今一度知る双極性障害の『思考の誤り「視野狭窄」』(選択的知覚、心理的フィルタリング)

2011
12/19
月曜日

数日、おふざけが過ぎたので、我に返って真面目なネタ。

「バイポーラ-(双極性障害)ワークブック」から第8章「「思考の誤りと認識と把握」の要点をピックアップしたい。
本章は盛りだくさんの記述があるため、以下の6段階に分割して採り上げることとする。

今回は、No5の結論への視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)について記述している
 1.■出来事、行動、思考について
 2.■思考をコントロールするための3つのCの方法
 3.■誤認:過大視、過少視
 4.■結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化
 5.■視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)
 6.■絶対思考:白黒思考、レッテル貼り、すべき思考

【参考文献】
chapter1:疾患をコントロールする
chapter2:双極性障害の実際
chapter3:自分の経緯を図式化する
chapter4:早期予防システムを発動させる
chapter5:自分自身を強化する
chapter6:薬物療法の効果を最大限に得る
chapter7:「否認」の壁の克服
chapter8:思考の誤りの認識と把握
chapter9:感情的な思考をコントロールする
chapter10:精神的メルトダウンを反転させる
chapter11:改善へ向けた変化

バイポーラー(双極性障害)ワークブック―気分の変動をコントロールする方法
モニカ・ラミレツ・バスコ 野村 総一郎
479110630X

双極性障害(バイポーラーディスオーダー)による「気持ちの揺らぎ」を抑制する具体的対処法を、認知療法的な手法を用いて、分かりやすく解説。ガイドライン(治療指針)は患者さんへの指導書として治療者が使用でき、障害を持つ患者さん自身が使う自習書としても最適な治療読本。



本章では、
○あなたの気分は、どのようにして思考と出来事に対する反応に影響をおよぼしうるかを理解する
○あなたの思考は、どのようにして歪められたり正確でなくなったりするのかを検証する
○歪曲した思考を正すために、それを捕らえ、コントロールし、修正する方法を学ぶ

2節 【復習】思考をコントロールするための3つのCの方法
5節 視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)
- 視野狭窄とらえる!
- 【鬱状態の花子の例】
- 【軽躁病の夫とその妻の例】
ワークシート8.13 視野狭窄
- 視野狭窄から抜け出すための方法コントロールする!




■思考をコントロールするための3つのCの方法【復習】


前回の中で、「思考をコントロールするための3つのCの方法」について説明した
「本節の目的は、気分または感情が自分の知覚を歪めていることを認識することができるよう、そして自分の手助けになること
・過剰に感情的な思考が生じるときにそれを捉えることができれば、自分の反応を、コントロールされるのではなくコントロールすることができる
・そのための1つの方法は、過剰に感情的に考えているとき自覚すること
・自分の反応をコントロールする方法の1つは、自分にとって最も良いと思われる一連の行動を選択すること
・そしてもう1つは、感情的な考えを修正し、間違った方向へ導かれることがないようにすること


とらえる (Catch) 思考の歪曲が起こったときにそれらをとらえる
コントロールする (Control) それらが自分の行動に影響を及ぼさないようにする
修正する (Corect) 論理上の過ちをすべて正す

・歪曲した考えをとらえるためには、何を探すべきかを知らなくてはならない
・うつ病と躁病の思考への影響の仕方にはいくつか一般的なパターンがある
・それらは”思考の誤り”と呼ばれる
・うつ病のときと躁病のときに人が犯す、いくつかのより一般的な誤りを説明するが、これらの思考の誤りのうち、いくつかでも自分がそれを犯していると自覚できれば、間違った方向へ導かれてしまう前にその歪みを修整する機会が得られる

とらえる:ストレスの多い状況に反応する中でそれぞれの思考の誤りを犯したかもしれないことを思いだすこと
コントロールする:思考の誤りをコントロールするための方法を知ること
修正する:思考の歪曲が生じるたびにそれを修正すること


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■視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)



視野狭窄とらえる!

自分の視点を裏付けてくれることのみをみて、相反する情報は無視するか顧みないことが視野狭窄(しやきょうさく)


うつ状態の花子さんの例】

花子さんはうつ状態にあるとき、自分は負け犬だと確信していました。自分が犯した過ち、後悔している決断、達成しなかった目標を思い出します。自分の考えを確信する事柄に関心を集中させるのは視野狭窄の一部です。花子さんは次のリストを、自分がまけイルであるということの根拠として採り上げています。

 ○大学を修了しなかった
 ○あまりにも若くて結婚してしまった
 ○あまりに多額の負債を抱えてしまっている
 ○間違った男と結婚してしまった

自分の議論をもっと説得力のあるもににするため、花子さんは相反する情報は何でも無視しなければなりません。それは、彼女が負け犬ではないということを裏付ける根拠を除外する、忘れる、認めるのを拒否する、という意味です。反対の根拠を無視するというのは、視野狭窄の第2の側面です。
次に示すのは、彼女が負け犬であるという考えに相反する根拠として花子さんが挙げるリストの一部です。

