<フォーラム>『コンテキストアウェアネスはその後どうなったのか』 2010
5/20
木曜日

 午後から渋谷にある”アイビーホール”で開催されたマルチメディア推進プラットフォーラムを拝聴した。

 コンテクストとは、日本語では「文脈」、「前後関係」、「背景」、「状況認識」などの言葉で訳される。業界的にいえば『システムやサービスがサービスを取り巻く状況を参照したときに、そのシステムやサービスが次の動作を決定するために使用されるすべての情報』とITU-Tでは定義される。それが、アウェアネス(awareness)、つまり気づいていること、自覚・認識している、ということになる。

 サービスが成功する内的・外的要因としては、成否はこのようなファクターにカテゴライズされる。
  -ユーティリティ:機能や性能
  -ユーザビリティ:使い勝手
  -ライカビリティ:見た目の好感度
  -コスト:対価。大きく、金銭と労力の2種類
  -信頼


 成功したテキスト系では、Google、Amazonなど。センサーで系は、象印のi-Pot、あんしんグーパス、auto GPSなど。そもそもユーティリティ面でパーフェクトなサービスはないのだから。 入力情報(Primary Context)をそのまま使うか、抽象化した二次情報(Applied Context)として用いるのか?成功要因は、自己記述性→何が行われているかユーザが理解できるか?、可制御性→ユーザがコントロールできるか?がキーとなるのだろう。

 成功の阻害要因は
  -金がかかっているのに儲からない。
  -人がわからないことをコンピュータにわからせようとする。(土台、無理)
  -精度を高めることを追求する余り、仕組みが複雑すぎる。

 健康ものは狙い目、また、デバイス側の電池(消費電力)もかなりネックとなるとのこと。しかしながら、どれがキラーアプリケーション(※)となるか、興味津々ではある。有益なフォーラムだった。(2010/05/20 20:30)

(※)キラーアプリケーション:新しいプラットフォームの導入を検討する場合には、
 ・購入費用がかかる
 ・使い慣れていない
 ・既に同様のプラットフォームを導入している
等の難点(スイッチングコスト)がある。これらの難点は、新しいプラットフォームの普及を妨げる大きな要因となる。特に類似のプラットフォームが既に普及している場合には、新しいプラットフォームを導入する利点よりも難点の方が大きくなりがちであるため、後発のプラットフォームは不利になる。それでも多くの顧客が「それら難点があってもなお後発のプラットフォームを導入したい」と思わせるほどの利点を提供する(=魅力がある)場合には後発のプラットフォームが普及することになる。この利点が一つのアプリケーション(やコンテンツ)により提供され且つ、プラットフォーム自身が具備するものではない場合に、その利点となったアプリケーションがキラーアプリケーションと呼ばれる。キラーアプリケーション開発会社はその後、他のプラットフォームでも利用できるように移植する場合が多い。しかし契約上の問題や、プラットフォーム固有の機能やサービスを利用している等の問題により移植されない場合もある。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

●コンテキストアウェアネスとは何か?
●コンテキスト情報にはどのようなものがあるか?
●コンテキストアウェア・サービス事例
-広告配信サービス-
●NTTドコモにおけるモバイルサービスにおけるコンテクスト利用
●コンテキストアウェアネスへの期待1:ネットワークの付加価値
●コンテキストアウェアネスへの期待2:サービスの高度化
●コンテキスト情報1:位置情報/測位技術
●コンテキスト情報2:ユーザ周辺の環境
●コンテキストアウェア・サービス事例

 「ユビキタス」という言葉が脚光を浴び、毎日のように語られていた2002-03年から数年が過ぎ去り、RFIDシステム、ITS(Intelligent Transport System)、携帯端末のように着実に実用化段階を迎えているユビキタス関連の技術がある。さて、トレーサビリティと並ぶキーワードとしてもてはやされた感もある「コンテキストアウェア・サービス」は一体どこまで実現しただろうか?

 当初、コンテキストアウェア・サービスとは、ユーザ周辺の環境に応じてサービスの提供形態を動的に変えるサービスを漠然と呼んでおり、主サービスに付加価値を与える能力と考えられていた。この概念は、総務省委託研究でも取り上げられ、その成果として、「状況に応じて、ダイナミックに、利用者の好みや状況に応じてサービスの提供方法を変更していく能力」としてITU-TのNGNの推奨機能として定義されるに至っている。

 一方、ビジネスの観点から視ると、コンテキストアウェアネス単独のサービスというものは考えにくく、何らかの主サービスに付加価値を与える形でビジネス化されていくものと考えられる。また、技術的には、昨今のセンサー技術、無線通信技術の発展により、「夢物語」の段階から脱し、すこしずつ現実味を帯びてきているとの見方もできる。例えば、ITSなどユーザの位置を使ったサービスをロケーションアウェアサービスと呼ぶこともでき、これは位置情報をコンテキスト情報として用いたコンテキストアウェア・サービスの1つとみなすこともできる。

 近年、ユーザ自身がサービスをカスタマイズすることも行われ、お決まりのサービスを一元的に提供するのではなく、ユーザの嗜好を反映する傾向もみられるようになってきた。コンテキストアウェアネスは自動的にユーザを取り巻く状況を認識するという点では、更に一歩進化した概念とも考えられる。本フォーラムでは、ユーザ周辺の情報や位置情報を活用する事例の紹介を通し、コンテキストアウェアネスがどのような付加価値サービスを生み出すかを、再考する場である。

時間 講演内容
13:00

13:30
(基調講演)
「コンテキストアウェアネスへの期待」

  • ICTセントリック時代からユビキタスコンピューティング時代へ
  • ユビキタスコンピューティング時代における見える化と自動化について
東京大学 名誉教授 齊 藤 忠 夫 氏
13:30

14:35
「コンテキストアウェアネス」とは何か?
  • コンテキストアウェアネスに関する研究動向
  • コンテキストアウェアネスに関する標準化動向
東京大学 先端科学技術研究センター 教授 森 川 博 之 氏
14:45

15:50
「モバイルサービスにおけるコンテクスト利用」
  • コンテキストアウェア・サービス事例
  • 情報ハブとしてのケータイ
  • コンテクスト利用の限界
  • クラウドデバイスとしてのケータイ
㈱エヌ・ティ・ティ・ドコモ サービス&ソリューション開発部長 栄 藤   稔 氏
15:55

17:00
「先端を走る測位技術【プレイスエンジン】」
  • 測位技術の動向(GPS、無線LAN、自律航法)
  • 無線LANを活用した測位技術
    -プレイスエンジン-
クウジット㈱ 取締役 CTO 塩野崎   敦 氏

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