■誤認とらえる!
誤認とは、既存の情報が歪曲され、実際よりもそれを大きく、または小さくしてしまうときに生じる
ワークシート8.5にうつ病のとワークシート8.6に躁病の事実を拡大するか、もしくは縮小するかのいずれかによって、状況を認識したときのことを考えて書き記してみよう
表8.5 うつ病の際の誤認 |
認識
|
私の例 |
問題の深刻さを過大視する
|
|
ポジティブな出来事、または達成を過小視する、あるいは賛辞を避ける
|
|
表8.6 躁病の際の誤認 |
認識
|
私の例 |
自己評価または考えの価値をを過大視する
|
|
問題の深刻さ、または危険を過小視する
|
|
◇過大視コントロールする!
・うつ病や躁病では、その瞬間の感情によって過大視があらわれる
・感情が鎮まると、過大視も収まる傾向にある
・出来事あるいは思考から感情的距離をおき、反応する前に考える時間をとることによって、過大視を煽る感情を鎮めることができる
感情的距離をおくための一般的な方法はこのようなものがある
●その状況から離れる
●その状況を評価する時間をとる
●その出来事について、他の人の意見を求める
●その件については一晩寝てから考える
●過大視した出来事を、自分がこれまでに経験したことと比較する
●他の人なら起こったことをどのように捉えるだろうか、と自分自身に聞く
●反応する前に、息をとめ、10まで数える
●暫くの間、テレビを見る
●話題を変える
●瞑想する
●昼寝をする
●落ち着くまでその件について話すことを拒む
自分が気が動転しているときに、どのようにして感情的な距離をとるか、自分の考えと経験をワークシート8.7に書き記してみよう
表8.7 感情的な距離をおく |
私はこのようにして感情的な距離をおく
|
◇過小視コントロールする!
・過小視は、うつ病のエピソードと躁病のエピソードのいずれの最中にも生じる
・うつ病の時には、自分のネガティブな気分にそぐわない情報を避けようとして、過小視が用いられることがある
(例えば、誉め言葉や称賛を避けてしまうといったこと)
・躁病の時には、自分のポジティブな気分や素晴らしいアイデアに反することは何であろうと押し避けてしまおうとして過小視を用いる
(この際、起こりうる危険を顧みないことがある)
-自分には支払えない程の金銭的な浪費をする
-スピード運転をする
-普段よりも性的に活発になる
といったことが挙げられる
・ポジティブなこと、ネガティブなことを過小視するとき、手に入る情報を自分の心と気分の状態に合うように歪曲してしまう
・情報を歪曲し、物事を明確に捉えられなくなると、過ちを容易に犯してしまう恐れがある
ネガティブなことを過小視する
・躁病段階に入ると、ネガティブなことを過小視しがちになる
-危険な状況や不利益といった重要な詳細を見落としてしまう
-どのような考えであれ、そのポジティブな面が一層際立って見えることがある
-そうでなくても、マイナス面など1つもない、または危険が小さく、利益は膨大であると確信してしまうこともある
過小視を避けるために、自分とほかの人に次の質問をしてみよう
●私のアイデア、または計画のマイナス面は何か
●何らかの危険が伴うか
●何か重要なことを見落としてはいないか
●重要な事実を軽視、または無視していないか
ポジティブなことを過小視する
・うつ状態にないときでも、人は謙遜して、または遠慮して、ポジティブなことを過小視したり、誉められても退けてしまったりすることがある
・その状況では称賛を押し退けることが社交的な行動であっても、心の中ではやはり、誉められると気分が良いもの
・自分は称賛に値しない、自分の行動はあまりにも不的確で問題にならないと考えてしまうかもしれない
ポジティブなことは一般的に次のように過小視される
●不十分だから、という理由で成功を重視しない
●ポジティブな思考をネガティブな思考で無視する
●称賛を避ける
・ポジティブなことを過小評価するのは、極端に高い期待をしている人、完全主義の人にとって特に問題
(完璧でない限り何事も十分でないと思ってしまう)
・このような一連の考え方をすると、徐々に積み重なってより大きな成果となる小さな成果を享受できなくなってしまう
・ひどい気分で、何一つとして自分の思いどおりにいかないと思うとき、それとは正反対の根拠を過小視したり、あるいはまったく無視してしまうかもしれない
・生まれながらに悲観的で、しかも双極性障害だとしたら、うつ状態にある間、ポジティブなことを過小視し、元気づけてくれるはずの達成に喜ぶことなく、自ら落ち込んだ気持に陥ってしまう
過小視を抑制するには、思考の停止と呼ばれる方法が利用できる
深く思い悩んだり、脅迫的思考に駆られるのを治療するために考案された方法
目的:過小視をやめ、その代わりにもっと正確なものに置き換えること
□過小視を抑制するための思考停止の3ステップが必要□
□第1のステップ
・過小視している自分自身を捉えること
・過小視する物事のタイプを記録すると役立つ
-例えば、もしかして自分の過小視は称賛を退けるという形をとっているとしたら、他の人からポジティブなフィードバックを
受けるときに、注意して待っていることができる
□第2のステップ
・(過小視している自分を捉える事ができたら)『やめろ!』と命令調で自分に言って、その思考をコントロールする
-大きな声を出して、または頭の中で、やめるように自分自身に言う練習をする
-「やめなさい!」「今すぐやめなさい!」「よしなさい!」「もうたくさんだ!」「終りにしろ!」など
□第3のステップ
・過小視した思考をもっとポジティブな思考へ切り替える
・誰かの称賛を今にも退けようとしていることに気が付いたら、自分に向かって「やめろ!」といい、その代わりに「ありがとう」と自分に言う
・自分が達成した仕事を過小視している自分に気が付いたら、大変だった仕事をやり終えた、そのことについて気分良く感じてもいいんだと自分に言う
・過小視を取り換えるための思考を見つけよう
・最も役立つのは、自分のありのままのポジティブな面をみることを自分に託す言葉である
|