『へリックスの孤児』ダン・シモンズ著 2010
5/7
金曜日

 昨日は、寝てしまってブログをサボった。まあ、いい。さて、今日読み終えた本は、2002年に刊行されたダン・シモンズの中短篇集Worlds Enough & Timeの全訳。今回、彼の作品は2作目となるが、どんなジャンルの作品もそつなくこなす多才作家で、SFが5篇、集められている。

◇「ケリー・ダールを探して」
◇「ヘリックスの孤児」
◇「アヴの月、九日」
◇「カナカレデスとK2に登る」
◇「重力の終わり」

 一篇ごとに著者自身が序文を書いているが、導入部分、伏線・経緯が分かってスムーズにストーリーに引き込んでくれる。

 「ケリー・ダールを探して」は先日読んだ「夜更けのエントロピー」に収録されていたので読み飛ばし。

 続く「へリックスの孤児」は「ハイペリオン4部作(ハイペリオン、ハイペリオンの没落、エンディミオン、エンディミオンの覚醒)」のエッセイということで、いずれこれらは制覇しないとだめだろう。

 「アヴの月、九日」は、ユダヤ人にとって重要な祈りの日であっって、SF的には人間を転送する(ファックス)ことが可能となっている。アンソロジーとして篇算された一篇で、条件は”作中の時代を3001年前後に設定する”ということで書かれた作品。

 「カナカレデスとK2に登る」は本書で一番共感できた作品だろう。昆虫異星人とK2(※K2(ケーツー)はカラコルム山脈にある山。標高は8,611mで世界第2位)に登るというお話。なぜ、異星人、それもカマキリの異星人と登るのかは読んでのお楽しみ。最後に登山家が何故、山に登るのですか?に対する常套句的に答えとして、「そこの山があるからだ」と。文末でその言葉で締めくくっているが、”ウン、よくぞ言った、その言葉を待ってたぞ”と僕は唸ったよ。上手い。

 「重力の終わり」はソ連の宇宙開発をモチーフにして、アメリカ人作家がロシアを訪ねる。文章のスタイルはシナリオ書きで、歴史的事実も織り交ぜながら、映画的な仕上げとなっている。

 そのうち、他作品も読まなきゃ、まずい。(2010/05/07 19:25)

ヘリックスの孤児 (ハヤカワ文庫 SF シ 12-9) (ハヤカワ文庫SF)
加藤直之(訳)
4150117381
文庫: 480ページ
出版社: 早川書房
言語 日本語
ISBN-10: 4150117381
ISBN-13: 978-4150117382
発売日: 2009/12/30

 内容(「BOOK」データベースより)
永住の地を求めて旅立ったヘリックスの民は、400年後にアウスターからの救難信号を取け取ったが…現代SFの頂点を極める“ハイペリオン”シリーズの後日譚を描いてローカス賞を受賞した表題作をはじめ、古典的人類の最後の日々を描く“イリアム”シリーズ前日譚「アヴの月、九日」、傑作異次元SF「ケリー・ダールを探して」など、本邦初訳を含む5篇を収録し、当代随一のオールジャンル作家の魅力を凝縮した傑作集。


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