今一度知る双極性障害の『思考の誤り「結論への飛躍」』(読心術、運勢判断、破局視、個人化)

2011
12/16
金曜日


思考の誤り(認知の歪み)というのは、うつ病になる人だけの固有のものでもなく、多かれ少なかれ、一般人にもある。
その人の
考え方のクセであり、気持ちや感情は考え方(思考)に左右される、といったことである。
考え方を少し変えて、現実に目を向けてみれば少し気分が楽になることもある。
気分や感情は事実ではないのである。(※これは別単元で採り上げる予定)


「バイポーラ-(双極性障害)ワークブック」から第8章「「思考の誤りと認識と把握」の要点をピックアップしたい。
本章は盛りだくさんの記述があるため、以下の6段階に分割して採り上げることとする。

今回は、No4の結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化について記述している
 1.■出来事、行動、思考について
 2.■思考をコントロールするための3つのCの方法
 3.■誤認:過大視、過少視
 4.■結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化
 5.■視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)
 6.■絶対思考:白黒思考、レッテル貼り、すべき思考

【参考文献】
chapter1:疾患をコントロールする
chapter2:双極性障害の実際
chapter3:自分の経緯を図式化する
chapter4:早期予防システムを発動させる
chapter5:自分自身を強化する
chapter6:薬物療法の効果を最大限に得る
chapter7:「否認」の壁の克服
chapter8:思考の誤りの認識と把握
chapter9:感情的な思考をコントロールする
chapter10:精神的メルトダウンを反転させる
chapter11:改善へ向けた変化

バイポーラー(双極性障害)ワークブック―気分の変動をコントロールする方法
モニカ・ラミレツ・バスコ 野村 総一郎
479110630X

双極性障害(バイポーラーディスオーダー)による「気持ちの揺らぎ」を抑制する具体的対処法を、認知療法的な手法を用いて、分かりやすく解説。ガイドライン(治療指針)は患者さんへの指導書として治療者が使用でき、障害を持つ患者さん自身が使う自習書としても最適な治療読本。



本章では、
○あなたの気分は、どのようにして思考と出来事に対する反応に影響をおよぼしうるかを理解する
○あなたの思考は、どのようにして歪められたり正確でなくなったりするのかを検証する
○歪曲した思考を正すために、それを捕らえ、コントロールし、修正する方法を学ぶ

2節 【復習】思考をコントロールするための3つのCの方法
4節 結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化
- 読心術とらえる
ワークシート8.8 読心術
- 運勢判断とらえる
ワークシート8.9 運勢判断
- 破局視とらえる
ワークシート8.10 破局視
- 個人化とらえる
ワークシート8.11 個人化
- 結論への飛躍を防ぐ方法コントロールする
- 読心術コントロールする
- 運勢判断コントロールする
- 破局視コントロールする
ワークシート8.12 破局視を脱する
- 個人化コントロールする





■思考をコントロールするための3つのCの方法【復習】


前回の中で、「思考をコントロールするための3つのCの方法」について説明した
「本節の目的は、気分または感情が自分の知覚を歪めていることを認識することができるよう、そして自分の手助けになること
・過剰に感情的な思考が生じるときにそれを捉えることができれば、自分の反応を、コントロールされるのではなくコントロールすることができる
・そのための1つの方法は、過剰に感情的に考えているとき自覚すること
・自分の反応をコントロールする方法の1つは、自分にとって最も良いと思われる一連の行動を選択すること
・そしてもう1つは、感情的な考えを修正し、間違った方向へ導かれることがないようにすること


とらえる (Catch) 思考の歪曲が起こったときにそれらをとらえる
コントロールする (Control) それらが自分の行動に影響を及ぼさないようにする
修正する (Corect) 論理上の過ちをすべて正す

