今一度知る双極性障害の『大うつ病エピソード』
-Major Depressive Episodes-
2011
11/29
火曜日

先週から「バイポーラ-(双極性障害)ワークブック」という本を精読・熟読、一切手を抜かずに大事に読んでいます。

双極性障害の診断に同意するとうことは、自分が双極性障害だということを受け容れるだけではない。
生涯にわたる治療を必要とする障害をもっているということを受け容れることでもあるのです。
(双極性障害を)発病した新人には、この事実が認められない、認めたくないと藻掻き苦しみます。
そういう私も同様でした。

一生、直らない(完治・治癒しない)と悲嘆と絶望に明け暮れ、自分の出生や過去や将来を恨んでみたりします。
何故、自分だけがこのような目に遭わなければならないのだろうかと死にたくもなります。
前世で、自分で蒔いた罪・罰の種を自ら刈り取らずに、今世に持ち越してしまい、償わざるをえないと思い込ませようとします。
ありとあらゆる事柄に悲観的で、打算的で、非生産的になっても許してもらえるのだろう、致し方ないと自分を慰めます。

されど、
何をどうこう考えても、悩んでも、開き直っても、直らないものは直らないのです。

どうしましょうか?

肚を括りましょう!

これしかないのです。
肝に銘じましょう。
これ以上、人生に理不尽なものはないのですが、諦めましょう。
もがくだけ時間の無駄です。

自分のことですから、生涯にわたって「双極性障害」から逃れることはできないですし、縁は切れないのですから、どうせなら「悪友」としてではなく、「親友」として永く上手に付き合わなければなりません。

私は発症から16年、昨年まで大うつ病(定期的な単極性うつ病)と診断され、自分でもそうだろうと思い込んでおりました。
双極Ⅱ型障害と診断されたのは昨年暮れのことでした。
実に病状が診断されるまで14年が経っていたということになります。
(双極性障害の診断は難しく、診断されるまで数年を要することが多いのです)

前振りはさて置いて、本題。

「バイポーラ(双極性障害)ワークブック」から自分なりにポイントを抜き出していこう。
(シリーズで数回にわたり採り上げていきたい)

■双極性障害とは?
・身体が自然に生産する化学物質を脳が処理する方法に変化を生じさせる生物学的疾患
・身体的症状(睡眠、エネルギー、食欲、集中力の減退)と心理的症状(思考、感情、行動の選択)の変化が惹起される。

双極性障害の「双極性」は、『2つの端』(上昇と下降)を意味し、うつ病に落ち込んだ気分だけではなく、躁病の高揚した気分も経験したことがあるということ。


○薬(薬物療法)とは、
化学物質、または神経伝達物質が不足したときに、それらを供給したり、あるいは脳がこれらの物質を効果的に使用できるように助けるもの。※薬を毎日服用していてさえ症状の再発を引き起こす要因にもなる。

まず、DSM-Ⅳ-TR(※注1)についてピックアップしておこう。

DSM診断ガイドラインによると、双極性障害は気分障害と呼ばれる、より広範な診断カテゴリーに入る。精神疾患の性質に関する研究者と臨床かの理解が深まるにつれ、DMS-TRの診断ガイドラインは何度も改定されてきた。各改訂版はその前回の執筆以降収集された各障害に関する新しい科学情報を組み込むことによって改訂されている。
DSM診断ガイドラインは、障害を特徴づける症状リストと、診断を下すにあたってはその症状がどれほどの期間存在することが必要であるかの指針を含めている。

『大うつ病エピソード』があると診断するための項目を下表に整理してみた。

(※注1)(米国精神医学会が2000年に発表した「精神疾患の診断・統計マニュアル」、DSM-Ⅳ:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th Edition)、他の種類の病症についても規定されている)

【参考文献】
chapter1:疾患をコントロールする
chapter2:双極性障害の実際
chapter3:自分の経緯を図式化する
chapter4:早期予防システムを発動させる
chapter5:自分自身を強化する
chapter6:薬物療法の効果を最大限に得る
chapter7:「否認」の壁の克服
chapter8:思考の誤りの認識と把握
chapter9:感情的な思考をコントロールする
chapter10:精神的メルトダウンを反転させる
chapter11:改善へ向けた変化

