今一度知る双極性障害の『自分の経緯を図式化する』 2011
12/3
土曜日

「バイポーラ-(双極性障害)ワークブック」から第3章「自分の経緯を図式化する」の要点をピックアップしたい。

【参考文献】
chapter1:疾患をコントロールする
chapter2:双極性障害の実際
chapter3:自分の経緯を図式化する
chapter4:早期予防システムを発動させる
chapter5:自分自身を強化する
chapter6:薬物療法の効果を最大限に得る
chapter7:「否認」の壁の克服
chapter8:思考の誤りの認識と把握
chapter9:感情的な思考をコントロールする
chapter10:精神的メルトダウンを反転させる
chapter11:改善へ向けた変化

バイポーラー(双極性障害)ワークブック―気分の変動をコントロールする方法
モニカ・ラミレツ・バスコ 野村 総一郎
479110630X

双極性障害(バイポーラーディスオーダー)による「気持ちの揺らぎ」を抑制する具体的対処法を、認知療法的な手法を用いて、分かりやすく解説。ガイドライン(治療指針)は患者さんへの指導書として治療者が使用でき、障害を持つ患者さん自身が使う自習書としても最適な治療読本。





■ライフチャートを作成する
■双極性障害との一生の過程における重要なパターンを固定することを学ぶ
■うつ病と躁病のエピソードを予測する
■治療歴に関する日記をつけ始める

ワークシート3.1 私にとって正常とは
ワークシート3.2 ライフチャート
ワークシート3.3 うつ病と躁病の季節的パターン
ワークシート3.4 うつ病の引き金となる状況
ワークシート3.5 躁病の引き金となる状況
ワークシート3.6 治療と症状
ワークシート3.7 アルコール、ドラッグ、および症状
ワークシート3.8 自分の治療履歴



<期待できる効果>
・疾患と悪戦苦闘するようになり暫く経つと、自分の生活上の出来事、浮き沈み、転機、および問題を解決しようとするのは極めて自然
・双極性障害の自分の個人的な経緯についてもっと多くのことを理解すれば、将来のエピソードを防いだり、あるいは疾患の推移をコントロールするのに役立つ(道路地図の最初のほうを手に入れられる)
自分はどのようなタイプの要因でうつ病や躁病に陥りやすいか?
・その情報があれば、これらの引き金を避けることに気を付けるようになる
・それらが生じたときに対処できるように準備しておくことができる
・うつ病と躁病の軽症の時の様相を知っていると、それらが生じづつあるこをと察知し、悪化する前に食い止めることができる
薬がどのように影響するかをよく理解していれば、症状が現れ始めたときに医師に自分の要望を伝えることや、うつ病と躁病の再発を早期の段階で防止する計画を立てることがより容易となる
・自分自身についてより多くのことを知れば知るほど、自分の疾患をコントロールするための準備をより整えておけるようになる

■ライフチャートの作成

・ライフチャート法は、MIMH(米国神経保健研究所)のロバート・ポスト博士により開発
・双極性障害に対して薬物療法の開始と停止が及ぼす影響に関する研究において重要な手段
・専門家が正確な診断を下す手助けとなる
・生活の中の双極性障害に関する一連の出来事を年表にする
・体調の悪かった時期、良かった時期、治療を受けていた期間、入院していた期間、生活上の重要な出来事があった時期、医学的な状態、アルコールを過度に摂取していた時期、物質を乱用していた時期などの一連の出来事は、医師やセラピストがうつ病や躁病の原因とその影響を明らかにし、再発の引き金を固定したり、症状をコントロールし再発を予防するうえで、どの治療が効果があり、どの治療が効果がなかったかを理解するのに役立つ
・自分の一般的なパターンを理解することで、次のエピソードがいつ起こりそうかをより的確に予想できることになる
・エピソードが起こらないようにする自分の予防措置をとることができる
・ライフチャートは時間の経過に伴って記録していく

◆ライフチャートを作成するための準備
・うつ病、躁病、軽躁病、混合状態の期間「エピソード」を表す
・一回のエピソードは、うつ病、躁病、軽躁病の初めから終わりまでの個々の期間のこと
・エピソードの持続期間は、場合によって適切な治療がなされないと、症状が何年にもしつこく続く可能性もある
・エピソードは大きなストレスを受けたり生活上の変化があった後に始まる可能性がある。しかし、まったく何の理由もなく生じることもあり得る





ワークシート3.1 私にとって正常とは
私にとって正常とは:

気分




エネルギーレベル




気持ちの持ち方




行動








ワークシート3.2 ライフチャート
中央の線は発病から現在までの時間の経過を表す

※パターンの種類は図3.3(p65.参照)

躁病
 ↑
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時間

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 |
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 ↓
うつ病


□ステップ1:うつ病と躁病のエピソードを素描する

□ステップ2:ある抗うつ薬を過剰に摂取していた期間、あるいはストリートドラック(違法薬物)
        を使用していた可能性がある期間を書き加える

□ステップ3:人生のおける主要な出来事が生じた時点を時間軸上に記す

□ステップ4:治療期間についての情報を加える

□ステップ5:ほかにも心理学的な問題が生じていたという場合
        →(不安障害や摂取障害の合併の可能性があるため)医師またはセラピストに尋ねる
          ※不安障害には、パニック発作、社会恐怖症、強迫性障害、高所恐怖症など
          ※摂取障害には、拒食症、過食症、むちゃ食い障害など


