「OLYMPUS、お前もか」 2011
11/9
水曜日

中学生の頃、オリンパスの一眼レフに小型・軽量・高機能なOM-2(※注1)というモデルがあった。
一眼レフながらニコンやキヤノン、ミノルタに比べて格段にコンパクトだった。

 (1)大きい
 (2)重い
 (3)音がうるさい
と一般的に一眼レフカメラの欠点を、カメラ市場後発メーカーだったOLYMPUS社は払拭したかった。
さらには「TTLダイレクト測光」(※注2)という秘密武器を隠し持っていた。

僕は、純粋に憧れた。
手に入れたかった。
それもブラックモデルを。

憎たらしいほどの精悍なマスク。
ガキガキしていた小柄な僕にもぴったしだ。
カタログをずっと眺め続けた。
そのうちに目力でカタログに穴が開いた。

上の写真がそのOM-2モデル。

自由になるお金のない中学生が購入できるものではなかった。
「高根の花」だった。
このような事柄から、”オリンパス”というブランドに畏怖の念を抱きながら一目置いていた。


今日の読売新聞、トップと総合欄に『オリンパスの損失隠し』の記事が我が目を貫いた。

□何をしたのか?
1990年代に発生しながら計上を(意図的に)先送りしてきた有価証券投資による損失を穴埋めするために1,000億円超が支出されていた。裏でバブルの後始末に勤しんでいたというものだ。

□目的は?
・(不正な会計処理は)バブル崩壊による財テク失敗を隠蔽し、経営への悪影響を避けるため
・バブル崩壊で経営難に陥った企業が不良債権を関連会社に付け替える『飛ばし』といわれる手法で、
 処理損失を少なくみせかけるため

□するとどうなるのか?
 ・粉飾決算にあたる可能性もあり刑事責任を問われる→検察側は注視・慎重姿勢
 ・東京証券取引はオリンパス社を上場廃止にする可能性もある
  →東京証券取引側は総合的に判断すると慎重な見方(※注3)
 ・オリンパス1社にとどまらず、日本企業の統治能力やコンプライアンス(法の順守)への信用が失墜しかねない

オリンパスの企業経営者は「社会常識」に反する「社内常識」がまかり通っていたのか。
内視鏡では世界のトップといわれる一流企業が・・・

全てバブルに浮かれ過ぎた日本企業の成れの果て、
バブル崩壊で奈落の底から誰にも気づかれずに、
自力で這い上がれると思っていたのだろうか。

(ブルータスならぬ) OLYMPUS、お前もか」


ここでプロが書く文章には品格がある。落としどころをきちんとわきまえている↓
[読売新聞 2011.11.19付 編集手帳]より
◆20年ほど前の新聞広告という。
〈落とし穴は、上にある〉。オゾン層に出来た穴、オゾンホールを指す。日本実業出版社の『秀作ネーミング事典』によれば、オゾン層を破壊するフロンの代替技術を開発したことを宣伝する広告で、広告主はオリンパスである
◆いまの目で読み返せば、“上にある落とし穴”とは会社の上層部、経営陣の良識が欠落してできた穴に思えなくもない。オリンパスで、10年以上にわたる巨額の損失隠しが明るみに出た
◆歴代の取締役会は何をしていたのだろう。監査法人は何をしていたのだろう
◆消化器の内視鏡で世界一を誇る企業が、自身の経営実態を映す内視鏡のスイッチをオフにして投資家をだましつづけた。日本企業の信用はガタ落ちである
社名はギリシャ神話の神々が住まう山オリンポスに由来する。もとは高千穂光学工業と名乗っていたのを、「日本の高千穂(高天が原)から世界のオリンポスへ」の願いをこめて改名したとか。財政が火の車の本国で手いっぱいのところへ、愚かな経営陣に率いられて落とし穴にはまった会社が一つ――主神ゼウスの憂い顔が目に浮かぶ。



(※注1):オリンパスOM-2(1975年11月発売) - 昭和50年(1975年)発売のOM-2は、絞り優先の電子制御シャッターを装備したAE(Automatic Exposure:自動露出)機です。測光機構として、世界初となるフィルム面の反射を測るTTLダイレクト測光を採用。これによって撮影中の露出制御が可能になり、専用ストロボを用いたTTLストロボ自動調光を実現しました。TTLダイレクト測光を実現するために、世界中の35mmフィルムが集められ、一本一本フィルムの反射率を測定した上で、シャッター幕の印刷濃度が決められました。(「オリンパスの歩み」より)


(※注2):TTLダイレクト測光
オリンパスOM-2が発売されるより前の自動露出一眼レフカメラには記憶式のTTL測光(TTL: Through the Lens カメラに使われる内蔵露出計の一種で、撮影用のレンズを通った光を測定する形式)が使われていた。この装置はあらかじめ被写体の明るさを測りその露出値を記憶、シャッターを押すと同時にそのままの露出で撮影するものであった。しかしこの方式はフラッシュを使用した撮影の際には適用外となる。よって外光式オートといってフラッシュ側の受光部より光量を調節していた。また予めフィルム感度をセットする必要性や撮影距離によって使える絞りが限られるなどの制約が多かった。
オリンパスOM-2で採用されたTTLダイレクト測光は記憶装置を用いず直接フィルム面からの反射光、また高速シャッター時はシャッター幕に描かれた白黒の不規則なドットで標準反射率を構成する「ランダム・パターン」と呼ばれる模様を、ボディ下部に置いた受光器を用いて測光するのでフラッシュ光もボディ側での制御が可能となった。これは当時としては画期的な出来事であった。またミラー上昇時(=シャッター作動時)はファインダーからの逆入する光は塞がれるので、この光にも影響を受けないというメリットがある。
この測光方式の欠点として予想されるのは、仮にフィルム面の反射率が銘柄によって違う場合、露出精度に差異が生じる可能性があるということである。しかしながらオリンパスの発表では、測定の結果各社フィルムの反射率の差異は0.2EVの範囲であるということで、通常の撮影では概ね安定した露出精度を出す測光システムとなっている。(ウィッキペディアより)


(※注3):東京証券取引所の基準では、有価証券報告書に虚偽があり、かつ「重大な影響を持つ場合」に株式の上場が廃止される。ただ、上場が廃止されると株式の売買が難しくなり、投資家に大きな影響が出ることもあるため、判断する際の画一的な基準はない。東証が2004年以降で有価証券報告書の虚偽記載や、投資家らの公益を損ねたとして上場廃止を決めたのは19社。(読売新聞:総合欄より」)




(2011/11/09 21:22)


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