バイポーラー(双極性障害)ワークブック―気分の変動をコントロールする方法
モニカ・ラミレツ・バスコ 野村 総一郎
479110630X

双極性障害(バイポーラーディスオーダー)による「気持ちの揺らぎ」を抑制する具体的対処法を、認知療法的な手法を用いて、分かりやすく解説。ガイドライン(治療指針)は患者さんへの指導書として治療者が使用でき、障害を持つ患者さん自身が使う自習書としても最適な治療読本。


■双極性障害の症状が以下のような特徴を表すとき臨床的に重要である。
 ・同時期にいっしょに生じる
 ・日常の自己と異なる
 ・特定の出来事や環境によって説明することができない
 ・数日間から数週間にわたってしつこく続く
 ・それが何らかの問題を引き起こし始めている




大うつ病のDSM-Ⅳ-TR基準 ・箇条書き部分は補足追記 ※第一人称で振り返る
1.

5つまたはそれ以上が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。
これらの5つの症状のうち1つは、抑うつ気分、あるいは興味または喜びの喪失でなければならない。

※5つの症状は同時に存在しなければならない。(うつ病のときでなくても多くの人が時々経験するものだから)
※2週間持続しなければならないのは、単にストレスに対する通常の反応、ホルモンの変動が原因による気分のムラ、あるいは短期の身体疾患によって引き起こされた症状であるかもしれないときに、臨床家がうつ病と判断するのを防ぐため。
※症状がその人の通常の自己とは異なるものであることが必要



2.

ほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分

※抑うつ気分の性質は、人によって千差万別ということを前提に読んで欲しい

・悲しみに似た虚しさ、寂しさ、あるいは闇を感じる
・感情を喪失したように、あるいは感情が平坦で変化しないように感じる
・イライラか怒り、あるいは不安が入り混じる
・何か良いことが起こっても悲しい気分が晴れることはない
・(重篤な形態となると)何か良いことが起こっているということを頭では理解できる
・内面的には何の喜びも幸せも感じられない
・(一部)良いことが生じた際にほんのちょっとの間、反応できることもある→反応性気分という
 →このような人は、祝賀会の最中、良い知らせを聞いたとき、といった出来事が起きている間は元気を
  取り戻すが、しかしその出来事が終わってしまうと、たちまち悲しい気分に戻ってしまう



3.

ほとんど一日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退

・ここしばらくの間楽しいことや興味深いことを一切する活力がない
・興味を失ってしまったのか、それとも単に疲れすぎているだけなのか、あるいはやる気が起きなくて活動に参加できないだけのか、わからなくなってしまう
・休暇やパーティのような大きな出来事に限ったことばかりではなく、毎日の出来事の最中においても興味または喜びを感じない
・普段よりも仕事が楽しくなくなり、子供と遊んだり友人を訪ねたり、あるいは趣味に時間を費やしたり、といったことをしたいと思わなくなる
・(喜びや興味が薄れてしまうと)友人からの電話をずっと避けたり、普段と比べて本を読まなくなってくる
・他の人の活動についてあまり聞きたくない、食事をしても、テレビを見ても、映画に行っても、ほとんど、あるいはまったく喜びを感じられないことに気づく
・エネルギーがあっても動機付けと興味がなくなれば、活動に参加したくなくなる



4.

食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加

※理論上、食欲が減退するれば体重は減少、食欲が増進すれば体重は増加するが、さまざまな理由から必ずしもそうとは限らない
・通常、自分を良い気分にしてくれる慰めとなる食べ物をしばしば食べる
 (甘い物、非常に食べやすいもの、柔らかいもの、子供の頃から食べ慣れているもの)
・通常より、食べ物の喜びが減り、もしくはある種の食べ物に対する味覚が失われるということもある
・食欲が急激に高まり、気がつくと空腹でもないのに食べていることもある
※興味の喪失やまたはエネルギー不足から活動量が低下すると、カロリー消費が減少し、たとえカロリー摂取はほぼ同じに保たれていても、活動量の低下から結果的に体重の増加にいたる可能性もある
・子供や青年の場合、体重が全く変化しないこともある
 →子供、青少年の場合は成長するにつれて、それに比例して体重も増加するのが普通であるから



5.