◆ライフチャート全体として何を意味するのか


□ライフチャートには、うつ病エピソードあるいは躁病のエピソードの明かなパターンが存在するか?
 -各エピソードが1年のうちの常に同じ時期に生じるように思えるか→季節的パターン
 -一年の同じ時期に始まり、一年の同じ時期に終わるエピソードは、疾患が季節的な変換に敏感であることが窺える

ワークシート3.3 うつ病と季節的パターン
私のうつ病と躁病のエピソードにはどのようなパターンが認められるか

季節的パターンは?




天気は関連しているか?




症状と関連する共通の出来事はあるだろうか?







□ストレスになる出来事の発生と、鬱領または躁病の始まりとの間に何らかの関連があるか?
 -うつ病、躁病、軽躁病、または混合状態の最初の2,3回のエピソードが、ストレスとなる出来事、
  人生の転換機となる出来事に続いて生じることは珍しくない

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ワークシート3.4 うつ病の引き金となる状況
うつ病の引き金となる状況:

対人関係上の出来事?




喪失?




人生のおける変化?




疾患ないし出産?




ほかのことでは?










ワークシート3.5 躁病の引き金となる状況
躁病の引き金となる状況:

休暇?




スケジュールの変化?




新しい区域への引越?




浮かれ騒ぎ?




ほかのことでは?






□治療とエピソードの間に関連があるか
 -各エピソードが始まる前に規則正しく薬を服用していたか?
  ※双極性障害の再発を引き起こす最もよくある原因は、薬物治療に忠実に従っていないことがある)



ワークシート3.6 治療と症状
自分のライフチャートを振り返ってみたときに、治療と症状の間に関係が認められるか?

薬を服用しているときに、機能が改善するか?




セラピーを受けている期間はより調子がよいか?




症状は、治療を受けていないときに始まるか?




治療をやめると症状が始まるか?




抗うつ剤を服用すると躁病になるか?







□過剰な飲酒または物質乱用をする時期は、うつ病または躁病のエピソードとほぼ一致するか?
 -それらの気分症状になったことと、飲酒もしくは薬を使用したことは、どちらが先立ったのか



ワークシート3.7 アルコール、ドラッグ、および症状

自分の生活を振り返ってみて、お酒を飲み始めたとき、あるいはストリートドラッグ(違法薬物)を使い始めたときのことを覚えているか?

そのとき、うつ病に苦しんでいたという可能性はあるか




お酒を飲んだとき、あるいはハイな気分になったときに、うつ病、あるいはイライラが軽くなるように感じたか、覚えているか




自己治療を試みようとしていたということはあり得るか




概して、アルコールないし薬を使用していた期間と、うつ病または躁病のエピソードは、どのように一致していたか、明かなパターンはあるか








■治療歴

双極性障害の治療を受けている典型的な人は、いくつかの異なる薬を服用しており、通常、そのほかの薬についても何度かさまざまな試みをしている
一回の服用量を変えてみる、薬の服用をいったん中止し、その後また再開するといったことがある
全部がややこしいものとなり、思い出すのが難しくなってくる

ワークシート3.8に、どのような薬物治療を受け、それらはどのような効果があったか記録していくための方法

ワークシート3.8 自分の治療履歴
日付 薬名 服用量と
服用期間
副作用 有効だったか 薬を変えた
理由
処方した
医師
(例)
2011/12/03
リチウム 300mg 3錠を午前と午後に服用 下痢、体重の増加 有効だった うつ病が悪化し体重が増えすぎた 中村医師













次回は、本書から『早期警報システムを発動させる』について触れてみたい。
長文、ご容赦願いたい。

【バイポーラ(双極性障害)ワークブック 全トピックス】 ※新しいページで開きます
「DSM-IV-TR」と「ICD-10」の分類・定義
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『大うつ病エピソード』-Major Depressive Episodes-
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『躁(そう)病エピソード』-Manic Episodes-
第3章 今一度知る双極性障害の『自分の経緯を図式化する』
第4章 今一度知る双極性障害の『早期警報システムを発動させる』
第5章-1 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(前編)』
第5章-2 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(後編)』
第6章 今一度知る双極性障害の『薬物療法の効果を最大限に得る』
第7章 今一度知る双極性障害の『「否認」の壁の克服』
第8章-1 今一度知る双極性障害の『思考の誤りと認識と把握』
第8章-2 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「誤認(過大視・過小視)」』
第8章-3 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「結論への飛躍」』(読心術、運勢判断、破局視、個人化)
第8章-4 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「視野狭窄」』(選択的知覚、心理的フィルタリング)
第8章-5 今一度知る双極性障害の『絶対思考(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)』
第9章 今一度知る双極性障害の『感情的な思考をコントロールする』
第10章 今一度知る双極性障害の『精神的メルトダウンを反転させる』
第11章 今一度知る双極性障害の『改善に向けた変化』



(2011/12/03 9:27)


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