今一度知る双極性障害の『思考の誤り「誤認(過大視・過小視)」』 2011
12/14
水曜日

このシリーズ、今回で11回目、まだ忍耐強い方がいらっしゃることを祈るばかり・・・・

「バイポーラ-(双極性障害)ワークブック」から第8章「「思考の誤りと認識と把握」の要点をピックアップしたい。
本章は盛りだくさんの記述があるため、以下の6段階に分割して採り上げることとする。

今回は、No3の誤認(過大視、過小視)について記述している
 1.■出来事、行動、思考について
 2.■思考をコントロールするための3つのCの方法
 3.■誤認:過大視、過少視
 4.■結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化
 5.■視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)
 6.■絶対思考:白黒思考、レッテル貼り、すべき思考

【参考文献】
chapter1:疾患をコントロールする
chapter2:双極性障害の実際
chapter3:自分の経緯を図式化する
chapter4:早期予防システムを発動させる
chapter5:自分自身を強化する
chapter6:薬物療法の効果を最大限に得る
chapter7:「否認」の壁の克服
chapter8:思考の誤りの認識と把握
chapter9:感情的な思考をコントロールする
chapter10:精神的メルトダウンを反転させる
chapter11:改善へ向けた変化

バイポーラー(双極性障害)ワークブック―気分の変動をコントロールする方法
モニカ・ラミレツ・バスコ 野村 総一郎
479110630X

双極性障害(バイポーラーディスオーダー)による「気持ちの揺らぎ」を抑制する具体的対処法を、認知療法的な手法を用いて、分かりやすく解説。ガイドライン(治療指針)は患者さんへの指導書として治療者が使用でき、障害を持つ患者さん自身が使う自習書としても最適な治療読本。



本章では、
○あなたの気分は、どのようにして思考と出来事に対する反応に影響をおよぼしうるかを理解する
○あなたの思考は、どのようにして歪められたり正確でなくなったりするのかを検証する
○歪曲した思考を正すために、それを捕らえ、コントロールし、修正する方法を学ぶ

2節 【復習】思考をコントロールするための3つのCの方法
3節 誤認:過大視、過小視
ワークシート8.5 うつ病の際の認識
ワークシート8.6 躁病の際の認識
- 誤認←とらえる
- 過大視←コントロールする
ワークシート8.7 感情的な距離をおく
- 過小視←コントロールする





■思考をコントロールするための3つのCの方法【復習】


前回の中で、「思考をコントロールするための3つのCの方法」について説明した
「本節の目的は、気分または感情が自分の知覚を歪めていることを認識することができるよう、そして自分の手助けになること
・過剰に感情的な思考が生じるときにそれを捉えることができれば、自分の反応を、コントロールされるのではなくコントロールすることができる
・そのための1つの方法は、過剰に感情的に考えているとき自覚すること
・自分の反応をコントロールする方法の1つは、自分にとって最も良いと思われる一連の行動を選択すること
・そしてもう1つは、感情的な考えを修正し、間違った方向へ導かれることがないようにすること


とらえる (Catch) 思考の歪曲が起こったときにそれらをとらえる
コントロールする (Control) それらが自分の行動に影響を及ぼさないようにする
修正する (Corect) 論理上の過ちをすべて正す

・歪曲した考えをとらえるためには、何を探すべきかを知らなくてはならない
・うつ病と躁病の思考への影響の仕方にはいくつか一般的なパターンがある
・それらは”思考の誤り”と呼ばれる
・うつ病のときと躁病のときに人が犯す、いくつかのより一般的な誤りを説明するが、これらの思考の誤りのうち、いくつかでも自分がそれを犯していると自覚できれば、間違った方向へ導かれてしまう前にその歪みを修整する機会が得られる

とらえる:ストレスの多い状況に反応する中でそれぞれの思考の誤りを犯したかもしれないことを思いだすこと
コントロールする:思考の誤りをコントロールするための方法を知ること
修正する:思考の歪曲が生じるたびにそれを修正すること


ページの先頭へ



■誤認:過大視、過小視




誤認とらえる!