ほとんど毎日の不眠または睡眠過多

<初期不眠症のタイプ-床について30分以上眠りに落ちることができない>
・かなりの欲求不満をもたらす
・極度に疲労困憊するまで床につかないようにしたり、存分に疲れ果て眠りにつけるようになるまで読書、テレビ、インターネットサーフィンなどをして対処する人もいる

<中期不眠症>
・夜中に目が覚め、再び眠りに戻るのに苦労する
・重篤な場合、一晩に数回目覚める
・眠りは断続的で、休息にはならない
・疲労感を覚えながら眼を覚ます
※トイレに行く、水を飲む、あるいは何か物音で目が覚め、それを確かめる、といいたことのために目が覚めたとしても、すぐにまた眠りに戻ることができるのならば、不眠症とはみなされない

<末期不眠症、あるいは早期覚醒>
・朝、自分が意図していたよりも1時間またはそれよりも早く目が覚め、再び眠りに戻ることができない
※人は体内規則をもっていて、目覚まし時計がなしでも、またはアラームが鳴ろうとする直前に目が覚める。目が覚める時刻が通常よりずっと早い場合のみ、末期不眠症とみなす

<過眠症>
※通常よりずっと多く眠ること
・通常よりも早く就寝する、日中に昼寝をする、または十分な睡眠を取ったにもかかわらず、一日中ずっと眠気を覚える
・他者とのやりとり、こまごまとした雑用、または何かを楽しむといった行動に携わるより眠りが優先してしまう



6.

ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または抑止

精神運動性の焦燥には、せわしない、あちこち歩き回る、一般的に長時間じっと座っていることに困難を覚えることを含む
・ふと気付くと、仕事中に普段よりも頻繁に立ち上がってあちこち歩き回っている
・映画の上映中ずっと座っていることに困難を覚える
・疲れているのにもかかわらず、何もしないより動いている方がいいと思っていることがある
・動き回っていようとする衝動に従わないと、イライラしたり、焦点を定めたり集中することができない
・安穏とした気分に耐えられない

精神運動性の抑止には運動、思考、または話しの速度が低下することも含む
・スローモーションで動いているような気がする
・仕事をやり遂げるのにいつもよりももっと時間がかかる
・歩行速度は、普段より低下する
・ふと気づくと、長時間じっと座っている
・(話し方の停滞には)言うべき適切な言葉がなかなか見つからない、ゆっくりと話す、または質問に答えるのに普段よりも時間がかかる
・脳内の思考の回転がゆっくりしているように感じる
・(普段、動きや話し方が速いとしたら)普段ほど鋭敏でない、頭の回転が速くない、機転が利かない



7.

ほとんど毎日の易疲労性、または活力の減退

・普段よりも疲れやすくなり、通常の活動をやり遂げるための元気が枯渇してしまう
・十分な睡眠をとったあとでも、疲労感を覚えることがある
 (不眠症を伴う場合、活力の低下は一層悪化する)
※普通の日課をやりたいという願望はもっているが、それに従事する身体的エネルギーが欠けてしまう人の場合
・自宅を掃除したい、車を洗いたい、または食料品の買い物をしたいとう気持ちはあるが、自分自身の力でやり遂げる十分な活力がない



8.

無価値感、または過剰であるか不適切な罪悪感

※無価値感は、人間として自分が他人よりも価値がないように感じるときに生じる
・単なる場所ふさぎで、自分の存在は意味がないと考える
 (これは、私たちが通常、自己評価が低い、または自己批判的であるとみなすよりもずっと悪いもの)
・自分のことを大した人間ではない、価値がない、人から愛されそうにないと感じる
・他の人が励ましてくれても自分の心は変わらない
※過剰な罪悪感は、必ずしも全面的に自分のせいばかりとはいえない重要なことで自分自身を責め、状況の複雑さ、もしくはほかの人と共同責任を考慮に入れていないときに生じる
・(過剰な責任感で)変えることも解消することも正すこともできないような、ずっと昔に起こった出来事を悔やんで、いつまでもこだわり続けている
(通常の良心で人生における過去の選択を悔やむこととは混同すべきことではない)
・過剰な責任感を抱くと、自分ではまったくコントロールし得ないことで自分自身を責める
・過ちまたは失敗を非常に受け容れがたく感じ、それについて一度に何ヶ月も、あるいは数年間も、常にあれこれと思い巡らす
・他人に対して、決して許すことのできない、あるいは忘れることのできない誤り、または罪をあげ連ねたリストを心の中に蓄えてしまう
 このとき普通、他人に対し罪を許し、過失を容赦してあげるが、しかし二重の基準で、自分自身を罪から解放してやることができない



9.