・歪曲した考えをとらえるためには、何を探すべきかを知らなくてはならない
・うつ病と躁病の思考への影響の仕方にはいくつか一般的なパターンがある
・それらは”思考の誤り”と呼ばれる
・うつ病のときと躁病のときに人が犯す、いくつかのより一般的な誤りを説明するが、これらの思考の誤りのうち、いくつかでも自分がそれを犯していると自覚できれば、間違った方向へ導かれてしまう前にその歪みを修整する機会が得られる

とらえる:ストレスの多い状況に反応する中でそれぞれの思考の誤りを犯したかもしれないことを思いだすこと
コントロールする:思考の誤りをコントロールするための方法を知ること
修正する:思考の歪曲が生じるたびにそれを修正すること






■結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化


結論への飛躍とらえる

・結論への飛躍は、事実をすべて理解せずに推論や仮定をしたときに生じる思考の誤り
・人や出来事について推論や仮定をすることで、いきなり結論へと飛んでしまうことがある
・概して、抑うつ状態のときの推論は、通常ネガティブであったり、気分を害するものとなる
・躁病、あるいは多幸感な気分であったのなら、推論は過剰にポジティブになる可能性がある
・イライラしているときは、自分の推論で自分の怒りの炎をますます煽ってしまう
・人は通常、自分の気分に一致した結論に飛ぶもの
 -不安に感じているときは、恐ろしいことを予測するもの
 -嫉妬深くなっているときは、裏切りなど存在していない時でさえ、裏切られているように感じてしまう
 -腹が立っていると、他人が何かネガティブな意図を持っているかのように予測してしまう
⇒結論の飛躍をめぐる問題は、それらの結論がしばしば正しくない、ということ
・早合点に従って行動すると、誤りを犯すことになる

◇結論への飛躍の仕方

読心術とらえる:他人が何を考えているか、またどのように感じているかを推測すること

ワークシート8.8に読心術の自分自身の事例を書き記してみよう



ワークシート8.8 読心術

読心術についての自分自身の例









運勢判断とらえる:未来の出来事について予測すること



ワークシート8.9 運勢判断

運勢判断についての自分自身の例









破局視とらえる:最悪のシナリオになりそうだと仮定すること



ワークシート8.10 破局視

破局視についての自分自身の例









個人化とらえる:事実をすべて知りもせずに、何でも自分に関することと決めつけてかかること
           物事を個人的に受け止めること




ワークシート8.11 個人化

個人化についての自分自身の例









結論への飛躍を防ぐ方法コントロールする

・結論に飛躍するとき、あなたは状況、問題、または人物について推測、または仮定をしている
・自分の仮定が正しいと確信していることもあるだろうが、感情が思考に影響を与えているとしたら、自分が間違っている可能性は十分考えられる
・誤りを犯すのを避けるために、自分に、または自分のまわりで起っていることに対して、ほかに考えられる説明を考慮し、もっとも理にかなった選択をする必要がある
・他人の言葉または行動をどのように理解していいのか確信がない場合は、結論を導き出す前に追加の情報を集めるか、あるいは自分の仮定が正しいかよく調べること
・気が動転していないときなら、おそらくこのことを自動的に行ってしまう
・しかし強い感情でいっぱいのとき、または状況に触発されて強い反応に出てしまいそうなときは、十分に間をおいて、より論理的に物事をじっくり考えてからでないと、正確な結論を引き出すことはできない




結論への飛躍のより一般的な形態をコントロールする方法

読心術に対してコントロールする

・うつ病、不安、イライラしているときには、気分のせいで、人が何を考えているのか、または感じているのかということについて、ネガティブな結論に至ってしまう
・自分の結論を支持する根拠について考え、反対する他の根拠はすべて無視してしまうことで、自分は正しいと容易に確信してしまうことがある
・読心術というのは、もしある人を十分によく知っていたら、ほとんどの状況についてその人がどのように感じるか、またはどのように考えるかを自分は理解しているという仮定に基づいている
・たまには仮定が正しいことがあるから、読心術に対して自信を持ってしまう
・読心術が問題となるのは、早合点してしまった結論が正しくないにもかかわらず、まるでそれが事実であるように行動してしまうこと
・直感が違っているとき、それに続く行動は自分をますます苦しませ、他の人とのトラブルをもたらす
・読心術は、言い争いを引き起こす一般的な原因となる
・イライラしているときは、ふと気付くと、質問もせずに人についてネガティブな仮定をしてしまうことがよくある

