一晩爆睡したら、金土のバイクツーリングの疲労は完全霧消し、首から肩の張りもなくなった。単純な身体だ。となると「活字中毒症」が頭をもたげてくる。
さて、江戸川乱歩ベストセレクション第7弾は『孤島の鬼』。これで角川ホラー文庫の江戸川乱歩ベストセレクションの(1)から(8)を読み終えた。
本書出典元は、博文館発行の大衆雑誌「朝日」に、昭和4(1929)年1月号から翌5年2月号まで14回にわたって連載された。冒険小説+サスペンス+ミステリーなど、この殺人はどんなトリックだ、なぁんて好奇心をも擽ってもくれる。
昭和初期の大衆文壇には、
(1)講談社発行「キング」※王座を占める
(2)平凡社発行「平凡」
(3)博文館発行「朝日」
が大きなところだったらしい。
本書の解説にもあるが、乱歩は昭和11(1936)年から『怪人二十面相』を第一作とする「少年探偵団」シリーズを書き始めるが、これら乱歩の著書傾向が転向する背景には、時局の逼迫に伴って軍部の圧力が強まり、書きたいものを自由に書けなくなったという事情もさることながら、乱歩自身のうちにあった純粋探偵作家としての気概が失われ、売れるうちに原稿料を稼いでやれ、という開き直りもあったと、後年みずから述懐している。
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一夜にして「私はまだ三十にもならぬに、濃い髪の毛が、一本も残らずまっ白になっている」と主人公の口上があり、≪出るに出られる≫地底の闇の中での≪死の苦しみをなめ≫といった恐怖の設定自体が「白髪」になってしまった恐怖を炙り出している。
また見逃せないテーマとして当時としてはタブーではなかったのだろうかと察するが「同性愛」を扱っている。これらの交情がストーリーの推進力ともなっている。
そしてまた、現在ではあからさまに書けないであろう「不具合者」も大きな柱として関わっている。人工的に不具合者を作りだした、おぞましくもある人間心理の恐怖は何だろうか。怖い者見たさ的な闇の部分が人の心の根幹に潜んでいるのかもしれないことを、乱歩自身も考えたのだろうか。(2010/05/23
13:29)
■内容(「BOOK」データベースより)
初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚した。諸戸はかつて蓑浦に恋していた男。蓑浦は、諸戸が嫉妬心からわざと初代に求婚したのではないかと疑う。そんなある日自宅で初代が殺された。これは恐ろしく壮大な物語の幕開けに過ぎなかった―。
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孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫)
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文庫: 336ページ
出版社: 角川書店
(角川グループパブリッシング)
ISBN-10: 404105334X
ISBN-13: 978-4041053348
発売日: 2009/7/25
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