造性やカリスマ性が高くなったり積極的にリスクをとったりするようになり、多量になると双極性障害を引き起こすようである。(少なくとも八個の遺伝子が明らかになっている) それぞれの遺伝子を双極性障害ではない家族が持つ遺伝子と比べると、どこか違うようである。仮にその違った特徴を持った遺伝子が八個(もっとあると思う研究者もいる)あるとしたら、色々な組み合わせができ、多くの人格や行動を作っているはずである。なかには「平均的な人」とは少し違いがあるが、異常がはっきりしていない組み合わせもあるだろう。他にも平均的な人と違っているが、治療を必要とするほどの障害を引き起こしていない組み合わせもあると思う。
異常は、連続体上にある勝手に決めたれた点を指している。連続体(スペクトラム)上にある人格や行動が極端な状態になるとみなされる。では、正常はどこに位置するのだろうか。
次のSTEP4では、気分障害スペクトラムについてもう一つ説明する。
そうすれば双極性障害に関する多くの診断上の混乱を説明することができる。
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■STEP4:気分障害スペクトラムの最終版
うつは一般的な特徴である
厄介なのは、純粋な単極性障害からはっきりした双極性障害まで、気分障害スペクトラムの上に存在する圧倒的多数の人々が、うつ状態も持っていること。(気分が躁で揺れ動いて、うつにならない双極性障害を持つ人もなかにはいる。しかしこれはごく一部の少数派である) 更に困ったことに、★強調★双極性障害のうつの症状と単極性障害のうつの症状はあまり違いがない。一日中眠気が続いていて極端な意欲の低下や激しい疲労があれば「双極性」の症状に近いといえるかもしれない。でもうつだけでは気分障害スペクトラム上の位置を決められない。
うつ状態は全ての双極性障害に最もよく見られる症状で、特にスペクトラムの中間辺りでは非常に顕著である。
調査によると患者は一定の期間の約半分は症状が現れている状態で、双極Ⅰ型では症状が出ている間のおよそ2/3がうつである。ところが双極Ⅱ型障害を見ると、症状が出ている期間の90%以上がうつであった。気分障害スペクトラム上の中間に位置する双極性障害の人は、症状が現れている期間のほとんどはうつ状態である。躁のほうの症状は、ごく短時間しか見られない。
図1.4に「完成した気分障害スペクトラム」を記す。
よって気分障害スペクトラム上での軽躁はうつの海に見えている氷山の一角に過ぎない。
(DSMの双極Ⅱ型障害とされる)
スペクトラムの中間では、うつ症状の波の上に軽躁の小さい欠片が顔を見せているだけである。
そして単極性の方へ向かっていくと、軽躁がうつの症状で覆い隠されている。
最終的に軽躁病がなくなる地点を見つけるためには今度はうつの症状の海の底を探さなければならない。
単極性障害と双極性障害を識別する条件が軽躁状態の有無なら、調べるのがかなり難しいことだと判るだろう。
ここで図1.4のような気分障害スペクトラムの最終版に到着したので、これが皆さんに覚えてもらいたいスペクトラムである。
(2012/01/11 9:15)
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