今一度知る双極性障害の『早期警報システムを発動させる』 2011
12/4
日曜日

「バイポーラ-(双極性障害)ワークブック」から第4章「早期警報システムを発動させる」の要点をピックアップしたい。

【参考文献】
chapter1:疾患をコントロールする
chapter2:双極性障害の実際
chapter3:自分の経緯を図式化する
chapter4:早期予防システムを発動させる
chapter5:自分自身を強化する
chapter6:薬物療法の効果を最大限に得る
chapter7:「否認」の壁の克服
chapter8:思考の誤りの認識と把握
chapter9:感情的な思考をコントロールする
chapter10:精神的メルトダウンを反転させる
chapter11:改善へ向けた変化

バイポーラー(双極性障害)ワークブック
気分の変動をコントロールする方法

モニカ・ラミレツ・バスコ 野村 総一郎
479110630X

双極性障害(バイポーラーディスオーダー)による「気持ちの揺らぎ」を抑制する具体的対処法を、認知療法的な手法を用いて、分かりやすく解説。ガイドライン(治療指針)は患者さんへの指導書として治療者が使用でき、障害を持つ患者さん自身が使う自習書としても最適な治療読本。




■個人的な早期警報システムの発達をスタートさせる
■症状の概要を記したワークシートを作成する
■気分グラフを使って、症状をモニターすることを学ぶ
■症状が再発しつつあることを示す早期のサインを認識することを学ぶ

1節 自分を知る
表4.1 躁病の一般的な症状
表4.2 うつ病の一般的な症状
ワークシート4.1 気分症状ワークシート
ワークシート4.2 本当の自分
ワークシート4.3 症状の再発時に自分が経験する変化
2節 自分の気分をコントロールする
ワークシート4.4 うつ病または躁病の早期の警告サイン
ワークシート4.5 気分グラフ
ワークシート4.6 症状グラフ


<期待できる効果>
・双極性障害の症状は生涯を通じて現れたり、消えたりすることがある
・重篤な症状を管理するために、また、それどころかその再発を阻止するためにも、自分にできることがある
・これを実行するためには、症状が現れ始めていることを自分がわかっていなくてはならない。
・早期警報システムがあれば、薬と併せてCBT<認知行動療法:Cognitive-behaviral therapy:CBT)>方法を使うように注意を促し、症状が重篤化する前に食い止めることができる

■自分自身を知る

・うつ病と躁病の症状が重篤なときには、はっきりしているため簡単に認識することができるが、通常は人の目に付くようになるよりもずっと前に、気分が変わりつつあることを示す微妙なサインが存在する
・【目標】微妙な変化をできるだけ早く認識できるようになること
 【それにより】早く気づけば気づくほど、より素早くそれらを阻止するための行動をとることができる


■躁病の躁状

表4.1 躁病の一般的な症状

軽度の様相

中程度の様相 重度の躁病症状

何もかもが苦闘のように感じる/短気または不安

通常よりも幸せである/明るい展望

より饒舌になる/ユーモアのセンス向上

より思考的になる/精神的に鋭敏で俊敏になる/集中力がなくなる

いつもより自信が高まる/悲観的でなくなる

創造的なアイデア/新たな関心/変化に対して肯定的

落ち着きがない/爪を噛むといった神経質な行動

仕事の能率が悪くなる/仕事に専念するのが難しい

ほかの人といて居心地が悪い

性的な関心が高まる

音や煩わしい人が気になる/思考のつながりを失う


怒りやすい

笑いと冗談が増える

社交的で、ほかの人との話をしたい気分

支離滅裂な思考、集中力に乏しい

利口な気分になり挑戦を恐れない、過剰に楽観的

変化を起こそうと計画する/行動が支離滅裂になる/飲酒または喫煙が増える

落ち着きがない、座った活動よりも動いているほうを好む

課題をやり遂げない/仕事に遅刻する、他人に迷惑をかける

疑い深い

性的な夢、性的刺激を求める、または気に留める

物音がより大きく、色がより鮮やかに感じられる、心が直ぐに彷徨ってしまう/思考に集中するためにより静かな環境が必要になる

イライラ

多幸的気分/最高の気分

強制されたように、または早口で話す

疾走する思考

誇大感(壮大な幻想)

支離滅裂な行動/1つのことが終わらないうちに別なことを始める

精神運動性の焦燥/じっとしていられない

通常の仕事または家庭での活動をやり遂げることができない

パラノイア(妄想症)

性衝動が高まる、性的活動を求める、性的により無分別になる

注意散漫(思考に集中するのにかなり努力が必要である、または思考にまったく集中出来ない)





■うつ病の躁状
ベッドから出たくなくなるほどうつ病が重篤になる前に、もっと軽い症状が現れるもの
 ・社交的な機会を断っていた
 ・通常の活動を不快に、または苦痛に感じるようになった
 ・テレビを観たり本を読んだり、といった単独で行う活動への興味が高まる
 ・家事がおろそかになる
 ・身嗜みにさほど時間をかけなくなる
 ・全体的に動作が遅くなる

