自己表現的『アサーション』 2011
11/19
土曜日

認知行動療法については、
 『7つのコラム表』
 『問題を解決しよう』
 『人間関係を改善しよう』
について触れてきた。

前回の「自分の気持ちをバランスよく伝える」ひとつのやり方として適切な自己表現の『アサーション』というのがある。
『アサーション』を説明するにあたり、前もってコミュニケーションのタイプ別に理解しておく方がベター。
よって、以下の順番で説明する。
 1.<非主張的な自己表現>
 2.<攻撃的な自己表現>
 3.<アサーティブな自己表現>


assertion
【名詞】【不可算名詞】 [具体的には 【可算名詞】]
断言,断定,主張; 〈…という〉断言,主張 〈that〉

【参考文献】本内容はこの書籍に基づいている

こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳
大野 裕

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創元社 2003-03-20
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1.<非主張的な自己表現>とは?

◆第1段階
自分の気持ちや考えを表現しなかったり、しそこなったりする言動
 ・曖昧な言い方
 ・言い訳がましい
 ・消極的な態度
 ・小さな声でしゃべる

どのような時にそうなるのか?
(1)自信がなく、不安が強いとき

非主張的な言動をしているときは、相手に譲ってあげているように見えながら、自信がなく、不安が強く、それを隠して卑屈な気持になっていることが多い。
したがって、非主張的な言動の後は、
 「自分はやっぱりだめだ」といった劣等感や、
 「どうせ言ってもわかってもらえないに決まっている」
といったあきらめの気持ちが付きまとう。
そもそも自己表現していないのだから、相手にわかってもらおうと期待するのは欲張りである。
しかし、つい
 「黙って聞いてあげたのに」とか、
 「立てたのにわかってくれない」
という甘えや相手への軽蔑の気持をもったりする。

(2)人と付き合うのがおっくうになる
我慢や恨みが積み重なると、欲求不満や怒りが溜まり、人と付き合うのがおっくうになる。
また、弱い立場の相手に対して、不当に八つ当たり、意地悪をしたりすることにもなりかねない。
一方、相手も結果的に被害を受ける。
あとで恨まれたり、軽蔑されたりするのはたまったものではない。




2.<攻撃的な自己表現>とは?

相手の言い分や気持を無視、軽視して、自分を押し付ける言動
 ・自分の意見や考え、気持ちをハッキリ言う
 ・相手の言い分や気持ちを無視、軽視する
  ⇒結果的に、相手に自分を押し付けてしまう

どのようなときにそうなるのか?
(1)相手を踏みにじっている
一見、表情豊かで、ハキハキものを言っているように見えるが、自分のことだけ主張する。
その背景には、その場の主導権を握り、相手より優位に立とうとする態度や、「勝ち負け」で物事をきめようとする姿勢が見え隠れし、自分に不正直といえる。
攻撃的とは、単に暴力的に相手を責めたりするだけではなく、相手の気持ちや欲求を無視し、自分勝手な行動をとったり、巧妙に自分の欲求を相手に押しつけたりする。
これには、不当な非難、侮辱、皮肉、八つ当たりも含まれる。

このような言動をする人は、どこか防衛的で、必要以上に強がっている。
また、自分の意思は通っても、その強引さのために後味の悪いことが多く、それが自分の本位でなかったことに気づき、後悔することになる。

(2)お互いの関係をギスギスしたものにする
攻撃的な対応をされた相手は、服従させられた気持になり、大切にされた感じにはなれない。
その結果、傷つき、恐れて敬遠するか、怒りを感じて、復讐心を抱くかも知れない。
いずれにせよ、お互いの関係は、相互尊重には程遠く、ギスギスしたものになりがちだ。




 3.<アサーティブ(適切)な表現>とは、自分も相手も大切にした自己表現のひとつ

<<譲ったり譲られたりしながら>>
アサーティブな発言では、自分の気持、考え、信念などが正直に、素直に、その場にふさわしい方法で表現される。
そして、相手が同じように発言することを推奨する。
結果として、お互いの意見が葛藤を起こすこともあり得ると考える。お互いに率直に話をすれば、自分の意見に相手が同意しないこともあれば、相手の意見に自分が賛同できるとも限らない。
むしろ、率直に話して意見が考えが一致すれば、それはラッキーだと解釈しよう。

○葛藤が起きた時
面倒がらずにお互いの意見や気持ちを出し合って、譲ったり、譲られたりしながら、双方にとって納得のいく結論を出そうとするのがベター。
これらの言動は、余裕と自信に満ちており、自分がすがすがしいだけではなく、相手へもさわやかな印象を与える。
また、相手は大切にされたという気持ちを持つと同時に、二人の努力に対して誇らしい気持ちを持つことになる。

<<相互尊重を体験する>>
「アサーション」とは相互尊重の体験をすることをいう。
アサーションには、歩み寄りの精神があり、多少時間はかかっても、お互いを大切にし合ったという気持ちが残る。
又、話し合いのプロセスでは、より豊かな創意工夫が生み出され、一人の提案よりむしろ満足のいく妥協案が採り出せる可能性さえある。



<アサーティブ(適切)な表現>の具体的な方法
■視線や表情、
態度で伝える

■視線や表情、態度で伝える
-◇視覚的な要素
<<視線>>
ときたま相手の目を見たり、話している口元に視線を移したりして、相手を目で確認しながら話すことは、相手に関心を持ち、相手との関係を心地良いものにしようとする意志を表現できる。
 X:目をそらせて横目で見る
 X:相手の目をじっと見つめ続ける

