『スキーマに挑戦しよう』 2011
11/25
金曜日

昨日のセミナーを備忘録的にまとめておきたい。

認知行動療法については、
 『7つのコラム表』
 『問題を解決しよう』
 『人間関係を改善しよう』
 自己表現的『アサーション』
について触れてきた。

今回は、最終章となる『スキーマ』について述べたい。
 ステップ1 スキーマに気付く
 ステップ2 行動をとおしてスキーマを修正する


schema
―【名詞】概要; 枠組; 概略図

【参考文献】本内容はこの書籍に基づいている

こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳
大野 裕

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ステップ1 スキーマに気付く
スキーマとは?

じばらく自動思考を記録していくうちに、自分の自動思考にいくつかの共通するテーマがあることに気付く。それが自分の特徴的な考え方のクセで、自分の考え方や行動パターンに大きく影響している「スキーマ」と呼ばれるもの

たとえば、「自分はダメな人間だ」と思い込んでいる人は、「なんでも、一生懸命しないとうまくいかない」と考え、完全主義的な行動をとる。そして、少しでも失敗すると、「やっぱり自分はダメな人間だ」と考えて落ち込んでしまう。

スキーマのいろいろ

・自分はダメな人間だ。
・人は何でも完全にできないといけない。
・なんでも自分でやらないといけない。
・すべての人から愛されなくてはいけない。
・人は自分を利用するだけだ。
・人には弱みを見せてはいけない。
 ※スキーマには「もし・・・だったら、・・・だ」といった仮定法の形もある
・少しでも失敗すれば、仕事は台無しになってしまう。
・人に自分の心の奥底を見られたら、その人は私のことが嫌いになる。
・すべての人から愛されなければ、私は決して幸せにはなれない。
・自分の気持ちを完全にコントロールできなければ、大変なことになってしまう。
・少しでも気を抜くと大変なことになる。

自分の自由な行動を妨げているのは、このようなスキーマ。
まず、自分のスキーマを見つけ出すことからはじめよう。

スキーマを見つけ出すために行うこと

(1)自分特有の個人的テーマをはっきりさせる。
(2)自分が自分に対して行っている評価を振り返る。
(3)強く心に残っている過去の記憶や非常に気持ちが動揺した場面を拾い出して、共通点を探す。
(4)自動思考の記録を振り返って共通する考え方を見つけ出す。

下向き矢印法

スキーマに気付く方法

自分特有の考え方のクセ(スキーマ)に気付くためには、下向きの矢印法が役立つ。
(自動思考に気付くときに使った方法と基本的に同じ)

気付いた自動思考に対して、以下のように自分の心の中に問いかける。

それが本当だとして、自分にとってそれはどういうことか?
        ↓

それは自分にとって、
自分の生活にとって、
自分の未来にとって、
どういう意味をもつのか?

        ↓
そういうことが起こったとして、最悪のことは何だろう?
       ↓
他人が自分についてどう考えているかが、どういう意味をもつのか?
       ↓
ほかの人について、それはどういう意味をもつのか?
       ↓
自分について言えば、それはどういうことなのか?
        ↓
ほかの人について言えば、それはどういうことか?
       ↓
世の中について言えば、それはどういうことか?

【例1】

下向き矢印法(1)

(状況)
今朝、Mさんは私が挨拶をしたのに返してくれなかった。

(自動思考)
Mさんは私のことを嫌っていると思う。

(どういうことが問題なのか?)

親しくなるとかならず人は私のことが嫌いになる。
(それは自分について言うとどういうことなのか?)

自分は人と親しい関係を結べない。
(それは自分についていうとどういうことなのか?)

自分は嫌な人間だ。


【例2】

下向き矢印法(2)

(状況)
Dさんは上司から新しい販売ノルマを受け取った。
(自動思考)
自分以外は全員このノルマをこなすだろう。

(これはほかの人について言えばどういうことか?)

彼らは私よりも楽に仕事をこなせる。
(それは彼らについて言えばどういうことか?)

彼らは有能だ。





ステップ2 行動を通してスキーマを修正する

ここでは、
(1)スキーマどおりに行動しないと、どのようになると自分が考えているかを書き出す。
 →それに従わなかったらどのようになるかを現実の行動をとおして明らかにする。
(2)自分がくよくよする行動の中から、スキーマに反する行動や態度を取り出す。
 →それがかなわらずしも予測するほど悪い結果になはならないということを行動をとおして確認する。

【第一段階】スキーマに非現実的な面がないかどうかについて考えてみる。
「誰からも好かれなくてはならない」と考えて息苦しくなる人も多いはず。しかし、全ての人に好かれるというのは無理な話。
自分がつきあっている人を、自分が大切だと考える順番に並べるとよく判るはず。

【第二段階】評価基準を書き出してみる。
「自分はダメな人間だ」「人間というものは信用出来ない」といった具合に、いろいろな人や出来事を自分なりの基準で判断、評価している。
いったい何をもってそのように評価しているのか?
その基準を具体的に書き出して、それが妥当なものかどうかを考えてみる。
そのとき、自動思考のチェックのときと同じように、その評価を裏付けることがらと否定することがらの両方を必ず書き出してみる。
そうすれば、一方的に決め付けられないことがわかるはず。

【第三段階】スキーマのプラス面とマイナス面を書き出してみる。
スキーマには役立つ部分と役に立たない部分の両面がある。
「なんでも完璧にできないといけない」というスキーマでは、きちんとした仕事をしていくためには必要な考えだが、そのような考えしかできないと仕事が進まないし、突発的なことが起きたときには柔軟に対応することができない。
スキーマのプラス面とマイナス面を書き出してみると、バランスのとれた相対的な考え方ができるようになる。

【第四段階】行動をとおしてスキーマに挑戦してみる。
新しく作りだした規制に沿って行動してみる。
その行動をする前に、まずそうした行動をとったときに起きる可能性があると自分が心配していることを書き出してみる。
次に、実際の行動の中でそれがどのようになるかを実験してみる。
このときに、アクションプランのところで練習した表を利用してみるとよい。
このようにすることで、自分の気持ちや行動を制限していた思い込みがわかって、行動に幅がでてくる。

【第五段階】ほかの人の様子を観察してみる。
同じような問題に直面したときに、ほかの人はどのように対処しているのだろうか。
その中から自分に役に立ちそうなものを借りてくると,自分の考え方や行動パターンの幅が広がる。




 「スキーマのまとめ」

まとめとして、このような方法を使ってスキーマに挑戦するのは、より幅のある柔軟なスキーマを作り出すためであることを忘れないこと。
これまで長く慣れ親しんできたスキーマはそう簡単に変えられるものではない

「スキーマを変えないといけない」というスキーマを少し変えて、
「仕事にはいろいろある。きちんとやらないといけないものは多いが、少し手を抜いていいものもあるかもしれない」
というように変われば、随分楽に仕事ができるようになるだろうし、能率も上がってくる。
そして、それだけ気持ちが楽になり、ストレスに対する抵抗力も高まってくる。






(2011/11/25 7:21)


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