ほとんど毎日の思考力や集中力の減退、または決断困難

・映画やテレビの番組の話しの筋を読み取ったり、展開についていくことを難しいと感じる
・(思考のつながりを失ってしまっているため)新聞や雑誌の段落を読み直さなくてはならない
・心が本題を離れ、関連の問題、考え、人びと、または出来事へ逸れてしまったり、あるいはネガティブな考えや心配がどっと心に押し寄せてくる
・決断を下すことが困難になる
・自分の思考を十分に構造化することができないため、問題を明確に定義できない
・選択肢をすべて考慮することができない
・自己疑惑が忍び込んできて、謝った決断を下してしまうのではないかと恐れる
・謝った決断を下して苦しむくらいなら、決断を一切下さないほうがましだと、自分を説得する

(うつ病に伴うネガティブな絶望的な考え方のせいで)代わりの案がことごとく理不尽であると思う
・(思考が薄弱であると感じてしまうために)決断が困難になる
・(多くの場合)同時に複数の困難に直面し、一度にいくつもの問題を解消して、生活の断片をうまくおさめてくれる解決索を探す(現実というより幻想)
 (自分の問題すべてを一つの介入で解決出来ることは希である)
・「正しい回答」または「最善の選択」を探してしまい、解決策を選択し、実行することができなくなってしまう
・何を着たらいいか、何を食べたらいいか、あるいは最初に何をしたらいいかをめぐるもっとも小さな決断も、普通よりも複雑で、難しく、あるいは厄介であると感じる
・長時間冷蔵庫の中を睨みつけていたあげく、結局、決断できずに何も選ばなかったりする
・開いたクローゼットの前に立ち、いくつか服を試着した後でさえ何を着たらいいのかわからなくなる
・テレビのチェンネルを何度か変えながら、自分が見たい番組を一つも見つけられなくなることがある
選択肢や決断があまりにも多くありすぎて決めかね、いっそ誰かが代わりに決めてくれたらいいのにと感じる



症状が原因の機能障害、または入院の必要性
かつ、
病状は、一般身体疾患、物質乱用、または薬によるものではない
かつ、
死別後の状態にない
かつ、
少なくとも5つの症状が存在し、その他の条件がすべて満たされていた




ちなみに、私の抑うつ状態では、すべての項目が該当し、同時に存在している。
パーフェクトだ。

私が大うつ病を要約するならば、『考えられず、決められず、行動できず、外出が恐怖となり、部屋に閉じこもりがちで、人と目が合わせられなく、ちょっとのことでクタクタになり、すべての出来事が何をしても一切楽しめることがなく、趣味への興味が一切消え失せ、心が安まることがまったくない』のです。
これは絶望感・悲壮感に支配されてしまい地獄と同じ、なのです。


次回は、本書から『躁病』について触れてみたい。

長文、ご容赦願いたい。

【バイポーラ(双極性障害)ワークブック 全トピックス】 ※新しいページで開きます
「DSM-IV-TR」と「ICD-10」の分類・定義
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『大うつ病エピソード』-Major Depressive Episodes-
第2章(抜粋) 今一度知る双極性障害の『躁(そう)病エピソード』-Manic Episodes-
第3章 今一度知る双極性障害の『自分の経緯を図式化する』
第4章 今一度知る双極性障害の『早期警報システムを発動させる』
第5章-1 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(前編)』
第5章-2 今一度知る双極性障害の『自分自身を強化する(後編)』
第6章 今一度知る双極性障害の『薬物療法の効果を最大限に得る』
第7章 今一度知る双極性障害の『「否認」の壁の克服』
第8章-1 今一度知る双極性障害の『思考の誤りと認識と把握』
第8章-2 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「誤認(過大視・過小視)」』
第8章-3 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「結論への飛躍」』(読心術、運勢判断、破局視、個人化)
第8章-4 今一度知る双極性障害の『思考の誤り「視野狭窄」』(選択的知覚、心理的フィルタリング)
第8章-5 今一度知る双極性障害の『絶対思考(白黒思考、レッテル貼り、すべき思考)』
第9章 今一度知る双極性障害の『感情的な思考をコントロールする』
第10章 今一度知る双極性障害の『精神的メルトダウンを反転させる』
第11章 今一度知る双極性障害の『改善に向けた変化』






(2011/11/29 21:52)


Copyright (C) 2011 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.