言い争いを触発しがちな読心術の言葉で一般的なものには、次のようなものがある
 ●あなたの考えていることはよくわかっている
 ●私が正しいことはわかっているはずだ
 ●あなたより私のほうがあなたのことをよくわかっている
 ●あなたが怒っているのはわかる
 ●あなたは自分がほかのだれよりも頭がいいと思っているんでしょう
 ●あなたは自分が完ぺきだと思っているんでしょう

誰に対して話しているかにかかわらず、これらは物議をかもしかねないような言葉である

読心術による言葉を口にする代わりに、質問してみること、代わりの言葉として考えられるものをいくつか挙げてみる

 ◎あなたは何を考えているのか
 ◎あなたは私の考えに賛成ですか
 ◎怒っているの?
 ◎私はあなたのことをよく知っているから、きっとあなたはこう感じていると思うんだけど・・・、私の考えは正しいかしら
 ◎ときどき私は、あなたが自分を私よりも賢いと思っているという印象を受けることがあって、それが本当に煩わしいの
 ◎あなたはこのことに気付いていないのかもしれないけれど、あなたが私を批判するとき、まるであなたが、
  自分は完璧で私はひどい、と言っているように聞こえるんだけど、あなたはそう思っているの?





運勢判断についてコントロールする

・運勢判断の誤りを避けるには、次に起こると予測したことによって激しく感情がかきたてられるからといって、その予測が正しいという意味ではない、ということを覚えておくと役立つ
・多くの人は、最初に考えたことには状況についての自分の直感が反映されていると考える
・動揺しているときに自分の直感が頼りになると考えたら、心に思い浮かぶ最初の考えにしがみつくだろう
・しかしながら、最初に考えたことだからというだけでは、それが正しいということにはならない
・ストレスの多い出来事に対して反応した最初に考えたことは、たいてい、感情でいっぱいである
・そして感情があなたの考えを歪めてしまうこともある
・もし何か良くないことが起こるだろうと早合点してしまい、この最初の印象に従って行動したとしたら、簡単に間違った道へと進んでしまうかもしれない

・運勢判断の問題を解決するには、最初の推測でやめてしまうのではなく、可能性のあるほかの成り行きを検討すること
・ストレスの多い状況に反応して結論に飛躍してしまっている自分に気付いたら、最初に思い浮かんだ結果だけ考えてやめてしまうのではなく、可能性がある他の結果についてよく考える





破局視についてコントロールする

・破局視は、考えられる最悪の結論に飛躍してしまう運勢判断を極端にしたもの
・不安と心配は破局視へと駆り立てる
・破壊的なことが起るだろうと信じてしまうと、不安はますますひどくなる
・このような状態に陥ると、パニックになり、その出来事の成り行きを変えることに無力感を感じてしまう
・心配するとだれもが破局視するわけではないが、破局視する人は、自分にはよくそういうことがあると思いがち

・破局的な思考を減らすためには、状況を正しく認識し、起ることがどのようなことであれ事前にそのための計画を立てておくことが必要
・何かを正しく認識するということは、それをあるがままに捉える、過大視しない、結論へ飛躍しない、そして不正確な仮定をしないこと
・どういう結果となる可能性が最も高いかがわかっていれば、あらかじめそのための計画を立てることができる
・その結果をコントロールすれば、結局、自分が考えているほど悪い結果にならなかったということもある
・あるいは、状況があまり良い結果にならないだろうということが確実にわかっていれば、少なくとも、その成り行きに対処するために前もって計画を立てることができる

