『アンダー・ザ・ドーム』スティーヴン・キング著 2011
11/1
火曜日

スティーヴン・キングの大作『アンダー・ザ・ドーム』を読み終えた。


本作品は、「IT」、「ザ・スタンド」に次いで長編であり、原書ハードカバーで千七十四ページにもなる。(日本語訳でも上下巻、段組みで千四百ページにもなる)

「アクセルを踏みっぱなしで書くことが私の目標だった」とあとがきでキングは述べている。

この作品を書き始めたのが1976年で、二週間で75ページを書いたが、途中で尻尾を巻いて退散したらしい。彼の作品はいつでもたくさんの登場人物が登場し、S.キングもそれを楽しんでいるのだが、物語中に出てくる技術的な問題、とりわけ(ドーム)が出現したことで生態系や気象に及ぼす影響が問題で頓挫していたらしい。

さて、ある日突然、無色透明で厚みもない、しかもアメリカ軍のミサイルで破壊も突破も不可能な強度の障壁が出現した。それは、地上1万メートルを超えて、なお聳え立つ、地中の深さはにわかにも見当もつかない。
そのドーム(ガラスのボールを逆さにしたような)に町全体がすっぽりと包まれてしまった。
全世界から孤立してしまう。
誰も町へ入ることも出ることもできない。
そのような状況に追い込まれた時、人間はどのような行動をするだろうか。

⇒あとは本書を手にするだけ・・・

B級SFの匂いがするプロットだが、キングならでのスパイスを効かした味付けや、高級なふくらし粉を塗しながら、これだけのストーリーがよく書けるものだと、いつもながら感心してしまうのだ。
脱帽、脱水、脱臼するほど刺激的。

そしてキングファンにはたまらないキャッスルロックやデリーといった馴染みのある地名も織り混ざっている。

多量の登場人物の多さに読み始めた最初の頃は、頭を整理しきれなくなる。
誰がどこの人で、誰と兄弟で、誰の子供か、どこに勤めているのか、ごちゃごちゃっとなってしまう。
なにせ巻頭の[主な登場人物]には60人が名をつなれている。
これだけでは飽き足らず、チョイ役の人物も含めれば100名近くになるのではないだろうか。
だがしかし中盤からは挿絵がなくとも(もともと彼の作品には挿絵はない)登場人物の
表情や顔つき、体格、服装、場所の情景までが頭の中に自分の目で眺めているように浮かびあがってくる。


複数の場所で同時に進行する出来事が、一切の矛盾と無駄なく数秒のズレもなくストーリーは、オーソドックスに起承転結を踏まえながら(起承転転結起結転結もあり)、ジェットコースタのスピードで突き進んでいく。

唸る、痺れる、麻痺する、高鳴る、どよめく、轟く。

本作の出版後、TVドラマ化の動きがあり、それによるとスティーヴン・スピルバーク監督のドリームワークスが制作することになっている。

今は折しも「秋の読書週間」だったし・・(読書週間とは10月27日~11月9日(文化の日を中心にした2週間)を指す)

秋の夜長に本書を手に取り、そっと読むのも良いのではないでしょうか。朝まで眠れなくても僕は知らない。

アンダー・ザ・ドーム 上
スティーヴン・キング 白石 朗

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アンダー・ザ・ドーム 下
スティーヴン・キング 白石 朗

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巨大で透明なドームに封鎖された小さな町に恐怖と狂乱が充満する。町民たちは脱出できるのか? 恐怖の帝王キング、畢生の大作登場。

【上巻内容】(「BOOK」データベースより)
メイン州の小さな町チェスターズミル。人口およそ二〇〇〇人。その町は突如、透明の障壁に囲まれた。上方は高空に達し、下方は地下深くまで及ぶ。“ドーム”と呼ばれるようになった障壁は、わずかな空気と水と電波を通すのみ。パニックのなかで、命を落とす者が連続する。そこで動き出すのは町を牛耳る男ビッグ・ジム・レニー。警察力を掌握したビッグ・ジムは混乱に乗じて恐怖政治を開始した。“ドーム”のなかで一触即発の内圧が高まりはじめる―。アクセル踏みっぱなしの小説を書く―そう決意して、“恐怖の帝王”キングが、その才能と筆力のすべテを恐怖と緊迫のために叩き込み、全一四〇〇ページを一気に駆け抜ける。巨匠の新たなる代表作、誕生。

【下巻内容】(「BOOK」データベースより)
町はビッグ・ジムの手に落ちた。悪辣な陰謀が人々を陥れてゆく。煽動された暴動。演出された流血。罪なき者は踏みにじられ、焼き尽くされ、投獄される。法も秩序も良心も“ドーム”のなかに手を伸ばすことはできない。陰謀の総決算は臨時町民集会―そこで反対勢力は弾劾され、死刑を宣告されるだろう。ビッグ・ジムへの反撃を目論む元兵士バービーと医師助手ラスティらは、天才少年ジョーと仲間たちが山奥で“ドーム”発生装置とおぼしき謎の機械を発見したことを知る。しかしビッグ・ジムの弾圧の手は容赦なく彼らに及び…。蓄積しきった圧力が解放されるときがきた。恐怖にうち克つのは生きとし生けるものの生命の尊厳。圧倒的な筆力とイメージで恐怖と怪異、その末の浄化を描いたあのキング、ここに復活。

単行本(ソフトカバー): 712ページ
出版社: 文藝春秋 (2011/4/28)
ISBN-10: 4163804706
ISBN-13: 978-4163804705
発売日: 2011/4/28

単行本(ソフトカバー): 712ページ
出版社: 文藝春秋 (2011/4/28)
ISBN-10: 4163804803
ISBN-13: 978-4163804804
発売日: 2011/4/28

P.S.
【キングファンに嬉しいお話】
・今年の11月には、ジョン・F・ケネディーの暗殺を阻止するために過去にタイムトラベルする
 男の物語『11/22/63』が刊行される予定。
・更に、2012年には、ライフワーク(ダーク・タワー)シリーズの新作
 『The Wind Through keyhole』も刊行される予定。
 Ⅳ「魔術師と水晶球」とⅤ「カーラの娘」のあいだの物語らしい。

これを機会にキングファンになれば、読む本に事欠かない。
暇人でなくともハマること請け合い、それも(僕が)保証してあげる。


※【省吾のスティーヴン・キング】サイト



(2011/11/01 20:29)


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