表4.2 うつ病の一般的な症状

軽度の様相

中程度の様相 重度の躁病症状

憂うつな、落ち込んだ、または平坦な気分

社交的な気分ではない

いつもの活動が思ったほど楽しくない

物事がうまくいかないと、簡単に自分を責める/自分自信の欠点に目を向ける

普段ほど空腹を感じない/ときどき食事を抜いても空腹に感じないことがある

洋服が若干、緩くなる/大きく体重が減るわけではない

眠ってもさほど休まらない気分がする/就寝時にあれこれと思い悩む/就寝までに多少時間がかかるようになる

読むなどといった課題への興味が薄れる/長ったらしい仕事に苛立つ

自分の動作が緩慢に感じられる/精神的な俊敏性に欠ける

苦痛が消えてくれることを願う/逃げ出してしまいたいと思う/悲観的

泣きやすい

他人とあまり関わらない

活動が終わるまでは楽しい

自己批判的

食事をしてもさほど楽しくない

目立つほどの体重の減少

眠りに落ちるまでに、より長い時間がかかる/夜中に短時間目が覚めてしまう

文章を読み直す/考えにうまく集中出来ない

動作の緩慢さが他人の目に明らかになる/質問に答えるまでに長い時間がかかる

人生は生きるに値しないかもしれないという思考/絶望的/気分が良くなるなどは想像できない

低い自己評価/外見を嫌う/失敗者のように感じる

深刻な悲しみ

普段の活動に関心がない

喜びが減る

過剰で不適切な罪悪感

食欲の減退

著しい体重の減少

不眠症(なかなか眠りに落ちることができない/夜中に目が覚め、眠りに戻れない)

物事に集中出来ない

精神運動性の抑止

自殺念慮または自殺企画/自分は死んでも構わないと思う

自分は価値がないと感じる





■自分の気分症状
目的は、うつ病の症状と躁病の症状を区別し始めるのを手助けするため
まずは、記入してみよう

ワークシート4.1 気分症状ワークシート

分類

躁病のとき うつ病のとき 大丈夫だと感じられるとき
(症状が見られないとき)
-寛解期-

気分




自分に対する姿勢




自信




通常の活動




社交活動




睡眠習慣




食欲/食事習慣




集中力




思考の速度




創造性




楽しむことへの関心




落ち着きのなさ




ユーモアのセンス




エネルギーレベル




物音による影響




将来の見通し




話し方のパターン




決断力




他人への関心




死生観




機能能力




ほかの分野




※私の追加分野としては
外観(お洒落)
SEX
マスターベーション
仕事の能率
動作
体重
運動(散歩等)
TV
読書

食欲
買い物
電話
メール
などを追加した
















■本当の自分とは?

<寛解状態の自分>
長年にわたって気分の変動と格闘してきたとしたら、何が自分で、何がこの疾患なのか、わかりにくいと感じるだろう
自分では大丈夫だと感じているとき、つまり鬱でも躁でもないとき、自分がどんなふうか考えてみる
双極性に関係のない技能、才能、関心、物事に対する考え方、習慣があるだろう
目的は、本当の自分を固定する上で役立てること

ワークシート4.2 本当の自分
普段の睡眠パターンはどうか





普段どのように時間を過ごしているか





普段どれほどうまくストレスに対処しているか





普段、感情は傷つきやすいか





ほかの人は普段、自分をイライラさせているか









<症状の再発時の変化(サイン)>
調子が悪く(躁状態⇔寛解期⇔抑うつ状態)なってきているとき、どのような行動をとっているか判断する
いつもと違う行動をとっているとしたら、もっと普段の自分のように物事に対処することで変化させていくために、自分の症状をコントロールするための行動をとり、さらに症状の大きな展開をコントロールするために医師の指示に従う

表4.3 症状の再発時に自分が経験する変化
躁状になりつつあるとき うつ病になりつつあるとき

あなたの普段の睡眠時間のパターンはどうですか



あなたは普段どのように時間を過ごしていますか



あなたは普段どれほどうまくストレスに対処していますか



あなたの感情は傷つきやすいですか



あなたはほかの人とどれほど上手くやっていますか



ほかの人に対して、普段イライラすることがありますか






■自分の気分をコントロールする

自分の気分やほかの症状を定期的にモニターすることにはいくつかの理由がある
 -日々の気分の変化に通じるようになる
 -気分に影響を与えると思われる何か特定の要因があるのかを明らかにする
 -エピソードの始まりを特徴づけるほかのサインや症状が見られないか注意することで、躁病、軽躁病、うつ病
  の動向を把握することができる


ワークシート4.4 うつ病または躁病の早期の警告サイン

気分ワークシート(ワークシート4.1)の回答を見て、自分が最初に気づくと思われるうつ病と躁病の症状を選び出す
※このワークシートは、これらの症状を記録するのに利用する