誤認とは、既存の情報が歪曲され、実際よりもそれを大きく、または小さくしてしまうときに生じる

ワークシート8.5にうつ病のとワークシート8.6に躁病の事実を拡大するか、もしくは縮小するかのいずれかによって、状況を認識したときのことを考えて書き記してみよう



表8.5 うつ病の際の誤認

認識

私の例

問題の深刻さを過大視する











ポジティブな出来事、または達成を過小視する、あるいは賛辞を避ける
















表8.6 躁病の際の誤認

認識

私の例

自己評価または考えの価値をを過大視する











問題の深刻さ、または危険を過小視する















過大視コントロールする!

・うつ病や躁病では、その瞬間の感情によって過大視があらわれる
・感情が鎮まると、過大視も収まる傾向にある
・出来事あるいは思考から感情的距離をおき、反応する前に考える時間をとることによって、過大視を煽る感情を鎮めることができる

感情的距離をおくための一般的な方法はこのようなものがある

 ●その状況から離れる
 ●その状況を評価する時間をとる
 ●その出来事について、他の人の意見を求める
 ●その件については一晩寝てから考える
 ●過大視した出来事を、自分がこれまでに経験したことと比較する
 ●他の人なら起こったことをどのように捉えるだろうか、と自分自身に聞く
 ●反応する前に、息をとめ、10まで数える
 ●暫くの間、テレビを見る
 ●話題を変える
 ●瞑想する
 ●昼寝をする
 ●落ち着くまでその件について話すことを拒む

自分が気が動転しているときに、どのようにして感情的な距離をとるか、自分の考えと経験をワークシート8.7に書き記してみよう


表8.7 感情的な距離をおく

私はこのようにして感情的な距離をおく












過小視コントロールする!

・過小視は、うつ病のエピソードと躁病のエピソードのいずれの最中にも生じる
・うつ病の時には、自分のネガティブな気分にそぐわない情報を避けようとして、過小視が用いられることがある
 (例えば、誉め言葉や称賛を避けてしまうといったこと)
・躁病の時には、自分のポジティブな気分や素晴らしいアイデアに反することは何であろうと押し避けてしまおうとして過小視を用いる
 (この際、起こりうる危険を顧みないことがある)
 -自分には支払えない程の金銭的な浪費をする
 -スピード運転をする
 -普段よりも性的に活発になる
 といったことが挙げられる
・ポジティブなこと、ネガティブなことを過小視するとき、手に入る情報を自分の心と気分の状態に合うように歪曲してしまう
・情報を歪曲し、物事を明確に捉えられなくなると、過ちを容易に犯してしまう恐れがある

ネガティブなことを過小視する

・躁病段階に入ると、ネガティブなことを過小視しがちになる
 -危険な状況や不利益といった重要な詳細を見落としてしまう
 -どのような考えであれ、そのポジティブな面が一層際立って見えることがある
 -そうでなくても、マイナス面など1つもない、または危険が小さく、利益は膨大であると確信してしまうこともある

過小視を避けるために、自分とほかの人に次の質問をしてみよう

 ●私のアイデア、または計画のマイナス面は何か
 ●何らかの危険が伴うか
 ●何か重要なことを見落としてはいないか
 ●重要な事実を軽視、または無視していないか

ポジティブなことを過小視する

・うつ状態にないときでも、人は謙遜して、または遠慮して、ポジティブなことを過小視したり、誉められても退けてしまったりすることがある
・その状況では称賛を押し退けることが社交的な行動であっても、心の中ではやはり、誉められると気分が良いもの
・自分は称賛に値しない、自分の行動はあまりにも不的確で問題にならないと考えてしまうかもしれない

ポジティブなことは一般的に次のように過小視される
 ●不十分だから、という理由で成功を重視しない
 ●ポジティブな思考をネガティブな思考で無視する
 ●称賛を避ける