破局視をコントロールするためにワークシート8.12の一連のステップを最後までやり遂げてみよう






ワークシート8.12 破局視を脱する

自分の思考の破局視を脱する方法

1.もし自分が何かについて破局視している可能性があると思う場合は、起こるだろうと想定することを書きだしてみよう
(心の中に状況を思い描くことができれば、それが役立つ)



2.あながた想像した災難が起こる可能性はどれほどか、自分に尋ねてみよう
 それは100%確実だろうか
 50%の可能性だろうか
 恐れていることだけではなく、真実だとわかっていることに基づいた数字だけ選ぶこと

 私が恐れる災難が実際に起るだろう可能性は       パーセントだ



3.あなたが想像した結果以外に、ちょうど同じくらいの確率で起きそうだと思われる他の結果はあるか
 もしあるなら、どのような選択肢が考えられるか、挙げてみよう


 a.


 b.


 c.


 d.


 e.


 f.



4.3つの中から最も起きそうにない可能性を選び、その記号を書いてみよう
 この中にはあなたの当初の恐怖も含まれることがある



5.残っている項目のうち、最も起きそうな結果を選んでみよう
 この状況の結果として最も可能性が高いのは









6.結果より良いものにするために、あなたにできることがあるか
 その状況の成り行きを改善させるようなことで、ほかの人にできることはあるか
 もしあるのなら、どのようなことが考えられるか






7.もしあなたの考えが正しく、結局その状況は悲惨な結果となったとしたら、どのように対処するか
 その後の状態の対処するために、どのような準備ができるか








個進化に対してコントロールする

うつ病のとき、またはイライラしているとき、物事を個人的に捉えてしまいがちな傾向が自分にあることがわかっているのなら、過剰な反応をしてしまう前にそのことを考えてみよう

自分が物事を個人的に受け止めているのに気付いたときに考えてみるべき質問は、

 ●それは本当に私に関することなのか
 ●ほかの説明は考えられないか
 ●時分とまったく関係がないという可能性はあるか
 ●それはほかの人に関することか
 ●それは心配するに足るほど重要か
 ●話し合うに足るほど重要か
 ●最高の気分ではないために、神経質になっているだけなのか





次回は、第8章「思考の誤りと認識と把握」視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)について触れたい。

 ■出来事、行動、思考について
 ■思考をコントロールするための3つのCの方法
 ■誤認:過大視、過少視
 ■結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化
 ■視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)
 ■絶対思考:白黒思考、レッテル貼り、すべき思考

【バイポーラ(双極性障害)ワークブック 全トピックス】 ※新しいページで開きます
「DSM-IV-TR」と「ICD-10」の分類・定義
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『大うつ病エピソード』-Major Depressive Episodes-
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『躁(そう)病エピソード』-Manic Episodes-
第3章 今一度知る双極性障害の『自分の経緯を図式化する』
第4章 今一度知る双極性障害の『早期警報システムを発動させる』
第5章-1 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(前編)』
第5章-2 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(後編)』
第6章 今一度知る双極性障害の『薬物療法の効果を最大限に得る』
第7章 今一度知る双極性障害の『「否認」の壁の克服』
第8章-1 今一度知る双極性障害の『思考の誤りと認識と把握』
第8章-2 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「誤認(過大視・過小視)」』
第8章-3 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「結論への飛躍」』(読心術、運勢判断、破局視、個人化)
第8章-4 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「視野狭窄」』(選択的知覚、心理的フィルタリング)
第8章-5 今一度知る双極性障害の『絶対思考(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)』
第9章 今一度知る双極性障害の『感情的な思考をコントロールする』
第10章 今一度知る双極性障害の『精神的メルトダウンを反転させる』
第11章 今一度知る双極性障害の『改善に向けた変化』








(2011/12/16 8:08)


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