うつ病になりつつあるとき、最初にどのような変化に気づくか






躁病になりつつあるとき、最初にどのような変化に気づくか









■気分グラフ
・一週間のあいだ毎日、自分の気分を評価できるようにするため

<活用法>
・症状が始まったときにそれを固定することが目的
・気分の小さな変化をも見逃さないように注意すれば達成可能
・毎日、自分の気分を評価することを習慣化する
・自分の症状をたどる経験をより多く積んだら、症状が再発しつつあるように思われるときだけ「気分グラフ」を使ってもよい
・気分、ほかの顕著な症状が安定するまでモニターする
・薬の用量が変わる毎にグラフに記録し、医師が薬の効果をモニターするときに役立てる

表4.5 気分グラフ
   年   月/第    週

(記入のポイント)
・毎日、自分の気分を最もよく表している評価の点を○で囲む
・(気分の変動を確かめるために)週末に、それらの点を線で結ぶ
・下段枠に、気分の変化と関連があると思われる状況をどんなことでも記録する

↑重度の躁病(+1~+5)
良いとも悪いとも言えない(0)
↓重度のうつ病(-1~-5)

計 画

↑躁病
+5

眠っていない
精神病的

病院に行く

+4

躁病
判断力の低下

+3

軽躁病

医師に連絡

+2

興奮しやすい

行動をとる

+1

幸せ
気分の高揚

注意深く観察

正常

-1

元気がない
憂うつ

注意深く観察

-2

悲しい

行動をとる

-3

塞ぎ込む

医師に連絡

-4

動けない

-5

↓うつ病

自殺の恐れ
がある

病院に行く

気分の変化を起こした原因は?












■症状グラフ
人によって、気分をモニターするよりも身体的な症状、睡眠習慣、または思考の変化をモニターするほうが簡単なこともある
うつ病または躁病のエピソードが始まってきたときに、変化してきていると気づく症状を抜き出し、症状グラフに書く

(一般的な例)
○エネルギーレベルの変化をモニターする
+5:ものすごいエネルギーに溢れ、じっっとしていられない
 0:正常なエネルギーレベル
-5:エネルギーが皆無で、動くことができない

○集中力の変化をモニターする
+5:あまりにもいろいろな考えが浮かんできて話ができない
 0:正常な集中力のレベル
-5:思考速度が極端に遅い

○自己評価の変化をモニターする
+5:私は神であると考える
 0:自己評価に問題はない
-5:自分自身が大嫌い、自分に全く価値がない

<活用法>
・次回の診察まで数週間の開きがある場合など、その間の自分の状態を医師に伝えるのに役立つ
・毎日、自分の気分を記録し、気分の改善ないし悪化と関連があるどのような状況についてもグラフに書き留める
・新しい医師またはセラピストの診察を受け始めたとき、自分の気分をモニターし、毎回診察に訪れるときにグラフを持参することで、医師らが自分のことや症状のパターンを整理できるように手を貸すことができる
・次回診察までの間にどのようなことが起こったのを記憶だけにたよるより伝えやすくなる

<<症状グラフ>>をリワークの経験を踏まえ自分流にすると、

表4.6 症状グラフ
   年   月/第    週

(記入のポイント)
・毎日、自分の気分を最もよく表している評価の点を○で囲む
・(気分の変動を確かめるために)週末に、それらの点を線で結ぶ
・下段枠に、気分の変化と関連があると思われる状況をどんなことでも記録する

気分の高さ

+3(かんりハイ)

+2(ハイ)

+1(ややハイ)

0(通常の自分)

-1(ややうつ)

-2(うつ)

-3(かなりうつ)

気分の変化を起こした原因は?







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症状グラフに類似するものとして、現在通所しているリワークの「習慣活動記録表」が優れているだろう
1時間単位に24時間枠で、睡眠、食事、活動(リワーク、外出するイベント、仕事等)、日常生活(風呂、TV、読書、趣味など主に自分の部屋で過ごす)に記入し、併せて気分(-3~+3)が記入できるようになっている



次回は、本書から『自分自身を強化する』について触れてみたい。

【バイポーラ(双極性障害)ワークブック 全トピックス】 ※新しいページで開きます
「DSM-IV-TR」と「ICD-10」の分類・定義
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『大うつ病エピソード』-Major Depressive Episodes-
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『躁(そう)病エピソード』-Manic Episodes-
第3章 今一度知る双極性障害の『自分の経緯を図式化する』
第4章 今一度知る双極性障害の『早期警報システムを発動させる』
第5章-1 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(前編)』
第5章-2 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(後編)』
第6章 今一度知る双極性障害の『薬物療法の効果を最大限に得る』
第7章 今一度知る双極性障害の『「否認」の壁の克服』
第8章-1 今一度知る双極性障害の『思考の誤りと認識と把握』
第8章-2 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「誤認(過大視・過小視)」』
第8章-3 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「結論への飛躍」』(読心術、運勢判断、破局視、個人化)
第8章-4 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「視野狭窄」』(選択的知覚、心理的フィルタリング)
第8章-5 今一度知る双極性障害の『絶対思考(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)』
第9章 今一度知る双極性障害の『感情的な思考をコントロールする』
第10章 今一度知る双極性障害の『精神的メルトダウンを反転させる』
第11章 今一度知る双極性障害の『改善に向けた変化』




(2011/12/04 12:50)


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