警察小説競作『決断』 2010
3/23
火曜日

 一昨日、一篇だけ読んでいたが、残りの5篇、400頁を通勤時間と家で一気読みした。警察小説で、6人の作家が一篇ずつ書いている。こういった小説は、他の作家の実力を探るには手っ取り早く、丁度よろしい。力のある作家の本が読みたい方、お気に入り作家を開拓するには打って付けだ。そんなずる賢い魂胆でこの本を買った。右写真からも作家名からも読み取れるが、出来不出来、作家の実力があからさまになってしまう。競作は怖い。

 僕が感じたのはトリを務めた横山秀夫氏の一人勝ちだ。何冊か読んでいるが、いつもながら伏線の張り方、心情の抉り方、文章の練り方は圧巻。短い文節のなかに濃縮・凝縮された単語、文字が死に場所を得たように踊り狂う。静かに津々と語るのだ。他の作家さん、平伏しなさい、控えおろーーー、って思う。感情移入の深浅度も自ずと差がでるよ。

 しかし、おおっ、これは他の作品も読んでみたい、とその気にさせたのは、戸樫圭太氏。擬音の多用がアニメ的な雰囲気を醸しだし、そしてまた、おかしい。スピード感がある。それに貴井徳郎氏は切れ味よくセンスもいい。どこかで彼らの作品は読まざるを得ないのだろう。(2010/03/23 23:31)

文庫: 494ページ
出版社: 新潮社 (2006/01)
ISBN-10: 4101208468
ISBN-13: 978-4101208466
発売日: 2006/01

内容(「BOOK」データベースより)
偽ドル札を掴まされた男と強面刑事の騙し合い(「昔なじみ」)。新任の駐在が嗅ぎつけた危険な匂い(「逸脱」)。秘密を背負った警官が知る寂しい犯罪者(「大根の花」)。イカれた奴らとパトカーの追跡劇(「闇を駆け抜けろ」)。自白の裏側に迫る孤独な刑事(「ストックホルムの埋み火」)。誤認逮捕の悪夢に苛まれるベテラン刑事(「暗箱」)。組織と個人の間で揺れながら真実を追い続ける警察官の凄みを描く全六篇。


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