<<表情>>
表情も多くのことを伝える。
鏡を見て、自分の怒り、悲しみ、喜び、恐れなどの表情をチェックするのもよい。
 X:笑顔や微笑みを絶やさないことはよいことだという思い込み、観念は捨てる

<<姿勢>>
両足をしっかり地に着けて胸を張る
人との間の心地良い距離をつかむ

<<手や腕の動作>>
手を胸や口元に当てる⇒非主張的なイメージ
手や腕を自由に動かしている⇒自信があり、自由な感じをもたらす

<<服装>>
洋服の種類やスタイルにより相手に与える印象は変わる
 ⇒アサーティブに着こなすことを考えよう
(気分が晴れないときなど)シャキッと着るものを決めると気分も変わる

自分をオープン
にしてみる

■自分をオープンにしてみる
<<自分を知ってもらわなければならない>>
自分の考えや感じを他者に伝えたい。
    ↓ しかし ↓
自分を知らせないで人と仲良くなったりすることはない。
黙っていること自体、「話したくない」とか、「知られたくない」などということを伝えている可能性がある。
「知られたくない」場合は、「知られたくないの」と言った方が誤解はされない。

<<少しずつ近づく>>
コミュニケーションは、伝えていないことも含めて、コミュニケーション。
人間関係には、自分を知ってもらうことはつきものであって、自分を知らせない話し合いはない。
自分を知らせないで仲良くなったりすることはない。
人はややぎこちなく、恐る恐る、少しずつ人に近づいていける。

質問を使い
分けてみる

■質問を使い分けてみる
<<「開かれた質問」と「閉じた質問」を使い分けながら・・>>

「開かれた質問」とは、質問された相手が「はい」「いいえ」だけでは答えがすまない質問のこと。
・答える人が話したいことを選択する余地があり、質問する側が思いもしなかった話が出てくる可能性も含んでいる。
 ⇒情報が多く得られ、話を広げ、新たな視点や考えを引きだすのに役立つ

「閉じた質問」とは、「はい」と「いいえ」で答えがすんでしまうような質問、ほんの数語で返答ができる問いかけのこと。
・明瞭で端的な返事が欲しいとき、物事の結果をはっきりさせたいときに有効

★目的に応じて適切に使い分けることが大切

傾聴

■相手の話を聴くという行為は、受け身的ではなく、積極的、能動的なこと
<<話に関心がもてない>>
よき聴き手になる。
相手に関心をもてば、相手のことがよくわかり、自分も話したいことが出てくる。
話しが複雑で、混乱していたり、不安定になっている人には、
急がせたり、割り込んだりはせずじっくり聴くことが大きな助けとなる。

<<積極的、能動的に聴く>>
傾聴のポイントは
 ・のけぞるのではなく、前傾姿勢をとる
 ・うなずく
 ・相槌を打つ
 ・繰り返し相手の話を反復する
 ・相手の話をようやくできるともっとよい

DESC法

■議論の場で問題を解決するセリフ
困ったときには、「DESC法」を活用する。
「問題解決のためのアサーション」とは会議の場、話し合いで何かを決めたり課題を達成したりする場におけるアサーションのこと。
自分の要望を相手に伝えやすく、また伝わりやすくする基本ステップ
表現に困ったとき、また複雑なことを決めたりするときには、DESCをつくってみよう。

⇒ステップを踏んで、セリフを作ることが必要

DESCとは、4つの段階のアルファベットの頭文字を組み合わせたもの
=描写する(describe)
=表現する(E1:express)、説明する(E2:explain)、共感する(E3:empathize)
=特定の提案をする(specify)
=選択する(choose)

 【ポイント】
 

→現在の状況や相手の行動を客観的に描写する

→描写したことに対しての、自分自身の主観的な気持ちを表現したり、説明したり、相手の気持ちに共感する 

→状況を変えるための具体的・現実的な解決策、妥協策を提案する

→相手に要望を受け入れてもらった場合、受け入れてもらえなかった場合それぞれに対する自分の次に取る行動をあらかじめ考えておき、そして選択する

・DESCの順番に必ず従う必要はない
・DとEを明確に区別する
・D部分は、客観的な描写で、その場にいる人が共感できるものでなければならない
・C部分は、相手がNOと言ったときに、自分はどのような行動をとるのか決めておくことは、大きな安心感がある
・DESC法では相手を思い通りに動かそうとしないこと、歩み寄りをするため、お互いが納得のいく妥協点を探るための方法と肝に銘じること


【ケーススタディ】
会議の席で、煙草を吸っている人が何人かいて、煙草を吸わない自分が、何か方策を出そうとしているケース

「会議が始まって一時間たったので、この部屋が煙でいっぱいですね」(D)

「私はタバコを吸わないので(E1)、喉が痛くて、頭もボーっとしてきました(E2)」

「煙草を吸わないと集中しにくい人もいると思いますが(E3)、しばらく休んで空気を入れ替えませんか(S)」

「そうすれば、皆が気持よく、会議を続けられると思います」(肯定的結果に対する(C))

「もし休憩をとるのが無理ならば、窓を開けて、暫く煙草をとめて頂けますか」(提案を受け入れられなかった場合の(C))




(2010.11.19 14:00)


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