・ポジティブなことを過小評価するのは、極端に高い期待をしている人、完全主義の人にとって特に問題
 (完璧でない限り何事も十分でないと思ってしまう)
・このような一連の考え方をすると、徐々に積み重なってより大きな成果となる小さな成果を享受できなくなってしまう
・ひどい気分で、何一つとして自分の思いどおりにいかないと思うとき、それとは正反対の根拠を過小視したり、あるいはまったく無視してしまうかもしれない
・生まれながらに悲観的で、しかも双極性障害だとしたら、うつ状態にある間、ポジティブなことを過小視し、元気づけてくれるはずの達成に喜ぶことなく、自ら落ち込んだ気持に陥ってしまう

過小視を抑制するには、思考の停止と呼ばれる方法が利用できる
 深く思い悩んだり、脅迫的思考に駆られるのを治療するために考案された方法
 目的:過小視をやめ、その代わりにもっと正確なものに置き換えること

過小視を抑制するための思考停止の3ステップが必要

第1のステップ
・過小視している自分自身を捉えること
・過小視する物事のタイプを記録すると役立つ
 -例えば、もしかして自分の過小視は称賛を退けるという形をとっているとしたら、他の人からポジティブなフィードバックを
  受けるときに、注意して待っていることができる

第2のステップ
・(過小視している自分を捉える事ができたら)『やめろ!』と命令調で自分に言って、その思考をコントロールする
 -大きな声を出して、または頭の中で、やめるように自分自身に言う練習をする
 -「やめなさい!」「今すぐやめなさい!」「よしなさい!」「もうたくさんだ!」「終りにしろ!」など

第3のステップ
・過小視した思考をもっとポジティブな思考へ切り替える
・誰かの称賛を今にも退けようとしていることに気が付いたら、自分に向かって「やめろ!」といい、その代わりに「ありがとう」と自分に言う
・自分が達成した仕事を過小視している自分に気が付いたら、大変だった仕事をやり終えた、そのことについて気分良く感じてもいいんだと自分に言う
・過小視を取り換えるための思考を見つけよう
・最も役立つのは、自分のありのままのポジティブな面をみることを自分に託す言葉である




次回は、第8章「思考の誤りと認識と把握」結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化について触れたい。

 ■出来事、行動、思考について
 ■思考をコントロールするための3つのCの方法
 ■誤認:過大視、過少視
 ■結論への飛躍:読心術、運勢判断、破局視、個人化
 ■視野狭窄:(選択的知覚、心理的フィルタリング)
 ■絶対思考:白黒思考、レッテル貼り、すべき思考

【バイポーラ(双極性障害)ワークブック 全トピックス】 ※新しいページで開きます
「DSM-IV-TR」と「ICD-10」の分類・定義
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『大うつ病エピソード』-Major Depressive Episodes-
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『躁(そう)病エピソード』-Manic Episodes-
第3章 今一度知る双極性障害の『自分の経緯を図式化する』
第4章 今一度知る双極性障害の『早期警報システムを発動させる』
第5章-1 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(前編)』
第5章-2 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(後編)』
第6章 今一度知る双極性障害の『薬物療法の効果を最大限に得る』
第7章 今一度知る双極性障害の『「否認」の壁の克服』
第8章-1 今一度知る双極性障害の『思考の誤りと認識と把握』
第8章-2 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「誤認(過大視・過小視)」』
第8章-3 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「結論への飛躍」』(読心術、運勢判断、破局視、個人化)
第8章-4 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「視野狭窄」』(選択的知覚、心理的フィルタリング)
第8章-5 今一度知る双極性障害の『絶対思考(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)』
第9章 今一度知る双極性障害の『感情的な思考をコントロールする』
第10章 今一度知る双極性障害の『精神的メルトダウンを反転させる』
第11章 今一度知る双極性障害の『改善に向けた変化』








(2011/12/14 20:22)


Copyright (C) 2011 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.