 ○准看護婦として2年終了プログラムを終え、数年間にわたり病院で働いてきた。
 ○自分の夫にも酒をやめさせ、仕事を続けた。
 ○町内会の子ども奉仕の会をスタートさせた。
 ○新車を購入した。
 ○人は私のことを好いてくれ、尊敬してくれる。



・躁病の場合の視野狭窄も似ている
・軽躁病または躁病のとき、人は自分の考えを裏付ける根拠には目を向けるが、自分の考えに反する根拠は無視してしまうことがある
・多幸的な気分にあるとき、人は過剰にポジティブな考えを裏付ける根拠には目を向け、他者から寄せられるネガティブな情報は無視してしまうだろう


軽躁病の夫とその妻の例】

軽躁病の夫「僕には最高に素晴らしい考えがある」

妻「そんなばかげたことは聞いたことがないわ。あなた、本当に薬を飲んでいるの?」

軽躁病の夫「君には躁状力というものが全くないんだな。君は僕を押さえつけている。僕は本当ならひとかどの人物になれるはずだ」



・躁病のエピソードが始まるときに気分がイライラしていると、ネガティブな考えを裏付けることには目を向けるが、自分の今の考えに会わない事実は無視してしまう

ワークシート8.13に自分が視野狭窄によって思考が歪められてしまったときの例を書き記してみよう



ワークシート8.13 視野狭窄

視野狭窄によって自分の思考が歪められてしまったときの例










視野狭窄から抜け出すための方法コントロールする!

視野狭窄から抜け出す道は、自分に広い視野をもつように強いること
・ネガティブな見通しを裏付ける出来事のみに目を向けるように自分を制限しているときには、自分は何か見落としているのではないかと自分自身、またはほかの人に尋ねてみるとよい

あなたは次のような状況を見逃していないだろうか?
 ●物事がうまくいった
 ●問題が効果的に解決された
 ●人びとはあなたに親切だった
 ●あなたはポジティブなフィードバックを返された
 ●あなたは行動を起こすことができた

・何もかもうまくいっている、すべてのことがうまくいくだろう、または心配することは何もない、ということを自分自身または他人に納得させようとしているときに過剰にポジティブな視野狭窄をしている場合にも、同じことが当てはまる

あなたは次のようなことを見逃していないだろうか?
 ●あなたが間違っていたとき
 ●あなたに問題をもたらした判断の誤り
 ●楽観的になりすぎて思考が混迷したいた期間
 ●躁病になりつつあることを示す兆候、またはサイン
 ●あなたの選択に伴う危険

・全般的な目標は、入手可能な情報をすべて、結論を導く前によく検証すること
・良い知らせと悪い知らせ、自分の考えが正しいことを裏付ける根拠とそれが間違っていることを示す根拠に目を向ける
・そのうえでどう考えたらいいのかを決めること

如何でしょう?
心当たりのかたもあるのでは?






次回は、第8章「思考の誤りと認識と把握」絶対思考:(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)について触れたい。

 ■出来事、行動、思考について
 ■思考をコントロールするための3つのCの方法
 ■誤認:過大視、過少視
 ■結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化
 ■視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)
 ■絶対思考:(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)

【バイポーラ(双極性障害)ワークブック 全トピックス】 ※新しいページで開きます
「DSM-IV-TR」と「ICD-10」の分類・定義
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『大うつ病エピソード』-Major Depressive Episodes-
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『躁(そう)病エピソード』-Manic Episodes-
第3章 今一度知る双極性障害の『自分の経緯を図式化する』
第4章 今一度知る双極性障害の『早期警報システムを発動させる』
第5章-1 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(前編)』
第5章-2 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(後編)』
第6章 今一度知る双極性障害の『薬物療法の効果を最大限に得る』
第7章 今一度知る双極性障害の『「否認」の壁の克服』
第8章-1 今一度知る双極性障害の『思考の誤りと認識と把握』
第8章-2 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「誤認(過大視・過小視)」』
第8章-3 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「結論への飛躍」』(読心術、運勢判断、破局視、個人化)
第8章-4 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「視野狭窄」』(選択的知覚、心理的フィルタリング)
第8章-5 今一度知る双極性障害の『絶対思考(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)』
第9章 今一度知る双極性障害の『感情的な思考をコントロールする』
第10章 今一度知る双極性障害の『精神的メルトダウンを反転させる』
第11章 今一度知る双極性障害の『改善に向けた変化』








(2011/12/19 20:34)


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